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映像美術デザイナー

東洋英和女学院卒業部⾨

掲載日:

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職種

クリエイティブ・芸術系 中学部 中高部 卒業部⾨ 小学部 高等部

岩倉 暢子

株式会社NHKアート 総合美術センター 統括部長。東洋英和女学院小学部、中学部を経て、1997年高等部卒業。多摩美術大学美術学部建築学科(現・環境デザイン学科)入学。同大学卒業後、日本放送協会(NHK)に入局。デザインセンター映像デザイン部を経て、NHKアートに出向中。

好きだったお絵描きから、テレビ局での美術デザインへ

ポール・マッカートニーのステージが決め手に

   子どもの頃に描いていたマンガの感覚を生かした衣裳のデザイン画

幼稚園の頃から絵を描くことが好きで、マンガ家になりたいと思った時期もありました。小学部時代は、図工の素晴らしい先生に恵まれて、写生の時間でも自由に絵を描かせてもらえました。その先生の影響は本当に大きかったです。むしろ、下校後に通っていた絵画教室では、決められた手法で描くことを指導され、私には合わなくてすぐにやめてしまったくらいです。

中2の頃、洋楽というエンタメとの出会いがありました。海外アーティストのステージを観にいくと、どうやらそこには舞台セットをつくる裏方がいるらしい! 中3のとき、母とポール・マッカートニーの来日公演を観に行きました。上階の席から裏方の動きがよく見えて、興奮した私は、「あれになりたい!」と決意したのです。目標ができて、そのまま舞台美術家を目指して大学まで突っ走りました。

高等部卒業後、多摩美術大学の建築学科(現・環境デザイン学科)に進学して建築デザインを学びました。なぜ建築学科かというと、新聞の折り込みで入ってくる不動産のチラシの間取り図が大好きで、よく自己流で“夢のおうち”とかの設計図を描いていたから。それが、テレビドラマの仕事で役立つなんて、その頃は思いもしませんでしたけど。

大学では、舞台美術に携わる機会にも恵まれました。テキスタイルデザイン科が毎年開催するファッションショーでの、セットを制作させてもらえたんです。

テレビ局への入局と下積み時代

大学3年の時に父が急逝し、大学院への進学や海外留学の道を諦めて、就職活動をすることになりました。大学の就職課に駆け込み、「毎月、お給料がもらえるところに勤めたいんです! 建築と音楽が好きで、絵を描きたい」と言ったら、ちょうどNHKの美術の求人が来ていると教えてくれました。当時は就職氷河期で、民放の美術部門の募集はすでに終了していました。必死でポートフォリオを制作し、面接試験で熱意を伝えました。

内定をいただき、NHKに入局。数年間は、先輩の下に付いて小規模なセットの設計やグラフィックをつくる下積みです。ニュースや歌番組、子ども番組など、あらゆるジャンルに挑戦しました。古典芸能番組は、歌舞伎などをたくさん観てきた経験が生きる現場で、楽しかったです。
その後、25歳でドラマの仕事をするようになり、31歳頃からは、ずっとドラマ畑です。2013年、35歳の時に連続テレビ小説、いわゆる朝ドラ『あまちゃん』で、美術をやらせてもらいました。

役者の動きは古典から学ぶことが多い

家も桜の木も、すべてキャスター付きで可動式。図面に合わせて大道具や造園スタッフが製作するという

ドラマの現場では、デザイナーはまずセットのデザイン画を描きます。私の場合、脚本をもらったら、まず人物関係図を描き、衣裳のイメージ図や番組のロゴも作って提案します。ト書きを参考にしながら役者の動きを抽出し、セットの平面図と立面図だけでなく、室内の大道具や小道具を肉付けして描き込んだ奥行きのあるパース画を描きます。それを演出に見せてすり合わせしながら、役者の動きに合わせて必要なものを描き加えていくというやり方です。

そうしたほうが、装飾や扮装などのスタッフのイメージも具体的になるから、打ち合わせが早く進むんですよ。子どもの頃のマンガや、不動産屋もどきの絵を描いていた経験が、ここで生きたわけですね。

現代ドラマであっても、役者さんの動きは古典を知っていると組み立てやすいんです。歌舞伎でいう「見得を切る」のと同じように、ドラマでも主人公が決めゼリフをいう場面があり、その背景は意識してつくり込まなければいけません。「上手(かみて)」「下手(しもて)」という感覚も、日本のエンタメには私たちが思っている以上に染み付いているものなんですね。

たとえば、会議室の場面。私の場合は、偉い人をマスターショットの上手に置いてプランすることが多いです。さらに、窓を背負って後光が射すとか、本棚を背負うとか、役柄の重みをセットでも表現するように心がけます。その後、大河ドラマの『いだてん』にも携わりました。

英和を出た人は、どこにいても匂うからすぐわかる

「映像に映らないであろう小道具にもこだわってしまう」と岩倉さん

英和って、先生方が生徒一人ひとりの個性をよく見ていてくれて、決して否定することがないですよね。学校にいる間はそのことがよくわからなかったんですが、卒業していざ社会に出てみると、英和という存在にいかに守られ、応援してもらっていたかがよくわかりました。

社会に出てみると、私みたいな女性があちこちにいて、なんかね、匂うんですよ(笑)。「女子校でしょう? もしかして、エイワ?」「そう」「やっぱり」って。英和を含めて、女子校出身の子はいい意味で自信があるし、多少失敗してもクヨクヨしません。人より出世しよう、なんていう競争心もそんなになくて。だから現場では重宝されるし、男女の性差も気にせず、必要なときは上に立って伸び伸び働きます。

英和という母校は、「ここに戻れば、私は私でいられる」と安心できる場であり、私にとって自信の源にもなっています。(2023年8月、談)

※記事中の所属・役職等は各記事掲載当時のものです。

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