2025年 読書メモ
「消費者金融ずるずる日記」(加原井 未路)
デックという中堅の消費者金融の営業マン(取立てもする)を20年やっていた筆者の体験記。デック(実際はディック?)というのは当時業界5位くらい(外資系銀行に買収された際は3位)の街金だが、この位置の街金の顧客というのは他社からも借りている多重債務者である確率が高く質があまり良くない。
街金で借りる客に質も何もと思うが、大手街金(アイフル等)は他社からの借入が3社以上になると新規融資は断るとのことで、それにくらべて中堅だと5社くらいになり審査が緩いらしい。まぁ貸した金が返ってこないのは困るが、全く貸せないのも経営が成り立たないのでそうなんだろう。
著者は自分を小心者と書いている通り、ヤクザのような取立てはせず、自分の顧客が自死してしまった時も本当にショックを受けていた。僕のそれまでの街金のイメージは半分ヤクザな仕事で金のためなら冷酷無比という感じだったので、意外というかちょっと好感を持った。
まー自分で事務所立ち上げたりするような人間ならまだしも、サラリーマンとして個人相手に金融をやっているなら、こんな感じでもさもありなんなのかな。そしてこれは重大なネタバレになるのだが、後半は著者自身が多重債務者となり日々金策に終われ精神が限界を迎えてしまう。
それまでは何だかんだ営業マンから見た債務者として一線を引いた見方というか、どこか対岸の火事だったのが、急に返済に追われる日々というのがリアルになって本当に恐ろしい。たかだか400万円程度の借金(それとは別に住宅ローンもあるが)程度でこんなになってしまうのか、とマジで怖かった。
消費者金融ずるずる日記 (日記シリーズ) | 加原井 末路 |本 | 通販 | Amazon
「耳なし芳一のカセットテープ」(最東対地)
もうモキュメンタリーホラーは花盛りすぎてお腹いっぱい……と思いながら読んだがちょっと面白かった。ミステリーホラーっぽく真相が明らかになってきたかと思ったら、まぁ核心にはなかなか触れず……みたいなところがなかなかリアル。
主人公のおっさんの一人語りは多少クセが強くて鬱陶しいが、タイトルの「耳なし芳一のカセットテープ」の話は確かに気持ち悪くて非常に良い。調査を進めていくうちに少しずつ増えていく気持ち悪い点も良かったし、その気持ち悪い現象の理由が必ずしも明らかにならない点も良かった。
耳なし芳一のカセットテープ | 最東 対地 |本 | 通販 | Amazon
「物理学の世紀」(佐藤文隆)
20世紀の物理学を歴史的に概観しようという本。かなり骨太で、物理の知識が多少ないと読み通すのは結構つらい。20世紀前半は量子論から発展した量子力学からの、マンハッタン計画による原爆開発という流れ。後半は大統一理論や宇宙論という感じだった気がする。
物理学は半導体や原爆のような直接的な応用が考えられる分野から、工業的な応用が(少なくともすぐには)考えられない分野に移行しており、さらに実験の費用も指数関数的に増大してきた。冷戦の終了で社会の意識が急激に変化する時期に、アメリカは高エネルギー加速機(SSC)の建設を途中で中止。
物理学は社会情勢とは無関係に成立する真理(この点が人文科学や社会科学と異なる)ではあるが、物理学の研究の方向性は社会情勢の影響を受けるという点で社会と無関係ではいられない。また物理学の知識を深淵なものとして専門家の間に閉じ込めることは、近代科学が忌避した権威性そのものではないかという批判が当の物理学者から出ているという点でかなり貴重な本だと思う。実際問題、真理を探究するんだ、だから大切なんだ、だから予算を付けろ!と一方的に要求できるような状況には現状ないわけで、有限の予算から何故最先端の科学研究に割り振るのかという理屈付けは必要だと思う。
物理学の世紀 (講談社学術文庫 2819) | 佐藤 文隆 |本 | 通販 | Amazon
「オープンソースの教科書」(宮原徹, 姉崎章博)
OSSといえばライセンス伝搬が個人的にはホットな話なのでそこが書いてあるかと思ったがそこは別に充実してなかった。OSSの歴史や代表的なOSSツールなどが載っているが、ある程度知っている人であれば「ふーん」で終わってしまう内容。とはいえ個人的にはLinuxディストリビューションとかその他ツールの概要はちょっと勉強になった。自分であえて知ろうと思わない限りなかなか知る機会ないし。
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「仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?」(飯野謙次)
大きい心構えから小さいテクニックまで色々書いてあった。面白かったし役に立ちそうだった。ただ問題は僕の記憶力が悪すぎて書いてあったことは全部忘れた……。
仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか? | 飯野謙次 |本 | 通販 | Amazon
「日本神話の考古学」(森 浩一)
考古学の知見を使って記紀神話を考察するという内容で結構面白い。時々「ん?」という部分はあるが。これまでの考古学では弥生時代の住居跡などが発掘の主体だったものが、村周辺や山の上の櫓なども対象になり、当時の状況が色々と分かってきた。
従来弥生時代は、稲作が始まり集団的な農耕が始まったという事実から、村の生活という牧歌的なイメージがあった。しかし実は近畿〜瀬戸内海地方にかけて、かなりの数の櫓(物見や狼煙通信用の櫓)があり、それなりの戦乱があったことが分かっている。ここから記紀の神武東征との関連がうかがわれる。
またイザナミの黄泉国のエピソード(イザナギが腐乱したイザナギを見てしまう)に古墳構造との関連を指摘している。
古墳時代前半は古墳の石室は埋葬後に立ち入れるような構造になっておらず、腐乱した遺体を見る機会はなかった。一方で後半は横穴式石室として立ち入れる構造になっており、遺体を安置して白骨化させ、白骨化したら骨を脇に寄せて新たな遺体を安置するという使い方がなされていた。この遺体交換の際に腐乱した状態を見る機会は当然あったはずで、それが古代人に死=腐乱のイメージを強く植え付けたのではないかとのこと。
また伊勢がなぜ皇室にとって重要な場所なのかについても、三種の神器である八咫鏡との関連で考察されていた。伊勢は鏡を磨くために必要な水銀の産地(丹生鉱山)であり、それゆえ天照大神を祀るべき場所として重要視された可能性がある(ただ著者は些細なことと言ってもいるが)
あとは隼人と皇室。隼人は九州南部のいわゆる「まつろわぬ民」のひとつというイメージだったが、日本神話では隼人の祖先は海幸彦で天皇の祖先は山幸彦であり、そもそもヤマト王権と関連が非常に深い。神話では天孫は高天原から日向に降り立ちそこから東征したとある。すなわちヤマト王権の出自自体が九州南部であったということ。
色々書いてあったが、色々すぎてまとめきれない。とはいえなかなか面白かった。
日本神話の考古学 (角川新書) | 森 浩一 |本 | 通販 | Amazon
