第507話 ロミジュリ
「構わんぞ。好きにするがよい」
「あ、そんなあっさりな感じですか」
以前ジュリエットさんに渡した転送箱で、お話がありますと丁寧な文面でお便りを送ったら、すぐに転移で連れて来られた。
さっき転移は抵抗出来ると言ったが、抵抗する間もなくあっという間である。魔法構築が滑らかすぎて、発動された事すら分からなかった。
前回もそんな感じで連れて来られたから、今回こそ爪痕を残してやるぜって思ってたのに。
ジュリエットさんは、まだまだ遠い存在ですわ。
「あの地が吸血鬼の国だったのは何年前だったと思っておるのじゃ。今更思い入れなんてある訳がなかろう。あそこを更地の砂漠に変えたのは妾じゃしの」
「はえー。そうだったんですか」
あそこを砂漠に変えたのはジュリエットさんらしい。国を更地にして砂漠にするって…。一体何をどうしたらそうなるんだ…。
吸血鬼の痕跡とかを消す為にそうしたのかもしれないが…。スケールが大きすぎますよ…。
「あそこにまだロミオの遺体があれば、それも拒否してたかもしれぬがの。ライラルト教会が持って行ったようじゃし、もうどうでも良いわい」
「………そうですか」
「むっ? なんじゃ、その色は。……あ、魔王の名前を言ってもうたかの」
「……聞いて良かったやつです?」
「構わん構わん」
ポロッと魔王の名前を言うもんだから、びっくりである。ポーカーフェイスで平静を装ってみたが、俺をジッと見たジュリエットさんが、失敗失敗みたいな感じで軽く流すもんだから、更にびっくりである。
色ってなんだ、色って。
ベルみたいな事を言っちゃってさ。
もうその辺も隠す気がなくなっちゃってるじゃん。
ってか、ロミオとジュリエットってさ…。
前世でも聞いた事がある組み合わせだぞ。
この世界が何かしらの作られた世界なら、そういう名前にしたって事は、関係性も似てるんじゃないの?
生憎、ロミジュリの詳しい話は知らないけど、ふわっとなら知ってる。
確か敵対名家同士の男女が偶然出会って恋に落ちるものの、色々あって二人とも死んじゃうんじゃなかったけ? で、この二人の死をキッカケに両家は和解するみたいな。
違ったっけな。
まあ、とりあえずロミジュリは最終的には結ばれないお話だったはず。
この世界のロミジュリはどうだったんだろう。
仮に似たような流れでも、この世界では和解的な事はなかったんじゃないかな。吸血鬼自体がジュリエットさん以外滅んじゃってるし。
何があってロミオさんが魔王になって、何があってジュリエットさんしか生き残ってないのか。
レイモンド君、非常に気になります。
「前も言ったと思うが、妾の口から言いたくないぞ。気になるなら自分で調べる事じゃな。痕跡や資料は消したつもりじゃから、容易ではないと思うがの」
「分かりました」
気になるものの、前回のジュリエットさんの怒りを見る感じ、安易に聞いて良い話でもない。恐らく、そこそこ大きな地雷だと思うし。
またもや、俺の心の内を見たであろうジュリエットさんは、教える気はないと釘を刺す。ただ、自分達で調べる分には何も言わないらしい。
これは
肝心な時に役に立たない事が多いが、今回は結構重要な話っぽいし、知ってるかもしれない。
ダンとカイルにお願いしよう。
あ、そういえば頼まれてた斥候も選抜が済んでたんだ。ついでに合流させよう。
「そういえば、お主は子供は作らんのかえ?」
「はえ?」
「子供じゃ、子供。エルフの巫女と刀娘とそれなりに励んでおろうが。お主、子供が好きなんじゃろう? その割には律儀に毎回避妊しておるのが気になっての」
俺の用件は済んだし、ジュリエットさんが話したい事があればお喋りに付き合いますよと言えば、いきなり下世話な話をぶっ込まれた。
「まあ、いずれ欲しいなとは思ってますが…。色々落ち着いてからですね」
「ふむ。そういうものなのか」
「正直、忙しすぎて子供との時間を取れる気がしませんので」
俺がこの世界で関係を持ったのは、カタリーナとアンジーの二人だけ。これから増やしていく予定もないが、一応毎回避妊している。
この世界、身体に全く害のない完璧な避妊薬が何故か存在する。
それも非常に安価で。
どんな薬よりも避妊薬は安い。
欠点はクソ不味い事だけである。
まあ、割と性に大らかな世界だし、そういうのが発展したんだろうなぁと勝手に思ってるが。
俺も子供は欲しいと思ってるが、今は無理だ。忙しすぎて子供を放置する未来が容易に想像出来る。それか、子供に構いすぎて目標を疎かにするか。
なら、落ち着くまでは我慢するよね。
因みにヒューマンと他種族でも子供は普通に作れる。ハーフエルフだったり、半獣人だったりね。ドワーフはドワーフ自体をまだ見た事がないから知らないが、多分出来るだろう。
エルフと獣人とかの組み合わせももちろん可能だ。その組み合わせのハーフは見た事がないが、昔は居たらしいとカタリーナに聞いた事がある。
ただ、他種族とエルフのハーフはエルフから物凄い差別対象になる。全種族を見下してるエルフが、他種族との子供なんて認める訳がないだろう。
半獣人なんかは良く見かけるし『クトゥルフ』にも結構居るからね。比較的獣人差別をしている帝国以外は、普通に受け入れられている。
「というか、せめて夜の営みを覗くのはやめてくれませんかね」
「却下じゃ。こうやってお主を揶揄えるからの。嫌なら妾の縄張りの外で励むがいい」
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