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平和安全法制のナゼ(全5記事)

「戦争をしたいとは誰も思っていない」 安倍首相が安保法制の必要性を解説

内閣総理大臣・安倍晋三氏が、自民党のトーク番組CafeStaに登場。衆院を通過した安全保障関連法案について安倍首相は「戦争法案というイメージを持たれていることが残念」と語り、世界情勢の変化や周辺諸国との関係性を例に挙げながら安保法制の必要性についてわかりやすく解説しました。

「戦争法案」というイメージがついたことが残念

大沼瑞穂氏(以下、大沼):皆さん、こんばんは。自由民主党、参議院議員の大沼瑞穂です。本日は安倍総裁を、お招きしております。皆さん、この暑い夏、ちょうど今、平和安全法制について国会では熱い議論がなされております。でも「平和安全法制って、いったい何なの?」。私も地元に帰ると、いろんな方にそう質問をされます。

そこで今日は、内閣総理大臣でもある安倍晋三総裁にじっくりとお話を伺いたいと思います。今日から5回に分けて、この平和安全法制について、皆さんと共に考えていきたいと思っております。安倍総裁、どうぞよろしくお願いいたします。

安倍晋三氏(以下、安倍):どうぞ、よろしくお願いします。

大沼:私も地元を回ってますと、特に女性の方から、平和安全法制と言うけれども、戦争法案というようなことを言う人もいるし、何だかちょっと怖いなということをおっしゃる方も非常に多いんですけれども、本当にそうなんですかね。

安倍:今、言われたように戦争法案とか、怖いんじゃないか、そんなイメージが残念ながらだいぶ広がってしまったと思います。

PKO法案に対する国内外の反応

安倍:思い出していただきたいと思うんですが、まだ大沼さんにとっては相当若い時代だと思いますが、PKO法案を審議したときも自衛隊を海外に出す。これはもう、海外派兵じゃないか。戦争の時代に戻るんじゃないか。こんなことを言われました。

そして法律が成立をしたときも、ある新聞は日本がずっと戦後守ってきた基本的な姿勢を変えるものだ。立法府の自殺だとまで断じた社説もありました。憲法違反だという批判も、ずいぶんあったんですね。

先般、日メコン首脳会談がありまして、カンボジアのフン・セン首相と会ったんですが、フン・セン首相は、あのとき日本が決断をしてくれてPKOを出してくれた。PKOで自衛隊が参加してくれたおかげで、その後のカンボジアの平和と安定、発展があった。

今は南スーダンでカンボジアはPKO活動をするほうに回ることができた。そしてカンボジアが今、行っている医療支援においては、日本の自衛隊員であれば24時間、いつでも最優先で診察したいと思ってる人がたくさんいますよというお話でした。

あのときはフン・センさんは日本において、ある新聞からは、なぜPKOを受け入れるんだという批判すらあったと。こう語っていました。そして今度、もしこの平和安全法制が成立をして、PKOにおける自衛隊の活動が、より積極的な貢献ができることになれば、スーダンにおいて、カンボジアの部隊と自衛隊の部隊が、共にスーダンの平和と安定のために、もっと力を合わすことができますねという、お話をいただきました。

このように、いろんな議論があるんですが、今度の法制も、まさにまずは日本人の命や幸せな暮らしを守るための法制であり、同時に今、日本人は世界中で仕事をしていたり、あるいは旅行をしていると思いますね。そのためにも、やっぱり世界が平和で安定である必要があると思います。

そういう仕事のために自衛隊の皆さんにも、世界の国々と共に汗を流していく。これは決して戦争をするのではなくて、むしろ戦争や紛争を抑止をしたり、あるいは平和な状態を保つために、この法制を進めていきたいなと思ってます。

戦争をしたいとは誰も思っていない

大沼:はい。私もイラク、ヨルダンの難民キャンプに行ったときに、日本人の女性でユニセフで働いている方、青年海外協力隊で頑張ってらっしゃる方を、やっぱり今の法律では何かがあったときに、PKO部隊にいらっしゃる自衛官の方が助けられないというのは、やっぱり世界中で働いている日本人の、そうした命を守っていく上でも、やはり必要なんではないかと思います。

一方でやっぱり、戦争につながるんじゃないかという不安の声もあります。70年間、日本が平和国家として歩んできたわけですけれども、何かそれを、違う方向に行っちゃうんじゃないかというような声もあるんですけれども。

