高市首相、裁量労働制の見直し表明へ 拡充念頭か、施政方針演説原案

南日慶子

 働き方改革の見直しをめぐり、高市早苗首相が、特別国会の施政方針演説で裁量労働制の見直しを表明する方向で調整していることがわかった。就任時に指示した「労働時間規制の緩和検討」から具体策に踏み込む形で、裁量労働制の拡充などを念頭に検討を加速する狙いがあるとみられる。

 首相は18日の特別国会召集日に再任され、20日にも演説に臨む。

 判明した原案では、経済成長戦略の一環として、時間外労働に上限規制などを設けた「働き方改革」について、「働き方改革の総点検においてお聞きした労働者の方々の声を踏まえ、裁量労働制の見直し」を打ち出す。

 裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、一定時間働いたとみなして賃金を払う制度。専門性の高い職種などに適用が認められている。働く人が自分の裁量で仕事の時間配分などを自由に決めることができる一方、長時間労働につながるとの懸念もある。

 裁量労働制をめぐっては、経済界から対象業務の拡大を求める声があがる。首相は昨年10月、「労働時間規制の緩和の検討」を厚生労働相に指示。国会では「残業代が減ることによって生活費を稼ぐために無理をして慣れない副業をする」などと述べ、裁量労働制に直接言及はしなかったものの、「(働き方改革見直しの)検討を深めていくべきもの」と意欲を示していた。

 原案では、裁量労働制の見直しを表明する一方で、「副業・兼業にあたっての健康確保措置の導入」「テレワークなどの柔軟な働き方の拡大」も主張。「成長のスイッチを押して、押して、押して、押して、押しまくってまいります」と強調する。

 政府は高市政権で新設した日本成長戦略会議の分科会で、「労働時間法制にかかる政策対応のあり方」について検討するとしており、裁量労働制も議論するとみられる。経団連は裁量労働制の対象業務の拡充や運用緩和を求める一方、連合など労働側や過労死遺族らは長時間労働を助長しかねないとして反対の立場を取っている。

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南日慶子
経済部
専門・関心分野
働き方・労働、子育て、ジェンダー、ポッドキャスト
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    首藤若菜
    (立教大学教授=労働経済学)
    2026年2月17日22時26分 投稿
    【視点】

    裁量労働制の議論では、「裁量」という言葉が曖昧なまま用いられている点に注意が必要です。 そもそも裁量とは、自分の判断に基づいて物事を決められることを指します。仕事における裁量とは、本来、仕事の進め方や優先順位、方法を自ら判断できる状態を意味します。自律的な働き方が生産性向上に重要だとされるのは、この業務上の裁量が確保されている場合です。 しかし、労働時間の裁量と業務上の裁量は必ずしも同じではありません。 労働時間を自己管理できる仕組みを導入しても、仕事の内容や納期、進め方が上司などから厳格に指示されていれば、実質的な裁量は生まれません。その場合、単に労働時間の把握を緩めるだけとなり、長時間労働のリスクが高まる可能性があります。 また、調査では、裁量労働制が適用されていなくても業務上の裁量をもって働いている人が一定数存在することが示されています。フレックスタイム制など既存の仕組みの活用によって、自律的な働き方が実現している例も少なくありません。 裁量労働制は2024年に改正法が施行されたばかりです。まずは改正後の運用実態や健康確保措置がどの程度機能しているのかを検証することから議論を始めるべきでしょう。

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    上西充子
    (法政大学教授)
    2026年2月18日7時18分 投稿
    【視点】

     これではまるで、「働いて、働いて、働いて、働いて、働いていただきます」ではないですか。高市首相には、労働者の命と健康を守るための労働法の規制は、成長の足かせとしか見えていないのでしょうか。  「働き方改革の総点検においてお聞きした労働者の方々の声を踏まえ」と言っても、記事にあるように連合は反対の立場です。聞きたくない声には耳を傾けないということでしょうか。  「成長のスイッチを押して、押して、押して、押して、押しまくってまいります」という表現からは、過重な仕事量とプレッシャーに押しつぶされる労働者の姿が連想されてしまいます。

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