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ボスめし

戦前に毎日新聞記者だった子母沢寛の「味覚極楽」に倣い、食の思い出やこだわりを通して著名企業経営者の人柄を描きます。

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ボスめし

軽井沢で畑を始め野菜が好きに キャンプファイヤー・家入一真代表

コロナ禍では飲食店などによるクラウドファンディングを使った資金調達がすごく伸びたと話すキャンプファイヤーの家入一真代表取締役=東京都渋谷区で2024年6月25日午前11時55分、山越峰一郎撮影
コロナ禍では飲食店などによるクラウドファンディングを使った資金調達がすごく伸びたと話すキャンプファイヤーの家入一真代表取締役=東京都渋谷区で2024年6月25日午前11時55分、山越峰一郎撮影

 食の思い出やこだわりを通して、企業経営者の人柄を描く「ボスめし」。15回目はクラウドファンディング国内最大手「キャンプファイヤー」の家入一真代表取締役に聞きました。【聞き手・山越峰一郎】

場末の店で会食

 元々、食に対するこだわりは、それほどありませんでした。ただ、移住先の軽井沢で3月から畑を始めて、野菜が好きになりました。

 会食でいろいろな店へ連れて行ってもらったり、紹介してもらったりする機会が多いのですが、基本的になんでもおいしく食べられます。

 僕より上の世代の経営者は、会食も含めてすごくラグジュアリー(ぜいたく)で、高級なワインを飲む方が多いですね。70歳でも(高級店の)「ウルフギャング・ステーキハウス」のお肉をペロリと召し上がります。何歳になっても元気で、お酒もガブガブ飲むし、生命力が違うのかなって思います。年齢もあるのかもしれませんが、僕はそんなに肉を食べられなくなりました。結果的に野菜メインです。体も軽いし、いいですけどね。

 一方で僕の下の世代になればなるほど、「堅苦しい店は行きたくないです」という経営者が増えている印象があります。若い起業家とご飯食べるときに、ちょっといい店を予約していた時期もあるのですが、「こういう店でなくていいです」「もっと気楽なところがいいです」と言われることが増えています。「イエさんがいつも行くような、本当に場末な感じの店に行ったことがないので連れて行ってください」ですとか。

地方出張でも定食屋

 地方出張も多いのですが、おばあちゃんがやっている場末の定食屋によく行きますし、むしろその方がいいですね。堅苦しい会食も、昔は見たことがない世界を見るようで楽しかったですが、今は普通の定食屋の方が好きです。

 軽井沢はさすがにおしゃれな店が多いのですが、近くの御代田とか小諸とか佐久にある、おばあちゃんがやっている定食屋によく行きます。しょうが焼き定食もあれば、ナポリタンもあったり、オムライスもあったり、焼き魚定食もあったりと、なんでもありの店です。

 地方も含め、そういったお店へ週2、3回行きます。いま、週3地方、週3軽井沢、週1東京という感じですね。

スナックで地域の人と仲良く

 キャンプファイヤーには地域ごとにパートナーがいます。僕らが東京にいるとなかなかリーチ(到達)できない案件を、パートナーが見つけてきたり伴走したりしています。そこで、パートナーと一緒に地域でクラウドファンディングの説明会や交流会を地道にやっています。

 地方でも「できるだけ地元の人が日常的に行く店へ連れて行ってください」と頼んでいます。郷土料理を食べられるお店ですとか、地域のご飯を出してくれる地元のお店へ連れて行ってもらいます。観光客向けではなく、かしこまった店でもなく、本当に地元のお店で地元の料理を出してくれる店がうれしいですね。ご飯を食べた後も、例えばスナックだとか地域の人たちが普通に飲みに行く、知らない人でも仲良くなるような店へ飛び込みで行ったりします。

 先週も週末はずっと三重県の尾鷲へ行っていました。「消滅可能性都市」の先端を行っているエリアで、森の再生に関わってきました。夜は地元の人たちが集うような、朝5時までおばあちゃん一人でやっている鉄板焼き屋へ連れて行ってもらいました。食器はきれいではなく、虫も出てくる。だからこそ、いい味を出している。そういうところが好きですね。でも、どんどんなくなっているんですよね。

 北海道の釧路より東はすごく盛り上がっているのですが、最近そこで食べたジンギスカンも普通においしかったですね。釧路で食べた炉端焼きもおいしかった。ツブ貝がめちゃおいしいんですよ。甘辛く煮込んだ貝を延々と出してくれるお店があって、それを食べながら酒を飲みました。

 あとは地元の漁師が行く店で、朝から海鮮丼を普通に食べました。北海道で取れた魚介がふんだんに乗っかっていて1000円くらいと、値段も全然安い上に山盛りでした。

軽井沢で畑を始める

 今年3月からは畑を始めました。昨年4月に軽井沢へ移住して、森の中で暮らすようになり、自然に触れていく中で、自分でも野菜を育ててみたいと思うようになったことがきっかけです。

 畑は友人がやっていた土地です。体調不良で荒れ地になっていて、「イエさんやってみる?」と声をかけてもらいやるようになりました。

 土を耕さない農法をしているのですが、自分ができることなんて雑草を抜いたり、カンカン照りの時に水をまいたり、そんなものです。当然ですが、雨が続く日もあれば晴れが続く日もあり、虫に食われたりカラスが食べたり、天気もそれ以外もコントロールできない要素がすごく大きいですよね。

 会社を経営すると目標の数字があり、そこを目指して頑張るわけですけれども、大きな時代の変化であったり価値観の変化であったり、さまざまな要因によって僕らのサービスも形を変えていきますし、全てをコントロールできるわけではない。そういったところは、農業につながる部分があるなとなんとなく感じています。

 育てているのは一般的な野菜を20種類ぐらいです。トマト、ナス、モロヘイヤ、レタス、トウモロコシ、水菜――。ようやく食べられるぐらいまで育ってきたので、収穫して食べるのですが、やっぱりおいしいんですよね。思い入れがあるからなのだと思うんです。

 肥料や農薬は使っていないので、その場でちぎって食べました。今までだったら全然考えられない。そもそも、僕はあまり野菜を積極的に食べるタイプではなかったです。自分で育て始めてから、野菜が好きになりましたね。

 野菜嫌いではなかったですが、積極的に食べはしなかったですね。自分からサラダを頼むことはなかったですし、メインの横についている野菜も残したこともありました。今は野菜から食べます。

農業で現実が拡張

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