安倍:戦争法案とか、「安倍さん、戦争したいんですか?」ということを言う人がいるんですね。野党も、そういう紐づけをよくします。

70年前、私たち日本人は1つの誓いをしました。二度と戦争の惨禍は繰り返してはならない。この誓いの元で平和国家として日本は歩んできましたし、そして、これからはさらに地域や世界の平和のために貢献しなければいけないと思ってます。戦争をしたいなんか誰も思ってませんよね、自民党で。

大沼:そうですね。

安倍:前の選挙で戦争をしたいと思って自民党に票を入れた人は、1人もいないと思います。我々は、まさに有権者に日本の政治を託されました。託されたということは、まさに平和な日本を守る。日本を、より繁栄させていく。皆さんが、日本人が安心して生活できる日本をつくっていく。あるいは皆さんが安心して世界で活躍できる、そういう世界をつくっていくために日本は貢献をしたいと考えています。

アメリカとの協力関係が必要な理由

大沼:私も実は、戦争をしたくない人と戦争をしたくない人が、戦争をするのかしないのかと、おかしな議論をしてると地元で言われまして、我々は戦争を食い止めるために、この法案をむしろ出すんだということを、やはり積極的にアピールしていかないとなと思いました。

一方でやっぱり、日本を取り巻く環境というのは、北朝鮮からテポドンも飛んできてニュースになりましたけれども、確実にその脅威というのは広がっているというのも国民はわかってると思うんですね。

新しいリーダーになって、でも今まだ不安定で、処刑もいっぱいあって、何か暴発するんじゃないかとか。脅威の認識というのは、やはり共有していかなきゃいけないと思うんですけれども。

安倍:そうです。例えば北朝鮮ですね。かつて北朝鮮は拉致作戦を行って、13歳の少女も含む多くの日本人を拉致をしました。工作船でやってきて、闇夜に紛れて上陸をしてという工作員もいました。

しかし当時、拉致が行われた70年代、まさか北朝鮮がそんなことをするとは、みんな思わなかったんですね。国ぐるみで人を拉致する。そんなことして何の利益があるんだ。みんなこう思ってました。

私たちが拉致問題があるという主張をしていたときも、「何言ってんだ」と。北朝鮮とは、うまくやらなければいけない。確かに北朝鮮と我々も、何とかこの拉致問題を解決をするために交渉をしています。でも実際に拉致作戦をやっていたのは事実です。

同時に北朝鮮は、もう数百発の弾道ミサイルを持っていて、そのうちノドンミサイルというのがありますね。ノドンミサイルというのは、まさに日本を標的にしていて、それに載せる核兵器の開発も進んでいます。そこで、これは撃ち落とす。日本人の命を守るために、このミサイル攻撃から日本を守るために、ミサイル防衛システムというのを日本は入れているんですね。

海上から発射して打ち落とす。あるいは陸上から発射して打ち落とすんですが、この飛んできたミサイルを、例えば1,000キロの距離は10分間で到達をしてしまう。その間に、これを撃ち落とさなければいけません。

そのためにはアメリカの協力が必要なんですね。アメリカの衛星が、それを発射したということを感知をして、軌道計算なんかもします。そういう協力をしながら、これを撃ち落とすために日本のイージス艦も配備をされますが、米国もたくさんイージス艦を持っていて、日本と協力をしていく。

まさに日米で一緒に北朝鮮のミサイルから日本を守ります。ミサイルを撃ち落とすだけでは、どんどんミサイルは飛んできますから、ミサイルの基地も攻撃をしなければいけませんが、日本はその能力はありませんから米国がそれを担っていきます。つまり日本と米国が一緒になって日本人の命を守らなければいけないという、今そういう時代を迎えているんです。

世界情勢はより複雑になってきている

安倍:昔は日本は、そんな能力、アメリカの船を守るなんていう能力は、実はほとんどなかったんですが、今はイージス艦という高い性能の自衛艦があります。その日本の自衛艦と米国の同じ能力を持つ船が協力をすることによって、非常に強力になってくるんですね。

そのために、そういう協力をスムーズに行うための、今回は法律でもあります。実際に日本を守るために日本海に展開をして警戒をしているアメリカの船が攻撃を受けたときに、この船を守れなければ日本を守ることができない。

それをできるようにするのが今の法律でありまして、そのように大きく日本を取り巻く環境は変わっている。昔は、ずいぶん昔の話にはなりますが、米ソの冷戦時代には米国とソビエト連邦が、だいたい2つに分かれていましたから、この2つの大きな国が話をすれば解決をするという時代がありました。