「再生 角川ホラー文庫ベストセレクション」(朝宮 運河(編), 綾辻 行人, 鈴木 光司, 井上 雅彦, 福澤 徹三, 今邑 彩, 岩井 志麻子, 小池 真理子, 澤村伊智)
特に岩井志麻子「依って件のごとし」と、澤村伊智「学校は死の匂い」が良かった。前者はオチをどこかで読んだことがあったような?と思ったら、これ「ぼっけぇきょうてぇ」に収録されている話だった。
後者はホラーミステリー。好きなんですよね。
Amazon.co.jp: 再生 角川ホラー文庫ベストセレクション : 朝宮 運河, 綾辻 行人, 鈴木 光司, 井上 雅彦, 福澤 徹三, 今邑 彩, 岩井 志麻子, 小池 真理子, 澤村伊智: 本
「初歩から学ぶ生物学」(池田清彦)
生きているとはどういうことか?というそもそもの根本的な疑問から始まり、遺伝子を生命の設計図と言い切ってしまってよいのか?進化の本当の仕組みは?などの疑問をテーマに生物学を解説する本。
生きているとは、自己同一性を保つこと、勝手に成長して寿命が来ると勝手に死ぬこと、らしい。自己同一性を保つというのは、例えば人間は外部から栄養を取り入れて細胞を作り古い細胞を捨てて、それでも自分自身という個体を保っている。言うなれば常に自分を作っている。
この自分を作ることを「オートポイエーシス」といい、そのオートポイエティックなシステムそのものが生きているということだ、と言っている。さらに遺伝子についても面白いことを言っている。
遺伝子は生物の設計図だというのはよく言われることだが、同じような遺伝子であっても形がかなり異なる、というのは非常によくある。遺伝子は重要だが、その遺伝子を解釈して身体を作るシステムも非常に重要で、この2つが合わさって初めて生物の形は出来る。
なので遺伝子だけを語るのは片手落ちで、システムも同じように大事である、ということを言っている。生物は遺伝子の乗り物であるというのは、ドーキンス以来かなり言われてきたことなのでそれだと片手落ちというのは新しい視点だった。
あと著者は進化論についても(素人目線にはだけど)新しい視点を持っているように思える。自然選択説やネオダーウィニズムでは進化を完全には説明できないとして、用不用説の「不要説」部分は当たっていそうだと言っている。僕自身は進化生物学系のYouTubeとかをよく見るので進化論の主流の説(例えば中立説や遺伝子プールなど)や、用不用説や定向進化説や、今は否定されているルイセンコ学説のような話も割と知ってるほうだと自認しているけど、それでも初めて知る話が結構あり面白かった。
Amazon.co.jp: 初歩から学ぶ生物学 (角川ソフィア文庫) : 池田 清彦: 本
「こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」」(高木徹也)
かなり面白い。死因の話なので面白いと言ってしまうと不謹慎かもしれないけど、それにしても死因の特定って難しいんだなーと思った。末期の未治療の乳がんは皮膚が壊死してしまうらしいんだけど、臨床医はそこまでに至った症例を見る機会がほぼないので見ただけでは分からないらしい。
あとは通夜の夜に棺桶の窓に顔突っ込んでそのまま亡くなってしまう話。ドライアイスが気化した二酸化炭素を吸い込んで意識を失ってそのまま亡くなってしまうらしい。二酸化炭素中毒って解剖しても分からないから現場の状況から死因を推定するらしいですね。法医学者って探偵みたいだな……。
こんなことで、死にたくなかった: 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」 (単行本) | 高木 徹也 |本 | 通販 | Amazon
「ヨハネの黙示録」(小河陽)
黙示録の解説書かと思ったらがっつり翻訳書だった。後半は著者(訳者?)の解説。伝統的な解釈では、黙示録の作者は使徒ヨハネだが、近代以降の研究でそれはほぼ否定されたらしい。理由として、書かれたのが1世紀後半であること、人間としてのイエスの姿が全く書かれていないこと、など。
黙示録というのは要するにこの世界の終末を描いた物語なのだが、そこに登場するモチーフが「七つの封印を解く七つの角と七つの目を持つ子羊」とか「太陽を着て、月を踏み、十二の星の王冠を被った女性」とか「十本の角と七つの頭を持った獣」とか、非常に面白い。
ヨハネの黙示録 (講談社学術文庫 2496) | 小河 陽 |本 | 通販 | Amazon
「屈辱の数学史」(マット・パーカー)
数学史の本かと思ったが、屈辱の「数学史」ではなく、「屈辱の数学」史だった。原題からも分かるように「数学的な間違いがとんでもないことになった事例」を集めた本。これはこれでなかなか面白い。
時間、建築物の構造(凹面レンズ構造や共振)、データベース(想定外のデータの入力やSQLインジェクション)、数字を数える際に人間が犯しがちなミス、プログラムにおけるオーバーフロー関連の不具合など、色々な分野の"笑い話"が書かれている。笑い話ですまないものも多いが。
数学というより計算機科学や工学では?というものもあったが、まぁ数学が土台にあるものばかりだし、応用数学といえなくもない。筆致が軽快でかなり面白く読めた。
屈辱の数学史 A COMEDY OF MATHS ERRORS | マット・パーカー, 夏目 大 |本 | 通販 | Amazon
「よその子 見放された子どもたちの物語」(トリイ・ヘイデン)
識字障害で幼稚園を留年したロリ、自閉症で誰ともコミュニケーションをとれないブー、父を事件で亡くして親戚に酷い扱いを受けて暴力的になり他人と人間関係を気付けないトマソ、12歳で妊娠してしまったクローディア、彼らを見る教師のトリイの一年間の記録。
はっきり言って絶望がすごい。教室が安定してきて少しだけホッとできる期間があったと思ったら、次の瞬間に急転直下でとんでもないことが起こる。新しいメンバーが来るたびにてんやわんやして、そして周囲の大人(教師や親)はトリイや子どもたちをガリガリ削りにくる。
それでも子ども達が最終的に良い方向に向かえたのは、ひとえにトリイの子ども達への温かいコミュニケーションと、子ども達がトラブルを起こした時の我慢強さだと思う。本当にすごい。
そんなトリイでも、トラブル時にはやはり動揺するし、子ども達が騒げばイライラして怒るし、どうしていいか検討もつかないとオロオロして、権力のある大人に上手いこと立ち回ることも出来ず、そういう未熟な部分もしっかり書かれているのが本書の魅力だと思う。
あとがきにもあるように、この本は単なる「熱血教師の美談」ではない。トリイ自身も弱く孤独で正解を知らないただの若い補助教員だ。トリイが子ども達のためにした選択が本当にベストだったのかは、トリイ自身も確信はないだろう。それでも子ども達のために考え、子ども達と一緒に進んだからこそ、最終的に良い方向に進んでいったのだと思う。子ども達がもしトリイに出会わず普通の学校教育に無理やり組み込まれていたら、おそらく教育システムから放り出されていた。本当に最悪な人生になっていたと思う。それこそドラッグの売人やスラムに住む売春婦になっていても全くおかしくない。
