慶應女子高生が司法試験に合格 そもそも高校生って法律家になれる? 背景や過去の事例を解説

2026/02/04

■令和の大学を考える

2025年の司法試験で慶應義塾女子高校の生徒が合格したことがわかりました。「高校生が法律家になれるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。過去にも高校生で司法試験に合格したケースはありました。なぜ高校生が司法試験に合格できたのでしょうか。教育ジャーナリストの小林哲夫さんが解説します。(写真=ピクスタ)

司法試験受験の資格とは?

司法試験受験の資格があるのは、①法科大学院修了者、②法科大学院在学生、③司法試験予備試験(以下、予備試験)合格者である(いずれも受験期間に制限が設けられており、その詳細は省略)。

①②の法科大学院は大学卒業、または大学3年から飛び級して入学する。そして法科大学院を修了後、または在学中に司法試験を受けることになる。ここには高校生が入る余地はない。

③の予備試験合格者は、法科大学院に通わないで司法試験を受験できる資格が与えられる。年齢、国籍は問われないので、高校生もこの制度を活用できる。もっといえば中学生でも司法試験に合格できる。

そもそも予備試験とは何か、司法試験法にこんな説明がある。

「司法試験を受けようとする者が前条第一項第一号に掲げる者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とし、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行う」

かみくだくと、「前条第一項第一号に掲げる者」とは、「法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とする」課程を修了した者を指している。

つまり、法科大学院修了者と同じ知識を持っているかを判定する試験、ということだ。学識を問う試験内容には、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、一般教養科目がある。法律全般を理解しなければならない。

法科大学院の学費は2年間の既修者コースで150万~350万円、3年間の未修者コースで220万~500万円程度かかる。それゆえ、予備試験経由で法曹をめざす者も少なくない。時間も短縮できるからだ。経済的な理由などで法科大学院に入学できなかった者に対して法曹の道を開く側面もある。

したがって、予備試験には、頭脳に自信がある天才、秀才たちが挑んでいることもあり、かなり難関な試験となる。2024年の予備試験は受験者数1万2569人、合格者数449人となっており、合格率はわずか3.6%だった。この予備試験合格者が規則によって5年以内に司法試験を受験する。

予備試験からの高い合格率

2025年の司法試験受験者は3837人、合格者は1581人、合格率は41.20%だった。冒頭で説明した3つの受験資格別の受験者、合格者、合格率は次のようになる。

①法科大学院修了者 2013人  441人  21.9%
②法科大学院在学生 1352人  712人   52.66%
③予備試験合格者  472人  428人   90.68%
合計                 3837人  1581人   41.20%

(2024年の予備試験合格者449人よりも予備試験合格者の受験者が多いのは、この前年以前の予備試験合格者が含まれているため)

予備試験経由の司法試験合格率が、法科大学院に比べてはるかに高い。その優秀さを物語っている。法科大学院の存在も問われてしまうが、ここでは触れない。

③予備試験経由での合格者428人の出身校(最終学歴)別の人数は次のようになっている。

法科大学院在学中(2、3年)144人
法科大学院修了12人
法科大学院中退13人
法科大学院以外の大学院修了または在学中17人

大学卒162人
大学在学中71人(1年2人、2年2人、3年16人、4年51人)
大学中退5人
高校卒3人
高校在学中1人

上記いずれも校名まで明らかにされている。

大学1年=立教大早稲田大
大学中退=慶應義塾大2中央大立命館大近畿大
高校卒業=青森県立青森北高校福井県立若狭高校幸福の科学学園関西高校
高校在学中=慶應義塾女子高校

慶應義塾女子高校の生徒は、高校在学中に憲法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法などを理解して、合格率3.6%の予備試験に受かった。そして司法試験も合格してしまう。とんでもない天才、秀才なのであろう。

高校生の司法試験合格者は過去にも

高校生が在学中、司法試験に合格するケースはこれまでにあっただろうか。
2004年の法科大学院開設によって2006年に新司法試験がスタートし、それに伴って2011年に予備試験制度が実施されて以降、高校生合格者は2いる(判明分のみ)。

まず、灘高校の男性である。2021年に高校2年で予備試験、2022年に3年生で司法試験に合格している。高校卒業後、彼には大学へ進まず司法修習で学ぶ道もあったが、推薦入試で東京大へ進んだ。こう話している。

