イケアはなぜ、ニトリに勝てないのか 店舗を増やせず、新宿・原宿店も閉店した残念な事情
立ちはだかるのがニトリ
地方や郊外でも思うように出店できていない。 2020年までに大型店を14店舗出店する計画だったが、現在は10店舗にとどまる。札幌市の出店計画が撤回されるなどしている。広島も大型店の計画がとん挫した。IKEAの商圏人口は100万~150万人程度であり、同エリアのポテンシャルは十分だが、集客を見込めないと判断したようだ。 業績も芳しくなく、近年は売り上げが横ばいで推移している。営業利益も直近10年ほどはコロナ禍を除いて赤字が目立ち、この2年で赤字が倍に膨らんだ。店舗数を増やせないばかりか、既存店でも厳しい状況が続いている。なお、Ingkaグループ全体では増収が続き、利益も黒字を確保している。 国内のIKEAが苦戦している背景には、やはりニトリの強さがある。国内市場を押さえたニトリは商圏人口10万人以上が目安で、国内では800店舗超を展開し、近年の売上高は9000億円台を推移。営業利益率は10%を超える。 以前、家具店は家族経営の小規模店か、店舗数の少ない地場のチェーンが主体だった。こうした状況で2000年以降、ニトリは商品の均一性と安さを武器に全国的なチェーンを築いた。ニトリが日本人の家具に対する認識・習慣を定着させたといえる。
今後は地方・郊外で閉店ラッシュも?
ニトリと比較するとIKEAは2人での組み立てを推奨する家具が多く、構造も比較的複雑だ。ベッドのような大型家具では組み立てに2時間以上を要するものもある。そして店内の様子も、ニトリは「どこに何があるか」分かりやすいのに対し、IKEAは迷路のような構造である。 両社とも低価格を訴求しており、IKEAは北欧家具の色合いやデザインが特徴的だが、利便性には劣る。店舗は「テーマパーク化」しており、小物以外何も買わずに出る客も多い。 欧州では家具チェーン「JYSK」の存在感が大きい。JYSKは50カ国で3600店舗以上を展開しており、小型店やテナント内出店も多く、ニトリのような存在に近い。だが、品質や品ぞろえの面でJYSKを評価しない消費者も多く、IKEAが彼らの受け皿になっているようだ。こうした違いが日欧の業績の明暗を分けたと考えられる。 国内の家具市場は巣ごもり需要で伸びたものの、コロナ禍以降は物価高で買い控えが起き、厳しい状況にある。市場が縮小する局面で前出の通りIKEAは赤字が続いている。土地を売却すれば一時的な収入を確保できるだけに、業績悪化が続く場合は地方・郊外の大型店でも閉店が続くかもしれない。
著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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