彼らが(おそらく)そんな最悪な人生を送らずにすんだのは、彼ら自身の努力と周囲との巡り合わせも当然あるだろうが、やはり一番大きいのはトリイの存在だったと思う。彼女がいたからこそ、彼らは自分自身に絶望しなくて済んだ。
よその子: 見放された子どもたちの物語 | トリイ・L. ヘイデン, Torey L. Hayden, 入江 真佐子 |本 | 通販 | Amazon
「ロシアは今日も荒れ模様」(米原万里 著)
ロシア語通訳者の著者のロシア論。冒頭はロシア人の酒癖の悪さから始まり、ゴルバチョフ時代のペレストロイカ、グラスノスチの開放的な雰囲気、ソ連崩壊の衝撃、エリツィン時代の貧富が広がる様子など。ロシアをすぐそばで見てきた著者ならではの、暖かみのある視線が読んでいて楽しい。
やはり特筆すべきはゴルバチョフとエリツィンという要人をすぐそばで見ていたという立場から出る人物評だと思う。ロシアの要人に対してここまで人間味のある血の通った人物評を書ける人はなかなかいないと思う。
この本が書かれたのは1998年ごろなので、エリツィン以降のことは何も書かれていない。まさかこんなことになるとはなぁ……という思いもあるが、エリツィン時点で既に大統領に権力を集中させすぎている、と書いてあるのは慧眼。ちょいちょい入ってくる日本政府批判はご愛嬌かな……。
ロシアは今日も荒れ模様 (講談社文庫 よ 28-1) | 米原 万里 |本 | 通販 | Amazon
「永田鉄山 昭和陸軍「運命の男」」(早坂 隆)
陸軍統制派を理論的に先導した永田鉄山の生涯を描いたノンフィクション。統制派は東條英機や武藤章がいたので日本を戦争に導いた非道な集団というイメージがあるのだけれど(そして戦争に導いたというのは必ずしも外れてはいないんだけれど)、しかしこの永田鉄山という人の先進性はすごい。
そもそも統制派とは、天皇親政を掲げて昭和維新を目指す陸軍皇道派(←ド阿呆)に対して陸軍内の統制を正すために出てきたグループ。まー他にも長州閥の打倒とか色々あるけど。そういう理念自体は悪いものではないというか、本来軍というのは国家の手足であって、自ら意思を持って動くべきではない。
まぁ僕の個人的な意見はいいや。永田は第一次大戦直後に今後の戦争は国家総力戦になると気付き、産業界に働きかけて国産自動車産業を後押ししたり発想が一軍人のそれではない。一方で石原莞爾の日米最終戦論は「何言ってんだコイツ(ハナホジ)」みたいな感じだったらしい。ふむ。
本書は太平洋戦争を一貫して大東亜戦争と呼んでたり、現代の日本人を「「自らの手で国を護る」という意識の極めて稀薄な民族」と言ったり、若干保守的な思想が鼻につくけど、それでも読んでいて面白かった。
それにしても石原莞爾と比べての永田鉄山の戦後の扱いの小ささよ。永田鉄山がもし生きていれば日中戦争は防げたのではというのは、そんな気もしてくる。しかし宇垣軍縮時代に国民は軍を白い目で見てたはずなのに、なぜこんなすぐに変わってしまったのかなぁ。そこはよくわかんなかった。
Amazon.co.jp: 永田鉄山 昭和陸軍「運命の男」 (文春新書 1031) : 早坂 隆: 本
「「正しい戦争」は本当にあるのか」(藤原帰一)
戦争に対する立場を分類すると、絶対悪を討伐する「正しい戦争」派と、戦争とは単なる外交の手段であるという「リアリズム」派、絶対反戦の「武器よさらば」派があるとする。で、正しい戦争の論理としては「悪い政府は戦争で潰してしまおう」となるが、現代からするとこの方向はあまり成功していない。
そもそも世界には好戦的あるいは独裁的な国家というのは結構あるのでそれらを全部戦争で潰すことはそもそも不可能というのと、政権を外部から潰しても予後があまり良くない。一瞬喜ばれる場合もあるけど、結局アフガニスタンやイラクのようにずっと混乱が続く場合が多い。
そしてリアリズムの立場に立つと、戦争を防ぐのは核兵器のような武力による圧力や経済制裁ということになるが、これも結局軍拡競争になってしまい、一時的には均衡に達しても結局不安定である。
絶対反戦論も、日本の中では一定の勢力があるが「九条の理念」なるものは結局世界には広がっていない。そもそも日本でも反戦の核になる記憶というのは、空襲だったり戦時中の苦しい生活だったりヒロシマ・ナガサキだったり、「自分たちが苦しかった」というものばかりで、自国の軍隊がアジアの人達を苦しめたという加害の実感は全然ない。だから自分たちが"被害者"でいられる。ひるがえってドイツ人は敗戦時に相当過酷な引き揚げを経験している。ヨーロッパ中からボコボコに叩かれている。そういう視座からだと日本の被害者という立場がメインの展示なんかは違和感がある。
本書で戦争を回避するには、武力による脅しではなく武器を持たなくても心配ないとその国に思わせることが一番大事である。日本の成功体験としてはベトナム。ベトナムは社会主義国だが日本が経済援助することで成長した。当時アメリカはベトナム戦争に負けたのでベトナムに手を出しづらしかった。
他にも色々書いてあったけど忘れてしまった。良い本でした。
「正しい戦争」は本当にあるのか (講談社+α新書 853-1C) | 藤原 帰一 |本 | 通販 | Amazon
「拝み屋怪談 逆さ稲荷」(郷内 心瞳)
やはりこの人の話は面白い。
拝み屋怪談 逆さ稲荷 (角川ホラー文庫) | 郷内 心瞳 |本 | 通販 | Amazon
「失敗の活かし方100の法則」(桑原晃弥)
失敗を活かすためには、失敗に正面から向き合うこと、失敗を正しく分析し改善を実施すること、失敗の反省を"罰"にしないこと、失敗を隠さない組織風土にすること、トライ&エラーを繰り返すこと、撤退の基準を決めておくこと、失敗を共有すること等々……。
「失敗の活かし方に銀の弾丸はない!」という感じだった。とにかく正面から向き合って地道にやるしかない。そういうポジティブではない作業をちゃんとポジティブに捉えて実行できるのかというところに組織としての強さが出るのかなぁと思った。
全体的な書き口としてはかなり読みやすい。大手企業(トヨタなど)の具体的事例もあり参考になる。良かった。まぁこれを読んだからといって簡単に真似できるものではないけど。
Amazon.co.jp: 失敗の活かし方100の法則 : 桑原 晃弥: 本
「人種差別から読み解く大東亜戦争」(岩田温)
全体としてめちゃくちゃ読みやすい。読みやすい上に論理も明解で根拠も書いてあり参考文献までちゃんと載せている。本書は「戦前の日本は欧米中心の人種差別に反対していて、その差別への憤りが太平洋戦争を引き起こしたのだ」という筋書きで一貫している。
まぁ戦前の欧米が(今もかもしれんけど)とんでもない人種差別国家だったというのは確かな事実だし、安土桃山時代にスペインやポルトガルがキリスト教布教をする傍らで日本人を奴隷として輸出していたのも事実。事実なんだけど、そういったアジア人差別に憤りが太平洋戦争に繋がったと言われると……正直そこは大した要因ではないんじゃないか?と思う。昭和天皇の「人種差別への国民的憤慨を背景として軍が立ち上がった時に、これを抑えるのは容易ではない」という戦後の発言を何度も引用しているが、戦争原因について言及したものは他にも色々あるのでは?