その中で日本もアメリカの下にいれば安全を、平和を享受することができたんですが、今はより複雑になってきている。例えば中東で起こっていることは、もちろんアメリカもなかなかコントロールできない。そして、もちろんソビエトもコントロールできませんし、中国もコントロールできないという状況があります。

その中で世界みんなで協力をし合わなければ、それぞれの国は守れないし。世界で活躍をしているそれぞれの国の人を守るためには、世界中がお互いに協力をし合わなければいけないという時代になった。

そういう時代になったからこそ、日本は日米同盟の協力のきずなを強めていくということと、世界と共に地域の平和を守るための貢献を日本もしていくことによって、結果としてやっぱり日本人は世界で活躍できるし、日本も守ることができるのではないのかなと思いますね。

大沼:はい、ありがとうございます。

領空侵犯による戦闘機の緊急発進は7倍に増えた

大沼:日本はやはり災害も多いですし、防災意識というのはすごくあると思うんですけれども、やっぱりそうした国際環境においても備えをしていく必要があると思うんですが、これまでは、あまりそういう法整備は進んでいなかったということでしょうか。

安倍:決して、そんなことはないんですね。先ほども申し上げましたPKO法案を成立をさせて、世界における平和と安定のために貢献を始めました。

それでもやっぱり、いくつか不備がありました。それを今度、しっかりとその不備をなくしていこうというものなんですが、あるいはまた周辺事態安全確保、これは朝鮮半島とか、アジア等々で何か日本の安全を脅かすような出来事があったときには、日本は後方支援をしましょうというものです。

また、テロ対策特別措置法というのがありましたね。あれはアフガン戦争が始まった後、テロを根絶していくために日本は給油活動を行った。こういうときどきに求められることは、やってきているんです。

そういう中で先ほども申し上げましたように、だんだん厳しさが増してくる。そして日本も能力を、いろんな経験をしてきました。そういう状況の中で、例えば日本に近づいてくる国籍不明機がいるんですが、そういう国籍不明の戦闘機や爆撃機が日本の領空に入ってこないように自衛隊は緊急発進をして、領空に入っちゃだめですよということを伝えるんですね。

この緊急発進については、この10年間で約7倍に増えているんですね。つまりそれぐらい実は、日本をめぐる環境は厳しさを増しています。でもこれは日本だけで日本を守り抜くのは大変です。

ですから日米同盟の力、あるいは国際社会と連携をしていく。もちろん一番大切な前提は、外交努力をしていくということですね。お互いに武力による威嚇、そういうことは行ってはだめですねと。もし紛争があったら平和的に解決しましょうということは、当然言っていくし、外交努力のために私も今まで54か国、世界を回りました。

そういう努力をして、それと同時に、やっぱり今やっている法律というのは、いざというときのためのものなんです。では、明日必要かというと、それはわかりません。でも、明日必要でないということにするために、ちゃんと備えはしておきましょうと。

いざというときのための法律ではありますけれども、つくっておけば、これは私は安心ではないか。それは、いわば抑止力になるんだろうと思います。

大沼:備えあれば憂いなしということでありますね。ソマリア沖では年間200件を超えていた海賊による襲撃事案もあったわけですけれども、これは上半期ゼロということになったと。

安倍:そうですね。

戸締りをしていれば泥棒は入らない

安倍:備えあれば憂いなしというのは、まさに一般のご家庭でも戸締りを、しっかりとしてれば泥棒や強盗は入らない。また、その地域、町内会で、お互いに協力し合っていくと。隣のお宅にもし泥棒が入ったら、すぐにわかったら、警察に連絡する。

そういう助け合いがちゃんとできている町内は、犯罪というのは実際少ないんですね。そういうところには泥棒が入ったら捕まってしまうから、そういうところには入りませんよ。これが、いわば抑止力なんですね。

戸締りもしなくて、開け放って寝てたら、そういう家には、じゃあこれ簡単だなと捕まらないし、簡単な仕事だなと思って、泥棒や強盗が入ってくる。そういう戸締りをちゃんとしていく。しかも、お互いに協力をし合っていこうということであれば、そういう地域には、おそらく悪い人は入っていかない。

