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平和安全法制のナゼ(全5記事)

安倍首相「徴兵制は明確に憲法違反」 国民の不安に回答

内閣総理大臣・安倍晋三氏が、自民党のトーク番組CafeStaに登場。衆院を通過した安全保障関連法案に対する国民の疑問や不安に対して、安倍首相が自ら解説していきます。今回は「やっぱり心配。徴兵制。」をテーマに、徴兵制が導入されるのではないかとの国民の不安の声に対して安倍首相は「徴兵制は明確に憲法違反」と語り、徴兵制導入の可能性を否定しました。

安倍首相「徴兵制は明確に憲法違反」

丸川珠代氏(以下、丸川):平和安保法制を考える。このシリーズも第5回。いよいよ最終回になりました。今日のテーマは、やっぱり心配、徴兵制ということにしたんですが。なぜかというと、私、いま子供が3歳になりまして、子育てしてるお母さん方から、この平和安全法制の話をしてると必ず徴兵制がって話が出てくるんです。

何か根拠があるわけではないんですけど、何となくこの話を進めると徴兵制があるんじゃないかと感じるお母さんが多いみたいで。特に今、憲法の解釈を我々が現在進行形で変えている中で、徴兵制を憲法を解釈したら出来るんじゃないか? 

そんな漠然とした不安があるようなんですが。政府から徴兵制は憲法違反と、はっきり言っていただいてますよね。

安倍晋三氏(以下、安倍):いつかは徴兵制になるんじゃないか、と野党はずっとキャンペーンをはってるわけですね。意外とこれを、そうかもしれないと不安に思って受け止めておられる方が、たくさんいらっしゃるんですね。

これははっきりと申し上げておかないといけないと思うんですが、典型的な無責任なレッテル張りだと思います。憲法18条には意に反する苦役。これはダメですよ、と書いてある。徴兵制度の本質はですね。意思に反して強制的に徴兵制の義務を負う。

こう書いてありますから。ですから、徴兵制は明確に憲法違反なんだ。これは憲法解釈で変える余地は全くありませんね。これははっきりと申し上げておきたいと思います。

防衛政策上も徴兵制は現代にそぐわない

丸川:これは政権が変わったから、政治が変わったから、変わるものではない、と?

安倍:これは私が言ってるだけではなくて、安倍さんが変わったら、わかんないでしょっていう人もいますが、これは明文に反していますから。憲法にはっきりと意に反する苦役はだめと書いてありますから、政権が変わろうと変わることはありません。

丸川:少なくとも解釈の範囲では絶対にない。でも自民党は憲法を改正しようとしてるよね。だったらそこも変えちゃうんじゃないの? と。

安倍:谷垣総裁時代に、私たちは憲法改正草案を出しましたね。この自民党の憲法改正草案の中にも、現在の18条。意に反する苦役はだめですよって書いてありますから。自民党の草案が実現したとしても全く変わらないとは申し上げておきたい。

また、防衛政策上ですね、徴兵制を導入するという合理的な理由というのがないんですね。

丸川:合理的な理由が、ない。どういうことですか?

安倍:現在の防衛装備というのは大変なハイテク化されているんですね。ハイテク技術をしっかりと身につける必要がありますから、十分に兵士として役に立つためにはですね。そうしたハイテクを使いこなせるようになる為には、相当時間がかかるんです。

いわば徴兵制のように短期間でぐるぐる回っていくという仕組みでは、使いこなす前に、辞めてしまうと。やっと教育が終わったら、辞めてしまう。徴兵制度をやればですね、かえって自衛隊にとっては負担にしかならない。これは世界中でそうなんですね。

丸川:他の国でも徴兵制をとってるところは……お隣の韓国は休戦中でも徴兵制が。他の国はどうなんですか?

安倍:世界各国でも、減少傾向にあります。長い間、徴兵制度を採用してきたドイツですね。フランスにおいても21世紀に入ってからは辞めました。またG7の国々で、ですね。徴兵制度をとってる国は1つもないんですね。

自衛隊の志願者は今も減っていない

丸川:徴兵制と集団的自衛権が、関係あるような話になってる気がするんですが。関係あるんでしょうか?