例えば太平洋戦争は、満州事変→日中戦争→南方進出というグダグダな経緯を見ていくと人種差別への義憤が〜とかとても言えないと思っている。あと人種差別に憤りをとか言ってる割に日本人も占領先の人たちをバリバリに差別してるしね。
とはいえ一応本書は日本軍についても「自身の権威、権力を要求し、アジアの人々を奴隷のように使役する軍人がいたのです」と書いてはいるし、単なるアジア解放のヒーローとは言っていないので、そこは評価できると思った。
あとはよくあるネトウヨの「朝鮮併合は併合であって植民地化ではない(日本に編入したので領土として対等に扱っている)」みたいなしょーもないレトリックを使ってないのも流石だし、ハルノート陰謀論みたいな下手な陰謀論に流れていないのも昨今の風潮を考えると評価できる。
なんだけど、重要なことに触れずに自説を補強するために都合の良い事実だけを抜き出しているのと、都合の悪いことにも一応触れてるけど扱いが軽すぎるのではと思う。僕も自説を補強するために本書で触れられてない事実を言っておくと、昭和天皇はA級戦犯合祀後、一度も靖国に参拝してないよ。
まとめると全体的として事実を書いてはいるけど、ちょっとチェリーピッキングが過ぎるかなという感じ。とはいえ僕が知らない話もあったので勉強になりました。
人種差別から読み解く大東亜戦争 | 岩田 温 |本 | 通販 | Amazon
「なぜ「あしか汁」のことを話してはいけないのか」(三浦晴海)
面白いし読みやすいので一気に読んだ。何かが自分に迫り来る感じはかなり良かった。
体裁としては今流行りのホラーモキュメンタリー。そのうち映画化なりなんらかのメディアミックスがされると思う。
ただ後半の軍の研究云々の舞台装置はややチープに感じた。そこだけSFっぽくなって現実に引き戻されるというか。ホラーというよりミステリ感が強いのかもしれない。
なぜ「あしか汁」のことを話してはいけないのか | 三浦 晴海 |本 | 通販 | Amazon
「伊藤博文 近代日本を創った男」(伊藤之雄)
明治憲法は何故天皇に統帥権という強大な権力を付与したのか。伊藤博文は幕末〜明治初期にかけてイギリス人と交流を持つ英米通だった。しかし欧米遊学により英米の国力を体感し「日本に数百年の民主主義の歴史を持つ英米の制度を導入のはまだ早い」という認識を持つに至る。
そこで当時の新興国だったドイツやロシアを手本に憲法作成を行う。これは議会に権力を持たせると、軍が権力闘争に巻き込まれるという懸念があったからだと思う。事実、国会では予算決議ができず何度も解散が行われて憲法停止が危ぶまれるタイミングが何度かあった。
旧憲法に停止に関する条文はないはずなので、形骸化による実質的な停止か国会非常事態として強制的に停止を宣言するということなのだと思う。ただ天皇大権があるとはいえ、それは大臣や参謀長の輔弼を必要としており立憲君主制の要件を備えていた。また「天皇は神聖にして侵すべからず」という条約は天皇が政治の失敗による責任を取らされないようにするための条文であり、絶対的な権力を意図するものではなかった。このような構造に加え明治天皇は天皇機関説(当時は君主機関説)をよく理解しており、その点でも天皇大権が暴走する余地はなかった。
しかし日露戦争を経て、当初は内閣によりコントロールされていた軍部が次第に自立して動くようになる。そこで伊藤は勅令に軍部大臣だけでなく総理大臣の承認も必要になるよう制度を変更した。だが陸軍トップの山縣有朋が反発し軍令制度を新設することで骨抜きにしてしまう。
そして伊藤博文が暗殺され明治天皇も崩御することで明治憲法を改正しようとする人間はいなくなり、不磨の大典と化してしまう。陸軍の暴走を止める人間はいなくなり日本は日中戦争の泥沼へと突き進んでしまうのであった……。
それにしても伊藤博文は当時の日本としては頭5つ分くらい抜きん出た政治感覚・国際感覚を持っていた。若い頃から英語が話せたので通訳に重宝されたり欧米人と交流を持ったりして培われたわけだけど、やはり天性のものもあったんだと思う。この人が明治初期に政府の中枢にいたことは日本にとって本当に幸運なことだったと思う。
列強に認められる国に!というのも単にかっこいいかっこ悪いだけの話ではなく、不平等条約を改正するという大きな意味があった。それには法治国家として立憲君主制を確立していく必要があり、その重要性と困難さを真に理解していたのは伊藤博文だけだったのではないか。
伊藤博文には国際的な視野の広さやリアリズムだけでなく、良い意味で楽天的な思考、韓国人やロシア人にも思いを巡らせる感受性があり、真の意味で素晴らしいリーダーだと思う。そんな伊藤でも理想通りの政治とはいかず、人間関係に配慮しながらバランスをとっていかないといけなかったのだ。大変……。
伊藤博文 近代日本を創った男 (講談社学術文庫 2286) | 伊藤 之雄 |本 | 通販 | Amazon
「天地明察」(冲方 丁)
中盤の盛り上がりが良かった。後日談を調べてみると主人公が制作した大和暦(享保暦)はその後数十年でズレが出てまた改暦されてしまったようでちょっと悲しくなった。
「一寸先の闇 澤村伊智怪談掌編集」(澤村伊智)
短編集なんだけど全部後味悪い。恐怖というよりは「うわー!気持ち悪い!!!」という感じ。実話怪談ではないので、叙述トリックあり、モキュメンタリーありのショートショート集で、そういう角度でもかなり楽しいと思う。あと「ぼぎわんが、来る」(映画「来る」の原作)の人なんですね。
「来る」は正直ホラーというよりは前半は人怖の胸糞、後半は怪獣大決戦という感じだったので僕としては非常に微妙だったのだけれど、原作の人がこんなに面白い話を書くなら原作読んでみようかなと思った。
一寸先の闇 澤村伊智怪談掌編集 | 澤村 伊智 |本 | 通販 | Amazon
「スマートファクトリー構築ハンドブック 50のイメージセルがものづくりDXを具体化する」(毛利大, 神山洋輔)
今まで読んだスマートファクトリー系の本で一番良かった(つってそんなに読んでるわけではないけど)。Industry 4.0も話題になった時にそこそこ調べたが、I4.0も「こうあるべき」「アーキテクチャはこう」という理想主義というか「これホントにできるんですか。費用対効果あるんですか」みたいな感じで、一方日本は地に足着いたスマートファクトリーといいながら「とりあえず今ある技術でツール作ってみました」感があって、なんだかなぁと思っていた。この本では「スマートファクトリーといっても伸ばしたい強みによって理想形って色々あるよね。そこに向かうのも色んな段階と要素があるよね」というスタンスで、工場の構造レイヤー(RAMI4.0とか、なんとかピラミッドみたいな)よりも前に「何を価値にしたいのか」という話がタイプごとにしっかり論じてあって、その部分だけでも読む価値あるなと思った。