そこでソマリア沖で、かつては海賊が横行していました。日本の船もずいぶん襲撃されましたね。1年間に一番多いときで237隻が襲撃事件にあった。そこでかつては、日本は日本の船だけは自衛隊が守ることができたんですが、しかし日本の船だけではなくて、船籍が違う船も日本にやってくる船もいます。

そこで国際社会で、お互いに助け合いましょうということになったんですね。お互いに助け合って、お互いに協力して、世界の船をみんなで守りましょうということになりました。そこで自衛隊も参加することになって。

今までは自衛隊は日本の船しか助けられなかった。今度は自衛隊は世界の船も助けますよということと同時にアメリカやイギリスやフランスや、いろんな国々と共に、そこを通る船を守るということになったんですね。

そして、そのことによって今おっしゃったように、かつて200件を超えていた海賊。これ、もうゼロ。今年半年でゼロになった。つまり、こうやって各国の軍艦がいる。日本の自衛鑑もいますから、襲ったら自分たちがやられてしまいますね。これが抑止力。

ゼロになったけれども、ではやめるかと言ったら、この船がいるから、自衛鑑もいるから、みんな襲わないですから、これからも続けていこうということになったんだろうと思います。

「幸せな暮らしを守るための法律」という説明を続けていく

安倍:この海賊対処法を決めたときも、実は遠いソマリア沖ですから、とっても遠いんですね。「そんな地球の裏側まで行くんですか?」という議論がありました。民主党は反対しましたね。

でも今、日本人の多くはやってよかったなと思ってるんではないでしょうか。日本船主協会、船主の会の人たちも、ぜひ続けてくださいと言っています。

あのときも本当に同じような意見があった。これは集団的自衛権の行使では、もちろんありませんし、いわゆる武力の行使とは違いますが、だいぶ姿としては似ているんですね。国際社会が、みんなでやっていこうという機運ができてきた。

これはもう10年前20年前とは大きな違いだと思います。そういう時代に合わせて、相手が国であったとしても国同士は協力し合っていくことによって、その国や地域の人たちの幸せな暮らしが守れるんではないのかなと。そのための法律だということを、これからもわかりやすく説明していきたいと思います。

大沼:どうもありがとうございました。今日から始まりました、平和安全法制に関する総理との対談。第1回目、いかがでしたでしょうか。また、明日は「集団的自衛権って何? アメリカの言いなりに戦争するの?」ということで牧島かれん先生がインタビュアーとして、総理にお話を伺っていきます。本日は安倍総裁、どうもありがとうございました。

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勅使川原真衣の今日もマイペースで(全7記事)

選挙で拡散されたのは政策ではなく「推し動画」だけだった ファンダムマーケティングが政治に入り込んだ、“政策なき選挙戦”の正体 [1/2]

【3行要約】
・衆院選で自民党が圧勝したものの、政策論争の不在や「推し活選挙」の台頭など、勝ち負けの裏で民主主義の課題が浮き彫りになっています。
・ 勅使川原氏は「疲労困憊社会では判断コストを下げたい人々が勝ち馬に乗りやすい」と指摘し、ファンダムマーケティングの政治への浸透を警告。
・ 民主主義を守るには「負けても終わらない社会」の構築が必要であり、選挙結果だけでなく政策内容の検証を継続すべきだと提言しています。

改憲も「推し活」選挙も待ったなし 勝ち負けの裏で何が起きているのか

西村志野氏(以下、西村):ここからは前半レギュラーの「ラジマガコラム」。水曜日は、勅使川原真衣さんの『勅使川原真衣の「今日もマイペースで」』。今日はどんなお話でしょうか?

勅使川原真衣氏(以下、勅使川原):今日はやっぱり、衆院選もあったし、受験シーズンだしというところで、みなさんお疲れなんじゃないかと思います。そこで「勝ち負け」について考えたいと思っています。

武田砂鉄氏(以下、武田):はい。

勅使川原:国論を二分するとかも結局わからず、郵政はほとんどその話をしたとか言っていますけど、消費減税、「悲願」と言ったではないですか、途中から。だけど、まったくおくびにも出さなくなっていきましたよね、選挙戦の途中から。

そもそも「政治とカネ」の問題であるとか、Dappiの特別報告の件、これらにぜんぜん向き合った形跡がありませんでした。台湾有事発言も謝っていません。どうなっているんでしょう。

高額療養費制度、これ怖いですよ、本当に。そして本丸は改憲にほかならないと思います。憲法改正だと思いますけども、早いですね、仕事が。2月9日にはもう、憲法改正に向けた調整も進めてまいりますと首相はおっしゃっています。