安倍:これは、ないですね。永世中立国のスイスはですね。世界でも数少ない集団的自衛権を行使しない国ですが、行使しない数少ない国のスイスは徴兵制度なんですね。一方、集団的自衛権をかつてアフガン戦争で行使したことがあるアメリカやイギリスやフランスやドイツやイタリアやカナダ。こういう国々は、徴兵制度ではなくて、志願制度ですから。徴兵制度と集団的自衛権というのは全く関係がないんです。

丸川:やっぱりそうなんですね。徴兵制を全く関係ないものって考えても、将来、自衛隊の活躍の場が広がることを、いろんな意味でとらえて志願する人が減ってきたら結局徴兵制にしないと、もたなくなるんじゃないのかって仰る方も中にはいらっしゃるんですよね。

安倍:そうですね。我々がいま、申し上げたようなことを言って反応すると、今、丸川さんが言ったようなことを言うんですね。しかしですね、現実はどうかというと自衛隊に応募する方、実は7倍の競争率なんですね。

丸川:7倍。

安倍:7倍なんです。閣議決定をした昨年以降でも、7倍。つまり昨年、集団的自衛権を一部容認する閣議決定を行いましたね。それによって応募する人は減るはずだといって今、丸川さんが言ったような批判をするんですが。

実は7倍のままなんですね。これはですねやはり、東日本大震災の時もそうだったんですが、自衛隊のみなさんは本当に困難な仕事をしてくれます。ああいう状況の中で身に危険があっても、そうなんですね。

御嶽山の時も救助に向かった。また噴火すれば身に危険が迫るかもしれない。しかし自分たちこそ日本人の命を守るんだ。ああいう姿を見てですね。自分もこういう意義ある仕事をしたい。やりがいのある仕事をしたいと思う人たちがたくさん日本人の中にはいる。

そう考えてる人たちがいるんだということを私は大変誇りに思いますね。

丸川:本当そうですね。そうやって自ら志してくださる方がいるってことのありがたさをしみじみ感じます。

安倍:そういう若者がいなくなったら、その段階で国というのはですね。滅亡していくんじゃないかなと思いますね。

丸川:少子高齢化と関係ないですよね。

安倍:これは関わりがない話だと私は思いますね。

集団的自衛権に関する野党の対案について

丸川:いままで伺ってきて、徴兵制はこれはないと考えていいでしょうかね?

安倍:これははっきりと釘を刺しておきたいんですが。徴兵制度というのはですね、憲法で禁止されていますし、自民党の憲法草案でも禁止されているし、政権が変わっても、現在の憲法の解釈の変更の余地はまったくない。

丸川:徴兵制はない。集団的自衛権とも関係がない話ですということですね。それで、今までずっと平和安全法制の議論を進めてきて、いろんな議論が出てきていますけど、ついに先週、維新の党が、対案を出してきました。これに対して与党を経験した民主党からどういう案があるのかというと……。

政府の批判はしますが、自分たちの対案という話は、出てきてないですよね。

安倍:残念ながらですね、集団的自衛権に関わる対案は出していないんですね。岡田さん自体はですね、安倍政権が進めている集団的自衛権には反対してるけども、今の憲法でも認められている集団的自衛権というものは、あるという発言も実はしているんですね。

丸川:去年の雑誌のインタビューだと思うんですけど、岡田さんが、集団的自衛権をまったく認めないかといえば、本当に必要性があって非常に限定されたケースであれば、それはありうると考えていますということで。ほとんど同じじゃないかと思います。

安倍:私もほとんど同じじゃないかと思うんですが、実際、党として賛成か。いわば憲法に違反してるのか違反していないのか、ということはですね。何回もどうなんですか、ということを問いかけてるんですけども未だに答えがないんですね。

海上警備行動での防衛は非現実的

丸川:岡田さんがおっしゃることの1つに邦人を乗せた船だと海上警備行動で守るという話があるんですけど、これは現実性があるんですか?