「会話の0.2秒を言語学する」(水野太貴 著)
ゆる言語学ラジオの水野さんの初の単著。結構骨太というか硬派な本だった。ターゲットとしてはそこそこ勉強ができる高校生以上という感じか。「話者の交代(ターンテイキング)はわずか0.2秒という短時間で行われる。なぜそんなことが可能なのか?」というテーマで、語用論→統語論→意味論など言語学の各分野を概観しながら進んでいく。まさに水野さんがこれまでゆる言語学ラジオで話してきたことの集大成という感じ。初期の炎上してた頃から見てる僕としては(マウント)、よくぞここまできたなぁ……すげぇなぁ……という感じ。
ここまでこれたのは、監修の先生方がいたからというのもあるが、やはり水野さん自身が(体系的ではないのかもしれないけれど)ちゃんと勉強して誠実に発信してきたからだと思う。ゆる言語学ラジオを見ている人なら分かると思うけど、正直並のインプット量ではない。
最初の問いに対するちゃんとした答えはないのだけれど(まだ研究途中なので当然)、それに対して言語学というか人文学全体への思いみたいなのが結論になっており、水野さんらしいなぁと思った。
会話の0.2秒を言語学する | 水野太貴 |本 | 通販 | Amazon
「近代日本と軍部 1868-1945」(小林道彦)
個人的に一番良かったのは、統帥権を内閣から何故独立させたのかという問題に「明治初期のカオスな政治勢力から軍を守るため」という答えを与えているところ。明治憲法での統帥権の独立はそれが陸軍暴走の理由になった根本的な欠陥なんだけど、伊藤博文が何故そんな憲法を制定したのか僕としては腑に落ちていなかった。一般的には英国ではなくプロイセンを手本としたから、というのがよく言われることだけど「じゃあ何故プロイセン憲法なのか」と言われると納得いく答えを与えられたことがなかった(個人の感想です)。
というのも、明治憲法は統帥権の独立といいつつ、天皇自らが軍を思い通りにできるかというとそういうわけではなく、軍部大臣と参謀長官の輔弼(助言)が必要であると明文化されていた。つまり伊藤博文は、実質的な意思決定は軍部大臣と参謀長官が行い天皇はそれを承認するという天皇機関説的な運用が念頭にあった。のだけれど、この輔弼者に内閣総理大臣が入っていなかったことが後々陸軍が制御不能になる理由となる。そういう構造的欠陥を埋め込んだ理由は何か。明治初期には国内も一枚岩ではなく旧士族が暴発する危険性を孕んでいた。
そういう危なっかしい状況では、旧士族にシンパシーを抱く人物が政府で主導権を握る可能性がある。そこで伊藤は軍の指揮権が政治闘争に巻き込まれる危険性を回避するために軍の指揮権を政治から独立させたというものだ。この解釈は正直目から鱗だった。
明治初期は政府にいた西郷隆盛が下野して西南戦争を起こしたように、政治体制は安定していなかった。そこで軍が権力闘争に巻き込まれないようにという意図らしい。
明治期のことばかり書いてしまったが、当然大正昭和のこともがっつり書いてある。昭和期の記載も色々良かったが、若槻内閣が満州事変を収拾しようとする過程や総辞職の経緯なんかはターニングポイントとしてしっかり書かれていて分かりやすかった。
逆に相対的にみると太平洋戦争中の内容は薄い。まぁ明治維新から終戦までを1冊にまとめてあるので当然なのだが。個人的にも戦争中どうだったかよりは、なぜ戦争に至ってしまったかのほうが興味あるので全然よい、というか期待通り。
まとめると、良い本だった。ぜひ読んでほしい。
近代日本と軍部 1868-1945 (講談社現代新書 2564) | 小林 道彦 |本 | 通販 | Amazon
「検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?」(小野寺拓也、田野大輔)
ナチスが実行した政策で"良いこと"とされるのはアウトバーン建設、経済立直し、労働者保護、環境保護・動物愛護などなど……。現代から表層だけ見れば良いことのように見えるし、そう紹介する書籍もある。しかしそれはあまりに単純化した見方である。
本書はナチスが実行した"良い"政策を挙げ、それらを事実(喧伝される内容は本当に行われたのか)/解釈(それはどのような目的・背景で行われたのか)/意見(事実と解釈を踏まえた評価)というレイヤーに分解して論じる。
そして事実/解釈/意見というレイヤーとは別に(というかさらに踏み込んで?)、行為の目的/内容/結果という点も検証している。話の前に論述のスキームをこうして整理してくれることで、その後の論理展開の見通しがかなり良くなる。ありがたい。
本書を読むと「ナチスの政策で肯定できるとこないっすよ」という筆者のツイート(2021年にこの発言が炎上して本書執筆のきっかけになったらしい)の意味がよく分かる。政策の意図とか結果とかをちゃんと見ていくと肯定できるものなんかない。
最近日本も色々心配なんだけど、とにかくみんな歴史を学んでほしい!と思う。適当なムック本とかじゃなくて、ちゃんとした人が書いたちゃんとした本(せめて新書)を。僕らができることってそれしかないのだ。
検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? (岩波ブックレット 1080) | 小野寺 拓也, 田野 大輔 |本 | 通販 | Amazon
「厭談 畏ノ怪」(夜馬裕)
以前アマプラで見たことがある、割と好きな怪談師さん。語りでは一番好きかもしれない(そんなに数を見たわけではないけど)。
この人の怪談は割と捻りがある気がして結構面白いと思う。話によっては割と語り口がしつこいが(「ミーコより、愛を込めて」とか)、全体的にさーっと読める割に読後感がしっかりある感じ。
しかし怪談に専念するために編集者の仕事辞めてたとは知らなかった。すげー覚悟だな……。あと怪談の取材先に謝礼払ってんのね。他の怪談作家さんでそこまで生々しいこと書いてる人見たことないので「へぇー……」と思った。みんなそうなんだろうか?
Amazon.co.jp: 厭談 畏ノ怪 (竹書房怪談文庫 HO 686) : 夜馬裕: 本
「夕暮怪談」(夕暮怪雨)
明確な恐怖っていうよりは、気持ち悪……不気味……って感じのモヤモヤとした恐怖とネタの意外性、そして身近に有り得そうな雰囲気というのが実話短編怪談の良さだと思うし、夕暮怪雨さんの語りの魅力もそこにあると思う。
んだけどやたらAmazonの評価が低いんだよなー。★3.9。僕は怪雨さんをデビュー前から(一方的に)知ってるので贔屓目もあると思うけど、それでも面白いと思います。幽霊バーン!目の前でギャー!みたいな派手であからさまな展開はないけど、逆にそっちの方が白けないですかね?