「法律や法学の知識も、教養的にもまだまだ足りないものがあると思っていたので、もっと学びたいと思って進学しました。大学に入ってからたった2か月ですが、すでに自分が学んだことのない法律の解釈や、法学の考え方を学ぶことができています」
「宇宙の条約や法律を作ることにも興味はありますが、たとえば“企業法務弁護士”になって、日本の企業が宇宙進出する際に、代理人として世界と交渉できたらとも考えています」(「弁護士JPニュース」2023年6月14日)

彼よりももっとすごい高校生がいた。筑波大学附属駒場高校の男性で、2023年に高校1年で予備試験、2024年に2年生で司法試験に合格している。こう振り返っている。

「中学3年生のクリスマスプレゼントに六法全書をお願いして、勉強するようになりました。実際に勉強を始めてみたら、これがもうめちゃくちゃ面白くて。社会の仕組みや法の仕組みを勉強すればするほど、もっと知りたいっていう、スパイラルに入っていった感じです。それで、司法試験には年齢制限がないので、受験資格を得るための『予備試験』をまずは目指してみようと思い、中学3年生が終わる2月から『伊藤塾』のオンライン講義を受講しました」(フジテレビウェブサイト「とれたてフジテレビ」2024年11月17日)

伊藤塾とは司法試験予備校のことであり、ここに中学生が通うということ自体、すでに次元が違うといった感じだ。中高一貫校のメリットを最大限に利用したともいえる。

早慶では大学1年で司法試験合格も

司法試験は7月中旬から始まる。したがって、大学1年の合格者は入学前に予備試験に合格し、相当な勉強をしたことになる。

2025年、早稲田大法学部1年の男性が合格している。彼の出身校、早稲田大学本庄高等学院が「18歳で司法試験に合格」「高校3年次(2024年度)予備試験に合格し、本年度の司法試験にも一回目の受験で合格を果たしました」と伝え、合格者の談話を紹介している。

「本庄高等学院2年次に法曹を志すと決め、その年の夏から本格的に受験勉強を始めました。目標が定まってからの2年間は、迷いなく司法試験の合格だけを見据えて机に向かい続ける日々でした。時には大変なこともありましたが、それでも『必ず合格したい』という思いが支えになっていたと思います」(早稲田大学本庄高等学院ウェブサイト、2025年11月5日)

これと同じようなケースが、過去に慶應義塾大で見られた。2018年と2021年に慶應義塾大法学部の1年生が司法試験に合格している。2人とも慶應義塾高校在学中に予備試験にクリアしての司法試験合格だった。

2021年合格者の男性はこう話している。

「司法試験の勉強を始めたのは高校2年生の時で、高校3年生までの2年間が主な勉強期間になり、その間は高校生活と両立していました。高校との両立では、まず大前提として高校の勉強をメインとしていて、迷った際にはまずは高校を優先させました。高校では部活との両立は難しいと判断し、生徒会には入っていたものの、あまり活動せず、司法試験の勉強をしていました。司法試験の勉強は1コマ3時間の授業が週3回あり、授業と同じくらいの時間を復習するため、週18時間を目安に勉強していました」(慶應塾生新聞ウェブサイト、2021年11月13日)

早慶1年生の合格は、付属系列校ゆえ大学入試を必要としないメリットから生まれたともいえる。

どんな世界でも早熟で天才、秀才は存在する。彼らの優れた頭脳をぜひ、社会に役立たせてほしい。だが、彼らが10代というのは気になる。社会と接する、人と向き合ってきた時間、機会が少ないからだ。

司法試験合格者は司法修習で1年間、裁判官、検事、弁護士になるための実務を学ぶ。才能と努力による10代での司法試験合格者は歓迎したい。が、彼らはすぐに司法修習で学ぶよりも、大学でさまざまな経験を積んでほしい。

大学で教養と専門科目の勉強に励み、教員や友人と議論し、課外活動で好きなことに熱中し、アルバイトやボランティアで社会のありようを知る。学生時代のこうした経験を通じて、ときに喜び、怒り、悩み、悲しみを覚える。法律を運用し、法的判断をする際にそれを役立ててほしい。

少子化は法曹の世界にも及んでいる。司法試験受験者数は減少傾向にあり、2010年8163人→2015年8016人→2020年3703人→2025年3837人というように、かなり深刻だ。

若き法曹人の活躍を期待したい。法律の魅力を伝えてほしい。

(文=小林哲夫)

〈プロフィル〉
小林哲夫(こばやし・てつお)/1960年、神奈川県生まれ。教育ジャーナリスト。大学や教育にまつわる問題を雑誌、ウェブなどに執筆。「大学ランキング」(朝日新聞出版)編集統括。『日本の「学歴」 偏差値では見えない大学の姿』(朝日新聞出版・共著)ほか著書多数。

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