安倍:海上警備行動。自衛官が警備行動をするとか、いかにも軍事的な行動に思われるんですが、これはですね、海警行動はいわば警察活動なんですね。権限は警察官と同じなんです。相手が犯罪者のようなグループであれば、有効かもしれませんけども、相手が国で武力行使をしてるという状況で、ですね。

まさに警察官と同じ権限で立ち向かうというのはですね。まるでミサイルに対してピストルで立ち向かえと言ってるのと同じであって、極めて非現実的だと言わざる得ないと思いますね。

丸川:具体的に実際の場面を考えると、もたないですよね。

安倍:むしろ警察官に本当に限られた権限しかあたえずに、武器の使用に関しても限られた権限しかあたえずに、武力行使をしている軍隊に立ち向かえというのはですね。まったく自衛隊のことも、命はもちろんですが、国を守るという観点からは間違ってる。

これは民主党、岡田さんにですね。私が、日本を守って警戒にあたっている米国の艦船が攻撃された時に守れなくていいんですか? という問いかけにですね。答えなくてはいけないという追い詰められた状況で、警察官の権限しかない海警行動で答えた。苦し紛れで答えたとしか私は思えないですね。

丸川:現実問題、きちんと自分たちの身を守れるような状況ではない状況で自衛隊を出すことの方が私はむしろ無責任なような気がします。

安倍:まったくその通りですね。

丸川:過去をみると民主党自身が憲法解釈を変えてきてますよね。例えばかつて野党時代は当時の菅代表が衆議院の本会議で自衛隊のイラク派遣で、憲法に明らかに違反した活動だと述べました。けれども、その時はたしか派遣を命令した小泉総理に辞任を要求したんですよね。

自分がいざ政権をとったら何の説明もなく合憲ですと説明してるんですよね。

安倍:あの時イラクに派遣した時はですね。憲法違反だといって強く非難をしてまいりました。しかし今ですね。どう考えてるかと言えば、何の説明もないということだと思います。あの時もですね、非戦闘地域ということが問題になったんですが、それも含めて憲法違反だと言っていたにもかかわらず、今の議論ではですね。

戦闘現場ではなくて、戦闘地域はですね、事実上容認してるような発言。それも含めて憲法違反だと主張していたあの意見はどこにいったんですかという気がいたしますね。

丸川:気がついたらずるずると変わっていったという気がしてしまうんですが。大変無責任な印象を受けるわけですけども、私たち一生懸命、民主党の反対の中、法案を作ったのに、いざ政権をとったら普通に何の説明もなく使うってことですね。これは絶対にみなさんに忘れて欲しくないことだと私は思っています。

自衛隊を違憲だという憲法学者とは議論が噛み合わない

丸川:忘れてならないといえば、世界一周旅行のピースボート。ピースボートは海賊が出る海域を通る時に自衛隊に護衛してくれって頼んで自衛隊に守ってもらってますよね。

安倍:海賊対処のための法案を出した時もですね。民主党は反対でした。しかし実際に危なくなるとですね。助けてと。こういうことなんだろうなと思いますね。また、弾道ミサイル防衛のための法改正にも反対したんですね。

しかし政権時代にですね命令を発動して、彼らが反対した法律を使って、自衛隊を出動させたということなんです。とにかく反対はするが政権につくと説明はせずにですね、実際に自分たちが反対した法律を使うということなんですね。

丸川:与党を経験した党だからこそ、我々は責任をもった議論をしたいとお互いに思ってるんですけど、あの時はなんだったんだ、ってことが次々に続いてますよね。

安倍:やっぱりちゃんと対案を出していただければ、ですよね。維新の党はちゃんと対案が出ました。そうなると国民のみなさんの前で、どちらの案がいいのか議論もかみあったのではないかと思いますけどね。

丸川:やっぱり与党を経験したからこそ責任を持った議論をしたいと思いますね。また憲法学者の先生方の話なんですけど。昨日のNHKの日曜討論に出ていた憲法学者の先生なんですが、平和安全法制は徹頭徹尾、反対だ。これは違憲だとおっしゃったんですね。

違憲だとおっしゃった先生が、調べたら自衛隊も違憲だと……。個別的行使の自衛権も違憲だと。徹頭徹尾、違憲だというのはこの先生が違憲だというのは、わかるんですが。そういう根本的に意見が違う方に、集団的自衛権を聞いてもあんまり噛み合わないような気がするんです。

安倍:そうなんですね。もちろん憲法学者の方のご意見というのは専門家の方のご意見として、私も耳を傾けなければならないと思いますが。しかし同時に憲法学者の主流の方々は、集団的自衛権の反対というのも自衛権そのものに反対という方々。

いわば自衛隊も違憲だという方々が、多いんですね。PKO法を改正した時もですね。あの時は朝日新聞がアンケートをとったんですね。今回と同じように。自衛隊をPKOで海外に派遣するのは、憲法に反しますか? と。