あと夕暮さんは初期は兄弟で動画あげたりしてた(今もプロフィールに夕暮兄弟って書いてある)けど、あとがきに弟のことが書かれてないのが一番あれ?と思いました。まぁいいか……。
Amazon.co.jp: 夕暮怪談 (竹書房怪談文庫) eBook : 夕暮怪雨: Kindleストア
「今を生きるための現代詩」(渡邊十絲子)
全体を通して「詩を分かる」ということに批判的な内容だった。
例えば教科書に載っている谷川俊太郎の「生きる」という詩。「生きているということ/いま生きているということ/それはミニスカート/それはプラネタリウム/それはヨハン=シュトラウス」という部分があるが、そもそもこれらのモチーフは人生を通して体験として自分の中に落とし込んでからでないとイメージが湧かない。だから教師はこれらの単語がどのようなものかを解説することから始めるが、単にそれらを教え込んだだけでは薄っぺらな言葉の羅列としてしか理解できない。
そもそも詩に対して「理解」を求めるという姿勢が、詩への拒否感を生んでいる。「理解しなければいけない」という強迫観念に読み手を追いやっている。しかし詩は「分からない」ものとして理解を保留しても良いのだ。
そうして人生の時々で読み返していけばよい。詩は書き手の「伝えたいもの」を超えて、まず「美しいもの」であるので書き手ですら何を伝えたいのか分かっていないかとしれない。むしろ書きたいものは書くうちに変わっていくものであり、そこに固執すると作家としての寿命は短い。
僕としてはここまでいくとなかなか先鋭的というか、もはや神懸かり的(といったら失礼なのかもしれないが)だなという印象を受けた。ただ理解をいったん保留するという態度は目から鱗だった。確かに「よく分からないけど好き」というのは僕も経験があるし、芸術に対してはあるべき態度のひとつなのかもしれないと思った。
本書は現代詩の入門書ではあるのだけど、それ以上に著者の個人的経験に依拠した「現代詩との遭遇の体験談」であると思う。そもそも現代詩と読み手の関わり自体が一般化できない個人的体験の集合なのだろうけど。
今を生きるための現代詩 (講談社現代新書 2209) | 渡邊 十絲子 |本 | 通販 | Amazon
「右園死児報告」(真島文吉)
うーん、なんなんだろうなこれは……。
ホラーモキュメンタリーかと思いきや、SCPになり、最終的に怪獣大決戦みたいな……。まとめると右園死児という特級呪物を現代科学で利用・制圧しようとする架空SF戦記みたいな感じだった。あと舞台設定も変わっていて、軍が温存された戦後日本みたいな。確かに賛否割れるだろうなと思った。
個人的には、よくTwitter広告で流れてくるようなホラーモキュメンタリー的な紹介はミスリードだと思う。あまりそういうのを期待して読む話ではないかなと。特に後半はお化け的な恐怖感が全くなくなって、SFになり、最後は若干エモ……。
右園死児報告 | 真島 文吉 |本 | 通販 | Amazon
「戦争プロパガンダ 10の法則」(アンヌ・モレリ)
第1章 「われわれは戦争をしたくない」
第2章 「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
第3章 「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
第4章 「我々は領土や覇権のためでなく、偉大な使命のために戦う」
第5章 「われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
第6章 「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
第7章 「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
第8章 「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
第9章 「われわれの大義は神聖なものである」
第10章 「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」
これらは戦争をしている国が、自国民や国際世論に対して向ける常套句。この本で扱っているのは主にWWⅠとWWⅡ、それにコソボ紛争やイラク戦争など。双方の陣営とも自分たちに都合の良いことばかりを言っていて、読んでいて気分が悪くなる。
WWⅡはファシズムと民主主義陣営の戦い、冷戦は共産主義と自由主義の戦いと位置付けると当然連合国・西側諸国が正しいという雰囲気になるが、西側の主張もご都合主義が大半。そして正義のためにといいながら、戦後にはそれまで全く話に上がらなかった領土分割がしれっとできている。
読んでいると、とにかく自国に都合の良いプロパガンダが両陣営で大量に出てくる。自分が考えている"正義"がただの利益誘導だったのでは、今の戦争もそうなのでは、という考えが常にグルグルと頭をかすめてすげぇつらい。自分が拠り所にしていたものがただのまやかしだったのではという気持ちになる。
この本が最初に出た2001年当時はイラク戦争で、前線にいる住民や兵士がブログで"現地"の生の情報を発信してそれが世界中で見れた。ブログブームの先駆けだった。マスメディア報道ではない、個人の発信が主流になるという予感。この本はそういう空気感で書かれたというのは考慮に入れる必要はある。
とにかく両陣営ともデマや情報の切り抜きなどを駆使してくるなかで、僕らはそれにどう対処すればよいかというと「疑い続ける」しかない。コストもかかるし面倒だけど馬鹿みたいに騙されるよりはマシ。ただ誰でもできる方法ではないと思う。
文庫 戦争プロパガンダ10の法則 (草思社文庫 モ 1-1) | アンヌ モレリ, Morelli,Anne, 千奈, 永田 |本 | 通販 | Amazon
「進化とは何か ドーキンス博士の特別講義」(リチャード ドーキンス)
「利己的な遺伝子」で有名なドーキンスの一般向け講演録+インタービュー。僕は割と遺伝生物学系のYouTube動画をよく見てるので書かれてることは大体知ってたんだけど、それでも説明の仕方はすごく面白かった。
ドーキンスは「生物は遺伝子の乗り物である」という言い方をずっとしていて、生物の"目的"はその遺伝子を残すことである、と言っている。もちろん生物が「よし!遺伝子を残そう!」と思っているわけではなくて、本能に従って行動するとそうなる、という話だけど。
進化のよくある誤解として「キリンは高いところの葉っぱを"食べたい"から首が長くなった」というのがある。キリンは首を意図的に伸ばそうとしたわけではなく、首の長い個体が生存に有利だから生き残った。いわば"たまたま"生き残ったわけで、その生存率の違いが次の世代に反映されていった。
あとは進化論に対して創造科学(本書では創造説)というのがある。これは特にキリスト教右派が聖書の創造論を根拠に「生物は神がデザインした」というもので、アメリカの保守的な地域では特に人気がある。その主張の根拠として「鳥は飛ぶためにあんな見事な翼を持っている。生物が少しずつ進化していったなら鳥の祖先は"半分の大きさの翼"を持っていたはずだ。そんな翼では当然飛べないので役に立たない。役に立たないモノがどう生存に有利になるのか」というもの。確かに不完全な翼では現代の鳥のような飛翔は出来ない。しかし生存率に全く関係ないわけではなく少し役にたつ。例えば木から落ちた時には不完全でも翼がある方がダメージが少ない。そうすれば敵から逃げられる確率が上がる。もっと大きければ滑空できるかもしれない。少しだけ有利だ。
