ショクダイオオコンニャクの結実と6回の開花記録からみるライフサイクル

ショクダイオオコンニャク日本初の結実に成功!

1. 2023年5月19日に開花した小さな株
写真22. 2023年5月27日に開花した大きな株
2014年のホットニュース(HTML)(リンクを新しいタブで開きます)にも掲載されたショクダイオオコンニャク。インドネシア・スマトラ島の限られた場所に生えるサトイモ科の植物で、世界最大級とも言われるほど巨大で臭い「花」は、世界でも開花するたびに話題になる植物です。筑波実験植物園ではこれまでに8回開花していますが、何度見ても飽きることがありません。

筑波実験植物園では2023年5月の開花時に人工授粉を行い成功し、結実し種子を得ることができました。結実に成功したのは日本では初めてのことでした。

なぜこれまで人工授粉がうまくいっていなかったのでしょう。そもそもショクダイオオコンニャクは開花が不規則で、国内での開花記録は近年増えつつあるものの、2025年秋でも40には達しておらず、開花自体が珍しいことが理由としてあげられます。さらに、開花しているのはたったの2日間で、初日に雌花が咲き、翌日に雄花が咲きますが、雌花が受粉できるのは1日のみと言われています。つまり受粉のチャンスは開花初日だけなのです。

これまでに何度か、筑波実験植物園で保存しておいた花粉や、他園からいただいた花粉を用い人工授粉を試しましたが、うまくいきませんでした。今回、奇跡的に2株が連続して筑波実験植物園内で開花したため、先に開花した小さな株から花粉を集め、1週間後に開花した大きな株に人工授粉を行ったところ、結実に成功したのです。
説明図(図のみ)ショクダイオオコンニャクの「花」(正確には花序)。中心に煙突のように伸びているのが花序付属体。その基部に多数の雌花と雄花があるが、仏炎苞(ぶつえんほう)につつまれ外からは見えない。

果実の成長

写真3人工授粉とその後果実が成長する様子。各写真の下の数字は開花からの日数と花序(果序)軸の高さを示す。A: 人工授粉の様子。B: 付属体は開花数日後に倒れる。C: 仏炎苞と雄花が枯れる。D: 子房が赤く色づき膨らみ始める。E-F: 果実が成長し、果序軸も伸びる。G: 先端の果実が熟し始める。H: 果実は採取ならびに自然落下により減少。I: 果序軸が倒れる。J: 果実と種子。Kobayashi et al. (2025)のFigure 5より抜粋・改変。
海外では結実の報告があるものの、日本では事例がなく、実際に観察するのは初めてでした。授粉しない場合は開花後3〜4週間で花序全体が枯れ、地上部はなくなり、地中のイモだけとなりましたが、今回すぐに目に見える変化は雌花では確認できず、授粉に成功したかよくわからないまま、仏炎苞と雄花は茶色くなり枯れていきました。1ヶ月が経過するころ、ようやく子房が赤く色づきふっくらしはじめ、果実が成長しはじめたと考えられました。今思い返せば、授粉しない場合はすぐに茶色くなる花序軸が青々としていたことから、花序軸の様子が授粉成功を見極めるポイントと言えそうです。また果実が成長するにつれ果序軸が伸び、最長高さ135cmにもなりました。

果実が赤く柔らかくなり熟したと考えられるまでに半年ほどかかりました。中から種子を取り出して播種し、発芽し成長することを確かめて、ようやく結実に成功したことが確認でき、スタッフ一同喜びました。
いつまで果実が見られるだろうかと、そのまま観察を続けたところ、果序軸が倒れたのは開花から416日(1年2ヶ月近く)、果実が熟し始めてからは8ヶ月も経ってからでした。

果実・種子・実生

果実を数えてみると638個もありました。雌花はすべて果実になったため、仏炎苞につつまれ見えなかった雌花が638個あったことがわかりました。

真っ赤に熟した果実を食べてみると、柿のようで甘く、糖度は19度もありました。しかしシュウ酸カルシウムの針状結晶が含まれており、舐めただけでも痛みを感じます(詳細はYouTubeの動画を参照)。果序軸の先端ほど糖度が高く、同時期の基部側の未熟な果実の糖度は約10度と低いことから、先端から熟し、熟すにつれて甘くなることもわかりました。サイチョウという鳥類の仲間あるいは哺乳類が果実を食べて種子を運ぶと言われていますが、はっきりとしたことはわかっていません。

果実の中には、そもそも種子ができていないものが多く、一方でまれに1個の果実内に3個も種子があるものもあり、およそ500個(推定)の種子を得ることができました。種子から育った実生の様子は、筑波実験植物園の熱帯雨林温室でご覧いただけます。種子は他の植物園や研究機関にも分譲し、育てられています。
結実株とその実生(2歳)(2026年1月撮影)。一緒に写っているのは育ての親の1人である小林弘美さん。
次世代株はいつ開花するのでしょう。早ければ10年で開花すると言われ、うまくいけば2034年ごろとなりますが、筑波実験植物園では栽培環境に制約があることから、もう少し時間がかかるかもしれません。

6回の開花記録からみるライフサイクル

筑波実験植物園では、2012年に初開花してから同じ株が6回も開花し、結実にも成功しました。これまでの成長記録をもとにそのライフサイクルを表にまとめてみました。このように記録が積み重ねられたことで、ショクダイオオコンニャクのライフサイクルがよくわかるようになりました。
表1
ショクダイオオコンニャクは、地中に大きなイモ(塊茎)があり、地上に巨大な1枚の葉が現れ生育したのち、落葉し、イモのみで休眠します。イモが大きくなるまでは、葉の生育による栄養成長と休眠を繰り返します。休眠後に現れるのは葉か「花」(花序)のどちらかで、「花」になるのは稀といわれていましたが、筑波実験植物園では2012年以降、「花」->葉->「花」->葉…を繰り返し、およそ2年に1回開花しています。

表をみると、開花は夏に多く、葉の生育期間は1年〜1年半、落葉して次の芽が現れるまでに3〜6ヶ月、芽の中の花序付属体が確認できてから開花までは15〜17日、花後に葉が現れるのはおよそ3ヶ月後であることがわかります。こうした記録を辿ることで、いつごろ葉が出るのか、休眠期間、開花のタイミングなど、かなりの精度で予測できるようになりました(ただし株によってばらつきはあります)。

また6回目の開花と結実後にはイモの重さが21kgも減ったこともわかりました。この期間は葉の生育がなかったことから、開花と結実にそれだけエネルギーを費やしたと推定されます。

今後を予測してみると、2026年1〜2月ごろに落葉し、3〜6ヶ月の休眠を経て、次に出てくる芽がもし「花」なら、開花は2026年夏ごろと予測されます。引き続きホームページで紹介していきますので、今後も見守っていただければと思います。
ショクダイオオコンニャクのライフサイクル。通常は葉の生育、落葉、休眠を繰り返す(緑色のサイクル)が、稀に花序が出る(赤色のサイクル)。


文献

Kobayashi, H., Kizu, H., Suzuki, K., Nikaido, T., Aizawa, W., Tsutsumi, C. and Yukawa, T. 2025. Life cycle and fruiting of an Amorphophallus titanum (Araceae) plant that bloomed six times in Tsukuba Botanical Garden, Japan. Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. B, 51: 107?117.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bnmnsbot/51/3/51_107/_article/-char/ja/(リンクを新しいタブで開きます)