約7割の方は、憲法違反だ、と。当時の答えなんです。その方々の答えにそって物事を決めるのであればですねPKOもできませんでした。それどころか、自衛隊だって創設することができなかったんですね。

だから私たち政治家が、ですね。国民の命、領土、領海をしっかり守っていく。そのために必要な自衛の措置は何かということを考えぬいて。まさに私たちの国民から選挙によって選ばれた私たちが自分たちの責任で持って、判断をしなければならないと思います。

安保法制は国民の命を守るためのもの

安倍:そもそも憲法において合憲か違憲かの最終的な判断をするのは最高裁ですね。最高裁において昭和34年の砂川判決で、必要な自衛の措置をとれるということが明確に判決で出ています。ですから必要な自衛の措置を私たちは考えていかなければならないと思います。

今日もいろんなご意見をいただいています。これからもこうした機会を通じて国民の皆様に、わかりやすく説明していきたい。この問題はなかなかわかりにくい。今日で5日目になりまして、連続で見ていただいた方はご理解が進んだのではないかな、と思います。丸川さんへ激励の言葉が……。

丸川:本当に見ていただいて。わかりやすい番組でしたと。ありがとうございます。改めて、国民の皆様にメッセージを。

安倍:今回の法制はですね。決して戦争をするための法律ではなくて、まったく逆なんですね。もし外国から攻められた時、その時に、国民の命を守るための備えをしている。備えをしていることによってですね、ちゃんと戸締りをしている家には泥棒が入らないと同じように、備えをしてることによって、事前に戦争を防ぐことができると。

それが抑止力なんですね。つまり戦争に日本が巻き込まれた時、侵略されたり国民の命が危うくなったりさせないために事前にそれを防ぐ。切れ目のない対応を可能にするための法律なんです。

丸川:持つことによって国が守られるんですよね。

安倍:持つことによって守られるし戦争をしようと思ってる人たちが思いとどまる。そのための法律だということです。これからもしっかりと説明していきたいと思います。

丸川:総裁。是非またCafeStaに出ていただけますか。CafeStaを通じて総裁のお言葉をうかがいたいと思います。

安倍:よろしくお願いします。

丸川:どうもありがとうございました。

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勅使川原真衣の今日もマイペースで(全7記事)

選挙で拡散されたのは政策ではなく「推し動画」だけだった ファンダムマーケティングが政治に入り込んだ、“政策なき選挙戦”の正体 [1/2]

【3行要約】
・衆院選で自民党が圧勝したものの、政策論争の不在や「推し活選挙」の台頭など、勝ち負けの裏で民主主義の課題が浮き彫りになっています。
・ 勅使川原氏は「疲労困憊社会では判断コストを下げたい人々が勝ち馬に乗りやすい」と指摘し、ファンダムマーケティングの政治への浸透を警告。
・ 民主主義を守るには「負けても終わらない社会」の構築が必要であり、選挙結果だけでなく政策内容の検証を継続すべきだと提言しています。

改憲も「推し活」選挙も待ったなし 勝ち負けの裏で何が起きているのか

西村志野氏(以下、西村):ここからは前半レギュラーの「ラジマガコラム」。水曜日は、勅使川原真衣さんの『勅使川原真衣の「今日もマイペースで」』。今日はどんなお話でしょうか?

勅使川原真衣氏(以下、勅使川原):今日はやっぱり、衆院選もあったし、受験シーズンだしというところで、みなさんお疲れなんじゃないかと思います。そこで「勝ち負け」について考えたいと思っています。

武田砂鉄氏(以下、武田):はい。

勅使川原:国論を二分するとかも結局わからず、郵政はほとんどその話をしたとか言っていますけど、消費減税、「悲願」と言ったではないですか、途中から。だけど、まったくおくびにも出さなくなっていきましたよね、選挙戦の途中から。

そもそも「政治とカネ」の問題であるとか、Dappiの特別報告の件、これらにぜんぜん向き合った形跡がありませんでした。台湾有事発言も謝っていません。どうなっているんでしょう。

高額療養費制度、これ怖いですよ、本当に。そして本丸は改憲にほかならないと思います。憲法改正だと思いますけども、早いですね、仕事が。2月9日にはもう、憲法改正に向けた調整も進めてまいりますと首相はおっしゃっています。

