第583話 収穫なし


 「おいすおいすー。どんな調子ー?」


 「ああ、ボスですか」


 秘密基地の牢屋。

 そろそろ情報を絞り取れたかなと『竜殺し』のところへやって来た。


 返り血で真っ赤なマリクが出迎えてくれて、もう一通りの事は済んでるらしい。


 「やはりやる事はやってるのだな」


 「あ、ジャンヌはこういうの苦手な感じ?」


 「いや……私は戦場に出た事がないからな。こういう事があるとは分かってても、実際に見るのは初めてなんだ。苦手というより、戸惑ってるという感じだな」


 「戦場ではやるのか?」


 「敵を捕まえたら作戦を聞き出す為にやると聞いてるな。非人道的で表立ってやってるとは言えないだろうが」


 「非人道的ねぇ……。戦争なんてやってる時点でって感じだけど」


 一緒に付いて来てるのはジャンヌ。

 アンジーに新しい魔剣をこれでもかってぐらい味見されて、へとへとだったところを連れて来た。


 アンジーはまだまだ付き合わせそうな雰囲気だったからね。訓練場でジャンヌと目が合って、視線だけで子猫みたいに救援要請を送ってくるもんだから、助けざるを得なかった。


 ジャンヌは将来性はあるけど、今はまだ基本スペックが足りてない。アンジーが満足するまで付き合わせるのは酷というものである。


 まあ、代わりに満腹状態のゲイリーを差し出したから、今頃怪獣大戦争みたいな戦いを繰り広げてるんじゃなかろうか。


 「そこそこ口は固かったですが、一応割らせる事は出来ました。ただ、そこまで有用な情報はなさそうですね」


 「そうかぁ…」


 檻の中で意識を失ってる『竜殺し』のガーヴィン。ジャンヌはそれを見て複雑な表情をしている。嫌悪感というか、単純に慣れの問題なんだろう。こういうのを見るのも初めてらしいしね。


 初めてでこれならマシな方じゃないかな。

 俺が初めてこういう事をした時は吐きまくったし。


 慣れって怖いねぇ。


 「教会関連で何かある?」


 「宰相が教会と繋がってるのが確認出来た事でしょうか。詳しい事は後で資料にまとめておきますが、この男も何度か連絡役として、宰相と会っていたようです」


 「ふむ? やっぱり教会の…神聖王国の狙いは帝国の傀儡化かね? ズマの事は?」


 「そちらは知らないみたいですね。この男教会と繋がってるものの、情報を抜いた限りでは使いっ走りの域を出ません。Sランク冒険者という知名度が便利だから飼ってた、というところでしょう。竜討伐も予想通り、教会の力を借りて達成したもののようですし」


 せっかく『竜殺し』を生け捕りにしたってのに、目新しい情報は特になしと。教会と繋がりはあっても、そこまで深い繋がりじゃなかったって事かな。


 『竜殺し』の性格的に大人しく従うって感じでもなさそうだしなぁ。程よく餌を与えて、都合の良い駒にしてたって感じか。


 「Sランク冒険者が下っ端という事か? 凄いものだな」


 「教会には『スティグマ』が居るからなぁ」


 「ふむ。それは前も言っていたな。ゴドウィン殿クラスが、ゴロゴロ居るのだとか」


 「ああ。この牢屋にもまだ生きてるのが何体か居るぞ。帰りに見てみるか?」


 「そうだな…拝見させてもらおう」


 そういえば、ジャンヌにはまだ『スティグマ』を見せてなかった。未だに実験の対象になってる『スティグマ』だが、まだ何人か生き残りは居る。


 ずっと踏み絵拷問は続けてるが、相変わらず通常の拷問はこれは神の試練だの宣う狂信者っぷり。


 もう捕らえてからだいぶ経つが狂信が折れる気配は全くない。踏み絵を思い付かなかったら、まだ苦労してたんじゃなかろうか。


 「ガーヴィンはどうするんだ?」


 「最終的には殺すよ。『クトゥルフ』は大抵の奴は受け入れるけど、こいつは受け入れられないタイプの人間だ。恩恵持ちの素体は貴重だからな。最後の最後まで有効活用させてもらうさ」


 「そうか」


 ガーヴィンは側から見れば、ただの女好きだ。それなら『クトゥルフ』にはフォレスターを筆頭にたくさん居るし、それだけなら契約を飲むなら受け入れても良い。


 ただ、こいつは女が孕んだら捨てやがる。

 生活出来るだけの金を渡して別れるならまだしも、本当に道端にポイって感じだ。


 何故か分からないが、この世界は避妊薬がべらぼうに安い。それぐらいのケアはすれば良いのに、孕ませてポイだ。


 俺からすれば子供を捨ててるの一緒。

 許せる訳がない。


 女性側が自分からSランクの威光に擦り寄ったパターンもあるだろうが、こいつの場合は好みの女を見つけたら無理やりだ。


 フォレスターを見習えって話ですよ。


 ガーヴィンの身体はうちの研究者達が余す事なく利用する事になるだろう。恩恵持ちの身体は貴重だ。


 そのうち牢屋の中はマッドな連中でいっぱいになるはずだ。あいつらは常に恩恵持ちを求めている。俺やカタリーナですら研究対象みたいな目で見てくるんだからな。


 「殺したら、ジャンヌ暗殺の依頼を出した貴族に『竜殺し』の首でも送り付けるか」


 「それは良いな。臆病者のエステベス侯が腰を抜かす姿が目に浮かぶ。私が持って行って、生で反応を見たいくらいだ」

 

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異世界に転生したので裏社会から支配する Jaja @JASMINE4

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