そうやって「少し有利」が長い年月をかけて少しずつ積み重なって、今の翼が出来上がった。ドーキンスは生物が「まるでデザインされたかのような姿であるかのように進化すること」を「不可能な山に登る」と言っている。
不可能な山とは「一方の方向から見ると断崖絶壁でとても登れないように見えるが、もう一方から見ると少しずつ登れる傾斜になっている」山のこと。創造説の信奉者は断崖絶壁の方から山を見ている。そうするととても登れない(=進化ではたどり着けない)ように見える。
しかし進化論者は逆から見る。すると少しずつ世代を重ねてなら登れるように見える。頂上に登った状態の「今」しか見ていないからとても登れないように見える。しかしその麓からの「道」を見てみれば少しずつ登ってきたことが分かる。
あとはファラデーが「科学の有用性」について聞かれたとき「赤ちゃんの有用性とは何でしょう?」と答えたというもの。赤ちゃんは今は何もできないが大きな可能性がある、という意味ととれる。しかし他の解釈として「赤ちゃんは何のために生きているのか」と問い直すと「生きるために生きる」といえる。生きることだけに全力な人生もあれば、それ以外の有意義なことを成し遂げる人生もある。芸術などは実利的な意味がなくてもこの「有意義」に含まれるが、科学になると突然「何の役に立つんですか」と言い出す人がいる。
しかし役に立たなくても楽しければいいじゃないか!みたいな話だった。
この主張は僕としてはちょっと消化不良で、楽しいだけの話であれば科学に莫大な予算を突っ込む理由にあまりならない。やはり科学の大きな目的としては人類の発展に役立つというのがあって、その科学という大きな土台の発展のために個々の分野や研究テーマがあるのではと思う。たまに「この研究が何の役に立つんですか」と聞かれて怒る科学者がいるが、とはいえその研究テーマは何らかの理論の発展に役立つはずであって、本当に何の役にも立たないのであればその研究者にすらその意義は見出せないのではと思う。まぁこの話は本書の内容から結構逸れてしまうのでさておき……。
とはいえ反知性の嵐が吹き荒れる昨今こそ改めて読まれるべき本だと思った。
進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義 | リチャード ドーキンス, 吉成 真由美, 吉成 真由美 |本 | 通販 | Amazon
「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか」(ピーター・ティール)
ティールはイーロンマスク達とPayPalを創業したPayPalマフィアの一人で大富豪。右派リバタリアンでトランプ支持者なので良いイメージがなかったんだけどこの本の話は面白かった。主張としては
①誰も気付いていない、自分だけが気付いている真実を追え
②大きな市場ではなくニッチな市場を独占しろ
③CEOや従業員への報酬は高額な給料ではなくストックオプションで
④リモートワークさせるな、チームは毎日顔を合わせろ、一緒に過ごしたいと思える仲間と仕事をしろ
⑤快適なだけの福利厚生で従業員を惹きつけるのではなく、会社自体で惹きつけろ
⑥CEOがスーツで営業にくる会社はゴミ
⑦エンジニアは営業をバカにしがちだが営業は大事、良い製品は営業しなくても売れるというのは幻想、でもただ営業に金をかければ良いというものでもない
⑧人間だけでもコンピュータだけでも駄目。コンピュータと人間の協働作業こそが価値を産む
⑨曖昧な楽観主義は無意味。計画を立てて未来に備えろ
だいたいこんな感じの主張だった。
①の「誰も気付いていない、自分だけが気付いている真実を追え」というのは、ニッチ市場を発見して独占するためには重要な視点だと思う一方で、昨今の陰謀論的世界観に直結する危うい思想だなとも思う。ティールはmRNAワクチンに反対しているし、トランピアンだし。
まぁこの人くらい頭がいいなら大丈夫かもしれないけど、一般人が間に受けるのは正直かなり危険。イーロンマスクを元同僚としてすごく評価しているが(僕もイーロンマスクは天才だと思うが)、それはそれとして独裁的カリスマ的な思いつきで何かを為すには米国政府はあまりにも複雑なシステムだった。
まぁこれは結果論だな。後からなら何とでも言える。
考え方としては面白かったし、ビジネスの考え方を学ぶ上でもこの本はかなり参考になると思う。面白かった。読んで損はなかった。
ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか | ピーター・ティール, ブレイク・マスターズ, 瀧本 哲史, 関 美和 |本 | 通販 | Amazon
「銀河帝国興亡史❶ ファウンデーション」(アイザック・アシモフ)
なんというか、時間スケールがすげーデカいので、ファウンデーション創立者のハリ・センダンが「歴史」になり「神話」になっていくのが面白い。いつの時代もファウンデーションの指導者は努力しながら必死に考えながら一人の人間としてファウンデーションを導くことを考えているのに、一度その人の時代が過ぎ去ると「偉大な人物」としてあたかもそこに収まるのが決まっていたかのように歴史になっていくというか、そういう過程が描かれているのが面白い。まぁしかし"過去の偉大な指導者"へのノスタルジーな考え方は割とアメリカっぽいかもなぁ。
日本だと例えば明治維新の立役者だろうが、全国民が偉大な人物として尊敬しているかというとあんまりそんな感じはしない。歴史上の人物ってキャラクターっぽいというか。あまり自分と地続きの人として捉えていない気がする。そこは近代から歴史が始まったアメリカとの国家観の違いというか。
あとポピュリズムの感じとか「うぉー、これまさに"今"の感じやんけ」みたいなのがありアシモフとんでもないなと思う。ハリ・セルダンか?ただ全体的にそこまで大きな起伏がなくて(特に後半)ちょっとタルいなと思ってしまったので続刊を買うのはしばらく待つか。
ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉 (ハヤカワ文庫SF) | アイザック アシモフ, 岡部 宏之 |本 | 通販 | Amazon
「社会学史」(大澤真幸)
結構読みやすいけど、それでも近代に入って以降はしんどい。登場人物(社会学者)が多いのと、現代に近づいてくるに従って理論が複雑で抽象的になってくる。正直マックス・ヴェーバーくらいまで分かってれば十分じゃない?と思うなど(暴言)
あとマックス・ヴェーバーはとんでもなく西洋中心的な視点しか持ってなくてやべーなと思うなどした。まぁ時代的に仕方ないけどね。それにしても社会学はどこまでいっても神の存在論的な文脈から逃げられてないと思うけど、そこらへんどうなってんのかね。