さらには、憲法改正国民投票が最後にありますので、それについても、もう2月9日に「少しでも早く賛否を問う国民投票が行われる環境をつくれるよう、粘り強く取り組む覚悟」と首相自ら述べました。

早い。早すぎる。いったいどうなってるの、と。でも勝ったんですよね、これは。選挙戦という話でいうと。さらには、2月10日、昨日の日経新聞ではこんな記事が出ていました。

「『推し活』選挙が溶かした政党政治」というタイトルで、印象的だったのは「決められない政治から、決めすぎる政治に変わっているんじゃないか」というような警鐘が鳴らされていました。

武田:民主的に決めるなら、それはそれでいいんですけどね。

勅使川原:おっしゃるとおりですね。

武田:「私がやります」と。

勅使川原:もう国民は置き去りでしたね。ですが、一応勝った負けたというのはあるので、勝ち負けについて、今日は右だ左だという思想以外から、多角的に検討してみたいと思っています。

論点は3つあります。1つは、勝手に名付けたんですけど「一億総疲労困憊社会」だと思っているんです。忙しいでしょう、お疲れじゃないですか。そういった社会における判断コストはどう考えたらいいのかなという話。

そして2点目は、ストーリーとか、ちょっと嫌な言葉ですけどナラティブみたいなものに、私たちは弱いよねという前提で何をどうしていくべきかというお話。そして総じて3点目として、これから人が人を選ぶってどうあるべきなのかというお話を考えていこうと思います。

武田:その手元のメモの、3つ列挙する「1、2、3」がもう「2、2、3」になっていますからね。相当お疲れだなと思いますよ。もう「1、2、3」じゃないですからね。

勅使川原:マジ? 本当だ(笑)。

武田:みなさんお疲れさまでございます。

勅使川原:「2、2、3」ね。そうですね。じゃあ「1」に戻らせていただきます。

今回の自民圧勝も、しっかりトランプ政権も似たようなものがありそうですけども、こうやって民意というものが、かっこ付きですけど明らかになると、こういうふうに言われませんか。

「有権者が考える力がなくなったんじゃないか」とか、「思考停止している」「主体性がない」「右傾化し始めている」「保守回帰だ」という声が上がりやすいですけども、ここはひとつ冷静にいきたいなと思っています。

「使える脳が残っていない」疲れた有権者が省エネで選ぶ理由

勅使川原:私、以前のコラムで「チョイパ(チョイス・パフォーマンス)」の回でもお伝えしたんですけど、心理学とか組織論でも、人というのは基本的に脳の構造的に、意思決定コストをそんなにたくさんは維持していられないと。コストを下げたいと願っている生き物であるというお話をしました。

毎日仕事で「やれこれどうなった、あれどうなった、判断しろ」と言われ、家庭でも「あんたどうすんの」と言って判断を迫られ、人間関係でも迫られ、ニュースでも「ああどうしたのかな、こうしたのかな」とやって、その上で選挙。

今回正直、もう使える脳が残っていないよという方もいらっしゃったんじゃないかなと思います。

武田:いろいろと選挙のあとの報道を見ていると、街中で「どういうふうに投票を決めましたか?」というふうに聞いたら、「AIに聞きました」というふうに言うと、「おい」というふうに言いたくはなるけれど、その脳が残っていない感じというのも、確かにわからんでもないなと思いますけどね。

勅使川原:本当にそうです。それくらい追い込まれたというところもあるような気がします。外食をする時じゃないですけども、だいたい外食する時ってすごく疲れていると、前にも行ったところ、前にも買ったところ。

ないしはすごくおいしいわけじゃないけども、すごくまずいわけでもないという「大きな失敗がないところ」。ないしは「もう一番近いから」みたいな、考えなくて済む、これぐらいの選択肢しかないんですよね、本来。

選挙は違うだろうと言いたいところだけども、有権者がお忙しくてお疲れというのを考えると、かなりそれに近い、ある種の省エネ状態で行われた選択なのかなとも見えます。

意思決定コストを下げたいという話もあるんですけどね、もう1つ知っておきたいのは、これぐらい限られた労力と時間になってくると、最善の選択をしようと思うと、わかりやすいものにまず飛びつきますという話はあるけども、さらには「どうせやるんならば、自分の一票を無駄にしたくないな」と。