さらには、憲法改正国民投票が最後にありますので、それについても、もう2月9日に「少しでも早く賛否を問う国民投票が行われる環境をつくれるよう、粘り強く取り組む覚悟」と首相自ら述べました。

早い。早すぎる。いったいどうなってるの、と。でも勝ったんですよね、これは。選挙戦という話でいうと。さらには、2月10日、昨日の日経新聞ではこんな記事が出ていました。

「『推し活』選挙が溶かした政党政治」というタイトルで、印象的だったのは「決められない政治から、決めすぎる政治に変わっているんじゃないか」というような警鐘が鳴らされていました。

武田:民主的に決めるなら、それはそれでいいんですけどね。

勅使川原:おっしゃるとおりですね。

武田:「私がやります」と。

勅使川原:もう国民は置き去りでしたね。ですが、一応勝った負けたというのはあるので、勝ち負けについて、今日は右だ左だという思想以外から、多角的に検討してみたいと思っています。

論点は3つあります。1つは、勝手に名付けたんですけど「一億総疲労困憊社会」だと思っているんです。忙しいでしょう、お疲れじゃないですか。そういった社会における判断コストはどう考えたらいいのかなという話。

そして2点目は、ストーリーとか、ちょっと嫌な言葉ですけどナラティブみたいなものに、私たちは弱いよねという前提で何をどうしていくべきかというお話。そして総じて3点目として、これから人が人を選ぶってどうあるべきなのかというお話を考えていこうと思います。

武田:その手元のメモの、3つ列挙する「1、2、3」がもう「2、2、3」になっていますからね。相当お疲れだなと思いますよ。もう「1、2、3」じゃないですからね。

勅使川原:マジ? 本当だ(笑)。

武田:みなさんお疲れさまでございます。

勅使川原:「2、2、3」ね。そうですね。じゃあ「1」に戻らせていただきます。

今回の自民圧勝も、しっかりトランプ政権も似たようなものがありそうですけども、こうやって民意というものが、かっこ付きですけど明らかになると、こういうふうに言われませんか。

「有権者が考える力がなくなったんじゃないか」とか、「思考停止している」「主体性がない」「右傾化し始めている」「保守回帰だ」という声が上がりやすいですけども、ここはひとつ冷静にいきたいなと思っています。

「使える脳が残っていない」疲れた有権者が省エネで選ぶ理由

勅使川原:私、以前のコラムで「チョイパ(チョイス・パフォーマンス)」の回でもお伝えしたんですけど、心理学とか組織論でも、人というのは基本的に脳の構造的に、意思決定コストをそんなにたくさんは維持していられないと。コストを下げたいと願っている生き物であるというお話をしました。

毎日仕事で「やれこれどうなった、あれどうなった、判断しろ」と言われ、家庭でも「あんたどうすんの」と言って判断を迫られ、人間関係でも迫られ、ニュースでも「ああどうしたのかな、こうしたのかな」とやって、その上で選挙。

今回正直、もう使える脳が残っていないよという方もいらっしゃったんじゃないかなと思います。

武田:いろいろと選挙のあとの報道を見ていると、街中で「どういうふうに投票を決めましたか?」というふうに聞いたら、「AIに聞きました」というふうに言うと、「おい」というふうに言いたくはなるけれど、その脳が残っていない感じというのも、確かにわからんでもないなと思いますけどね。

勅使川原:本当にそうです。それくらい追い込まれたというところもあるような気がします。外食をする時じゃないですけども、だいたい外食する時ってすごく疲れていると、前にも行ったところ、前にも買ったところ。

ないしはすごくおいしいわけじゃないけども、すごくまずいわけでもないという「大きな失敗がないところ」。ないしは「もう一番近いから」みたいな、考えなくて済む、これぐらいの選択肢しかないんですよね、本来。

選挙は違うだろうと言いたいところだけども、有権者がお忙しくてお疲れというのを考えると、かなりそれに近い、ある種の省エネ状態で行われた選択なのかなとも見えます。

意思決定コストを下げたいという話もあるんですけどね、もう1つ知っておきたいのは、これぐらい限られた労力と時間になってくると、最善の選択をしようと思うと、わかりやすいものにまず飛びつきますという話はあるけども、さらには「どうせやるんならば、自分の一票を無駄にしたくないな」と。

