“牛丼御三家”の中で、なぜ「すき家」だけがラーメンに手を出さないのか 吉野家・松屋が焦る一方、高みの見物をしているワケ
2025年12月、牛丼チェーン「松屋」を展開する松屋フーズホールディングス(HD)が、ラーメンチェーン「六厘舎」を運営する松富士食品を買収すると発表した。以降、ラーメンに場所を変えた牛丼大手の競争再燃か? といったネタで、マスコミなどから尋ねられることが多くなった。 【画像】「食べた気がしない」「コンビニ以下」と酷評も…吉野家が去年発売した「二郎系っぽいまぜそば」を見る 2025年は“令和のコメ騒動”もあって、牛丼チェーンの主要原材料であるコメの価格が急騰、コメから小麦などへの分散という意味合いもある、と分析されているようだ。また、物価上昇の中、「500円の壁」に苦しむ牛丼の世界と異なり、ラーメンは「1000円の壁」を打破しつつあることも要因とする報道もあった。 こうした環境変化を踏まえれば、牛丼大手がラーメンにシフトしていく、というのは非常にわかりやすい話なのだろう。 確かにラーメンへのシフトを進めている吉野家HD、松屋フーズHDのIR資料から原価率を見ると、吉野家HDの2026年2月期第3四半期決算で前年同期の35.7%から37.8%へと悪化、松屋フーズHDも2026年3月期中間期で前期の35.1%→37.1%となり、両社とも売上高利益率を2%相当悪化させる影響があったことが確認できる。 ――と書くと尤もらしいが、牛丼大手のラーメンチェーン買収はそこがメインシナリオでもないと筆者は見ている。
なぜ「すき家」だけがラーメンに手を出さないのか
だいたい、吉野家HDのラーメン事業強化は、コメ騒動とは関係なくかなり以前から進められていた。2016年にせたが屋、2019年にウィズリンク、2024年にラーメン店向け食材開発の宝産業、2025年には京都のラーメンチェーン「キラメキノトリ」を展開するキラメキノ未来と……といった形で、今に始まった話では全くない。 両社ともに牛丼以外の新業態開発が必要な会社であることは、昔から言われていた。牛丼に続く第2、第3の柱がないと成長限界が来る、もしくは不測の事態(コロナや狂牛病のような災厄)におけるリスク回避が困難、ということである。 さて、ここで吉野家HDと松屋フーズHDにゼンショーHDも加えて、牛丼大手の事業別売上構成を並べてみよう。 これを見ると一目瞭然で、既に売上1兆円超の外食最大手となったゼンショーHDは分散が進んでいて、すき家、はま寿司、ファストフード、レストランの4つにきれいに分かれている。しかし、吉野家HDは国内の牛丼事業が3分の2、海外の牛丼事業も合わせると8割を依存している。松屋フーズHDも同じように8割ほどを牛丼に依存しており、事業の分散はあまり進んでいないことがわかる。 いまのところ、牛丼最大手で外食最大手でもあるゼンショーHDが、吉野家HD、松屋フーズHDのようにラーメン場外戦に参戦するそぶりを見せない理由はここにある。つまり、すでにポートフォリオの分散に成功しているからだ。