選挙に行くことも、何か意味があったと思いたいなという気持ちが出てくるというのも、人間の性かなと思うんですよね。

武田:「ここに入れたら勝つんじゃないかな」という感じの投票行動になるということですね。

勅使川原:そうなんです。自ら勝ち馬に乗るということを自然とやってしまう。気持ちはすごくわかりますね。だって、やってもやらなくても変わらないことって、この社会では愚行とされるじゃないですか。

何か労をなすならば、意味があることと言われているので、どうしてもどこに入れれば自分の一票が無駄にならなかったのかなという意味での投票行動もあったのかなと思います。

武田:もちろん自分が投票したところの候補なり政党が受からなかったり、芳しくない結果のその票にもものすごく意思表示という意味はあるわけですけれどもね。そこまで考えられずに、どこに入れれば勝てるかなというふうに考えてしまうと。

勅使川原:そうですね。まあ今年は雪も降っていたし、寒い中行ったんだからみたいな気持ちにも、これの善し悪し(の判断)はなくなってしまうのかなとも思います。これ、信念とかそういう話じゃなくて、単純に疲労管理の話なんですよね。個人がどう疲労をコントロールするかとか。

あとは「認知的不協和」という言葉が心理学でありますけども、やっぱり自分が願っていることと現実に起きていることにギャップがある時って、人間はモヤモヤとするんですよね。そのモヤモヤは自然と解消したくなる。そういった心理も働いてしまったのかなとも思いました。

「勝ち馬に乗る」のは愚かだからじゃない 政策なき選挙戦で何が拡散された

勅使川原:これを「なんだ勝ち馬に乗って」という言い方で批判だけしていても、ちょっと仕方がないのかなと思うので、今回これを機に、やっぱり「疲れた人」という前提で、判断コストが低いほうに流れる時代の「選ぶ」という行為、これを引き続き探求する必要があるだろうなとは思っています。

武田:そういう勝ち馬に乗り上がってということではなく、もう乗りたくなってしまうものなんだということなんですね。

勅使川原:そういうことです。もう大前提として、じゃあどうするのかを考える必要はありそうです。

そして、タイパ社会であるとか疲労社会を生きる私たちの勝ち負け問題、論点の2番目ですけども、「ストーリーに弱い私たち」という言い方を私はしました。

昨日の日経新聞の記事でちょっとギョッとしたんですけども、こういう一文がありました。「高市早苗氏がもたらした熱狂の背景からは、政策すらも消え去った。あるのはわかりやすい構図に支えられた『早苗推し』という『推し活』だ」と。「ギャー」って感じでしたけども。

これまでね、Nなんとかとか、参政党とか、問題がある政策があったとしても、「政策がない」ってことはなかったんじゃないかなと思うんですよね。でも今回はどうでした? 政策という政策、よくわかりませんでした。討論もしませんでした。

拡散されたのは「早苗動画」ぐらいだったのかなと思うんですよね。しかもその早苗動画も、政策は説明していません。イメージ、ストーリーでしたよね。逆境に立ち向かうヒロイン。笑顔。笑顔なんか随分上手になってきましたよね。

叩かれている、かわいそう、だから応援して、みたいな。政策が曖昧、いいんですそれはと。実現可能性、そんなの知りません。財源、知りませんと。いうところでも、勝てちゃったわけですよね。

武田:これたぶん、その「逆境に立ち向かう」という感じが僕はよくわからなかったんだよね。つまり高市さんって、ここ最近自民党に入った人とか、自民党の外から何か大きな力で立ち向かおうとしているわけではなく、ずっと中にいた人だから、そこでなぜそれが逆境に立ち向かう感じになるのかが……。

そのために、対メディアであったりとか、対別の国であったりとかっていうことを作り上げていったということなんだとは思いますけどね。

勅使川原:そうですね。まあ自民じゃない人からするとツッコミどころしかなかったので、いろいろと指摘、という意味での批判をしてきたわけですけども、批判がもう「非難」だと思い込んでいらっしゃる様子なので、指摘がすべて逆境と捉えられたような気はしますよね。

でもこれおもしろかったのが、批判されればされるほど、彼女の糧になっていったわけですよね。燃料になっていきました。これもう選挙戦、戦だとすると無敵じゃないですか。エネルギー無尽蔵だったわけですから。

でも政治家と有権者の関係でいうと、これは負託でもなければ、期待でも支持でもないですよ。でもこのゲームだとすると、ここに持ち込んだもん勝ちだったということではあるのかなと思います。

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