選挙に行くことも、何か意味があったと思いたいなという気持ちが出てくるというのも、人間の性かなと思うんですよね。

武田:「ここに入れたら勝つんじゃないかな」という感じの投票行動になるということですね。

勅使川原:そうなんです。自ら勝ち馬に乗るということを自然とやってしまう。気持ちはすごくわかりますね。だって、やってもやらなくても変わらないことって、この社会では愚行とされるじゃないですか。

何か労をなすならば、意味があることと言われているので、どうしてもどこに入れれば自分の一票が無駄にならなかったのかなという意味での投票行動もあったのかなと思います。

武田:もちろん自分が投票したところの候補なり政党が受からなかったり、芳しくない結果のその票にもものすごく意思表示という意味はあるわけですけれどもね。そこまで考えられずに、どこに入れれば勝てるかなというふうに考えてしまうと。

勅使川原:そうですね。まあ今年は雪も降っていたし、寒い中行ったんだからみたいな気持ちにも、これの善し悪し(の判断)はなくなってしまうのかなとも思います。これ、信念とかそういう話じゃなくて、単純に疲労管理の話なんですよね。個人がどう疲労をコントロールするかとか。

あとは「認知的不協和」という言葉が心理学でありますけども、やっぱり自分が願っていることと現実に起きていることにギャップがある時って、人間はモヤモヤとするんですよね。そのモヤモヤは自然と解消したくなる。そういった心理も働いてしまったのかなとも思いました。

「勝ち馬に乗る」のは愚かだからじゃない 政策なき選挙戦で何が拡散された

勅使川原:これを「なんだ勝ち馬に乗って」という言い方で批判だけしていても、ちょっと仕方がないのかなと思うので、今回これを機に、やっぱり「疲れた人」という前提で、判断コストが低いほうに流れる時代の「選ぶ」という行為、これを引き続き探求する必要があるだろうなとは思っています。

武田:そういう勝ち馬に乗り上がってということではなく、もう乗りたくなってしまうものなんだということなんですね。

勅使川原:そういうことです。もう大前提として、じゃあどうするのかを考える必要はありそうです。

そして、タイパ社会であるとか疲労社会を生きる私たちの勝ち負け問題、論点の2番目ですけども、「ストーリーに弱い私たち」という言い方を私はしました。

昨日の日経新聞の記事でちょっとギョッとしたんですけども、こういう一文がありました。「高市早苗氏がもたらした熱狂の背景からは、政策すらも消え去った。あるのはわかりやすい構図に支えられた『早苗推し』という『推し活』だ」と。「ギャー」って感じでしたけども。

これまでね、Nなんとかとか、参政党とか、問題がある政策があったとしても、「政策がない」ってことはなかったんじゃないかなと思うんですよね。でも今回はどうでした? 政策という政策、よくわかりませんでした。討論もしませんでした。

拡散されたのは「早苗動画」ぐらいだったのかなと思うんですよね。しかもその早苗動画も、政策は説明していません。イメージ、ストーリーでしたよね。逆境に立ち向かうヒロイン。笑顔。笑顔なんか随分上手になってきましたよね。

叩かれている、かわいそう、だから応援して、みたいな。政策が曖昧、いいんですそれはと。実現可能性、そんなの知りません。財源、知りませんと。いうところでも、勝てちゃったわけですよね。

武田:これたぶん、その「逆境に立ち向かう」という感じが僕はよくわからなかったんだよね。つまり高市さんって、ここ最近自民党に入った人とか、自民党の外から何か大きな力で立ち向かおうとしているわけではなく、ずっと中にいた人だから、そこでなぜそれが逆境に立ち向かう感じになるのかが……。

そのために、対メディアであったりとか、対別の国であったりとかっていうことを作り上げていったということなんだとは思いますけどね。

勅使川原:そうですね。まあ自民じゃない人からするとツッコミどころしかなかったので、いろいろと指摘、という意味での批判をしてきたわけですけども、批判がもう「非難」だと思い込んでいらっしゃる様子なので、指摘がすべて逆境と捉えられたような気はしますよね。

でもこれおもしろかったのが、批判されればされるほど、彼女の糧になっていったわけですよね。燃料になっていきました。これもう選挙戦、戦だとすると無敵じゃないですか。エネルギー無尽蔵だったわけですから。

でも政治家と有権者の関係でいうと、これは負託でもなければ、期待でも支持でもないですよ。でもこのゲームだとすると、ここに持ち込んだもん勝ちだったということではあるのかなと思います。

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