深掘り

第3回プルデンシャル経営陣、危機感薄く事態悪化 「無限連鎖」営業は限界

柴田秀並

 不祥事に揺れるプルデンシャル生命保険で、営業を担うライフプランナー(LP)は混乱のまっただ中にいる。

 2月初め、あるLPは本社のお客様センターから「1月 郵送費」というメールを受け取った。

 お客様センターは、顧客から保険解約の連絡を受けると、手続き書類を送る。郵送費は担当LPの給与から天引きする仕組みで、金額などを伝えるメールだった。

 プルデンシャルでは、こうした費用を含めて全ての営業経費をLPが自己負担するが、不祥事後も例外ではなかった。

【連載】墜ちたブルー プルデンシャル生命「巨額不正」

社名のロゴの色から、「ブルー」はプルデンシャル生命保険の象徴でした。顧客からの金銭詐取などが31億円も発覚し、その信用は大きく墜(お)ちました。不正の温床となった組織構造に迫り、今後の行方を探ります。

 1月に巨額の不正を公表した後、このLPの顧客も解約が相次いでいる。書類の郵送費は1件180円程度だが、むなしさと悔しさが募る。

 自身は不正に手を染めず愚直にやってきたというが、将来がまったく見通せなくなった。問題を起こした同僚LPへの怒りもあるが、「経営陣の危機管理対応の失敗がここまで事態を悪化させたと思えてならない」という。

調査内容を「脱色」した経営層

 プルデンシャルは、元社員が顧客に対する詐欺容疑で逮捕されるなどし、2024年8月から全顧客を対象に調査を始めた。しかし、経営層の危機感は一貫して薄かった。

 関係者によると、担当者は金融庁に出向き、調査のあり方などを調整した。不正を招いた原因として、創業以来のビジネスモデルの問題性まで踏み込み、24年中に中間的な公表をする方向で一致した。

 だが、担当者が会社に戻って上層部に報告すると、親会社のトップだった浜田元房会長兼最高経営責任者(CEO)らが立ちはだかったという。関係者は「自分に責任が及ぶことを恐れたのか、当たり障りのない内容に脱色しようとした。公表も突っぱねた」と明かす。

全件調査のさなか、リゾート地でパーティー

 こうした消極的な姿勢を踏まえ、金融庁は25年春、保険業法に基づく報告徴求命令を出した。それでもなお、プルデンシャルには楽観ムードが漂っていた。

 25年7月、成績優秀なLPらに「社長杯」を授ける表彰式が、例年通り開かれた。会場は宮崎市の「フェニックス・シーガイア・リゾート」で、交通費や宿泊費は家族分を含めて会社が負担し、豪華な夕食パーティーも開催。要項には赤字で「SNSへの投稿は絶対におやめください」と記された。

 見かねた金融庁は、浜田氏がトップを務め続けることに難色を示すようになった。プルデンシャルは25年10月に浜田氏の辞任を発表した。事実上の引責辞任だったが、公表文には「退任」としか書かなかった。

後手に回った対応

 31億円超もの不正を公表したのは今年の1月16日。だが、資料だけで会見は開かなかった。

 この対応が批判を浴びると、1週間後に方針転換して会見した。間原寛社長(当時)は「回答できない」「差し控える」という発言を連発し、批判は弱まるどころか強まった。

 ベテランLPは「その場をしのぐことだけを考え、記者の向こう側にいる契約者の姿を想像できない、ひどい対応だった」と嘆いた。

 対応は後手に回り、2月になって新規営業の90日間の自粛を発表した。プルデンシャルはこの間に「ガバナンス強化、内部検証、社員教育」を実施するというが、道のりは険しい。

LP任せ、どこまで転換?

 焦点は、LP個人に委ねる営業手法をどこまで転換するかだ。

 プルデンシャルには「無限連鎖法」という言葉がある。例えば、顧客に知人を3人紹介してもらい、その3人に更に3人ずつ紹介してもらい、今度は9人に3人ずつ紹介してもらう……というイメージだ。

 他の生保と違い、会社として集客のお金や資源は出さない。職域営業もなければCMも流さない。顧客は連鎖法でLPに独力で開拓させ、その代わりに「フルコミッション(完全歩合)型」に近い高報酬で応じてきた。

 福岡大の植村信保教授(保険論)は、信頼が低下し、集客は極めて困難になったとみる。その上で「これまで通りLP任せでいくのか、完全歩合型を脱却して違う道を進むのか。LPらに早急に示す必要がある」と話した。

「デジタル版を試してみたい!」というお客様にまずは4カ月間月額200円でお試し

この記事を書いた人
柴田秀並
経済部|金融担当
専門・関心分野
金融、保険、資産運用

関連トピック・ジャンル

ジャンル

連載墜ちたブルー プルデンシャル生命「巨額不正」の温床(全4回)

この連載の一覧を見る