トランプ米大統領は米ロ間で失効した新戦略兵器削減条約(新START)に代わる新条約の策定を提唱。核戦力を急速に増強する中国を加えたい考えだが、中国は参加を否定しており、核軍縮立て直しの行方は不透明だ。

 まず米ロ間の戦略兵器削減の歴史から振り返っておこう。

 米国とソ連(現ロシア)との間で冷戦時代末期に戦略兵器削減が議論され、米ソは1991年7月に「第1次戦略兵器削減条約」(STARTI)に調印した。

 STARTIは2009年12月に失効したが、その後継が新STARTである。米国のオバマ政権時の10年4月に米ロが調印し、11年2月に発効した。

 新STARTは、配備済みの戦略核弾頭の数を1550発以下、射程5500キロ超の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、航続距離8000キロ以上の戦略爆撃機、射程600キロ超の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など配備済みの運搬手段の数を700以下まで減らすよう義務付けている。

 新STARTは発効から10年で失効することになっていたが、米国のバイデン政権時の21年1月に同条約を5年間延長することでロシアと合意した。

 新STARTが2月5日に期限を迎えるに当たり、米ロ間で協議されたが、結局合意に至ることはなく、新STARTは失効した。

 なお、米ロ間では中距離核戦力(INF)全廃条約もあった。それは、射程500~5500キロの地上発射型中距離核・通常ミサイルの保有を禁じたもので、歴史上初めて核兵器の削減・廃棄をするものだ。1987年に署名、88年に発効した。しかし、ロシアの条約違反と中国の増強を背景に米国が離脱し、2019年8月に失効している。

 いずれも、中国が米ロ間の条約に制約されずに核兵器を開発・配備してきたので、米ロ間の2カ国だけが制約を受けるのは不利ということで、核兵器秩序が崩壊した。

 その中国の隣国が日本というのは、日本として相当な準備を怠れない。自衛隊明記の日本の憲法改正について中国は批判するが、どの口がいうか。

 これまでの歴史をみると、大国の軍拡は経済力がへたらないと止まらない。旧ソ連は崩壊直前にようやく核兵器削減に乗ってきた。この歴史からいえば、中国が長期経済停滞に入るか、体制崩壊するまで、核軍縮は期待薄だ。もっとも中国も1人当たりGDP1万ドルという中所得国のわなにハマりつつあって長期経済停滞の兆しもある。ここ5年が正念場だろう。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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