まぁ議論を主導してるのが欧米の学者なので仕方ないと思うけど、西洋的な価値観を押し付けられるという感じがしてどうもなぁ。とはいえ西田幾多郎とか別に読む気もそんなにないっちゃないんだけど。
抽象的な理論をこねくり回しても素人目には「なんや難しいこと言ってはりますなぁ」としか思えないので、レヴィ=ストロースとかエマニュエル・トッドのようなデータをベースに議論する人のやつを読みたい。あと非西洋世界の社会の分析な。
キリスト教的な"神"が世界の宗教史的に特殊すぎて(だって他に唯一神論の宗教ないし)、それ前提で議論が進んでいくことの違和感がすごいというか、西洋人の内省とかそもそも分からんのよ。神が絶対的な権力かというと、日本では多分そうではないよね。
まぁこの本の"社会学史"は西洋の社会学史なのでしゃーないし、それを追いかけることの価値は間違いなくあるけど。
でも前述の通り色々分からんので、改めて社会学者・理論・先行の理論をどう乗り越えるか、みたいなのをちゃんと自分なりに整理する必要があるな。
とはいえこの本をしっかり追っていけばその宿題は達成できるのではと思うし、そういう意味ですごく良い本だと思います。ちょいちょい作者の主観が入ってるのが若干気になるけど。
社会学史 (講談社現代新書 2500) | 大澤 真幸 |本 | 通販 | Amazon
「イカはしゃべるし、空も飛ぶ」(奥谷喬司)
イカの体組織構造から生態から種類から研究史からイカ漁の歴史から、とりあえず網羅的にイカについて語った本。とんでもないイカ愛。タイトルの「イカはしゃべるし」というのはイカが体表色でコミュニケーションをとっているのではという話。
体表色を異性へのアピールに使う動物は鳥やマンドリルや昆虫や色々いるが、どれも色は時間的には変化しないかゆっくりである。体の色を自在に変えるといわれるカエルやカメレオンであってもその変化には数分かかるのに対してイカはとんでもないスピードで色を変える。
イカはしゃべるし、空も飛ぶ―面白いイカ学入門 〈新装版〉 (ブルーバックス) | 奥谷 喬司 |本 | 通販 | Amazon
「科学の限界」(池内了)
現代科学の限界を以下のような要素から考察している。
・国家の科学政策による支配
・"役に立つ"分野への傾倒
・設備と予算の巨大化
・商業化により成果を隠すようになったり、成果を誇大に発表するようになったこと
・不確定性原理のような原理的な限界
・現実性の多くの現象は、非線形的な要素の組み合わせによる複雑系であること
・現代文明の源泉になってきた石油資源の枯渇
・バイオテクノロジーの倫理的問題
など。
基本的に筆者は左派的な思想ではあるけど、国家による支配は割と冷静に見ていた。
当然国家による支配を是とはしてないんだけど、科学が軍事や経済に役立つ研究を強制されるようになる前から「国家の威信」のために利用されてきたとする。まぁ言われてみれば確かにそうだな。
本が書かれたのが2012年なので、原発への意見は反原発一色。原発推進派の発言権が大きく、金にならない廃棄処分などの金にならない研究はなおざりにされてた。2011年以降は廃炉ロボコンもあり多少は金が使われ始めてる印象だけど、廃炉ロボコンも問題はアレだからまぁ。
科学が限界を迎えているという問題に対して著者の意見は「等身大の科学をやる」「科学研究の物語性を大事にする」というもの。等身大の科学とは低予算で長期間の研究。例えば市民に蝉の抜け殻を集めてもらう、それを長期間広範囲で実施すれば蝉の生息域の変化が分かるだろう、というもの。
「物語性を大事にする」というのは小惑星探査機はやぶさの成功譚だったり、科学が成果として結実するまでのストーリーに注目するというもの。まぁこれは上手くやればその研究の問題意識とかも含めて説明しやすいし、確かに興味を持ちやすい。筆者は「科学に金を出すのは国家だが、最終的には国家の主権者たる市民にもっと興味をもってもらわなければいけない」と主張する。これは確かにそうで、科学も文化のひとつであるならば、その文化を担うのは国家ではなく市民であるからだ。
まぁ個人的に色々ツッコミどころはあるんだけど、一番気になるのはこれ今書かれたらどういう論になるんだろうなということ。コロナと生成AIと陰謀論が入ってくるはず。
最後の結論や原発ムラへの不信感はうーんというものがあったが、著者の問題意識は納得するものが多かった。
Amazon.co.jp: 科学の限界 (ちくま新書 986) : 池内 了: 本
「ソシュールを読む」(丸山圭三郎)
クソ。
まぁクソは言い過ぎだな。
ふーん、ほぉー:40%
クソクソクソ:60%
といったところか。一部面白いところもあったけど大部分はクソ。特に後半は酷い。何言ってるか分からん。
何というか、こういう偉そうにペダンチックな言葉並べて読者を煙に巻いて、さらにID論を持ち上げるようなクソ馬鹿を崇め奉ってきた文系アカデミズムのクソ馬鹿どもが今の学術会議法案の事態を招いたんじゃないですかね?(ハナホジ)
80年代に書かれた本ということで、諸々の歴史認識が古いのは多少仕方ないとして、後半はマジで時間の無駄ですね。講演でオ〇ニーすな。それっぽい単語並べるな。馬鹿くそが。
ソシュールを読む (講談社学術文庫 2120) | 丸山 圭三郎 |本 | 通販 | Amazon
「よくわかる山岳信仰」(瓜生中)
山岳信仰というと山伏に代表される修験道が真っ先に思い浮かぶ。当然その話がメインなのだが、もっと本書はそれだけでなく庶民も含む広い範囲の山岳信仰を対象にしている。"神道"として整備される前の古層の信仰や、中世の神仏習合の話もあり、かなり面白い。
よくわかる山岳信仰 (角川ソフィア文庫) | 瓜生 中 |本 | 通販 | Amazon
「数学史入門」(志賀浩二)
古代ギリシアのユークリッド幾何から中世ヨーロッパの古典的な解析学、ニュートン&ライプニッツの微積分を経て現代的な数学へ、という流れは面白かった。特にニュートンとライプニッツの発想の違いをしっかり説明してくれてたのは良い。
願わくばニュートン・ライプニッツの素朴な無限小を使った微積分から、微積分の厳密化までの歴史をもーちょっと詳しく書いてほしかったけど、これは僕の今の興味がそこに偏りすぎてるが故の感想なのでフェアではないかも。
ちなみにいうと、微積分に対する当時の具体的な批判もちゃんと書いている。個人的にはこれ割とびっくりした。今まで数学史の本は何冊か読んだけど、ここまで具体的に書かれてるのは初めて見たので。
数学史入門 (講談社学術文庫) | 志賀 浩二, 上野 健爾 |本 | 通販 | Amazon
「よくわかる日蓮宗」(瓜生中)
日蓮宗って分派を繰り返してるので全体像が掴みづらいんだけど、これは分かりやすかった気がする。日蓮宗の分派って勝劣派/一致派という軸の他に釈尊本仏論/日蓮本仏論の対立もあると思ってるけど、そこにはあまり触れられてなかったな。
よくわかる日蓮宗 重要経典付き (角川ソフィア文庫) | 瓜生 中 |本 | 通販 | Amazon
「よくわかる真言宗」(瓜生中)
真言宗は平安仏教として歴史の教科書でもかなり大きく取り上げられるので知識はあると思ってたんだけど、知らんことばかりだった。真言宗というかそもそも密教があんまり分かってなかった。大日如来の扱いが天台宗と真言宗で違ってたりとか。
あと西洋の黄道十二星座が密教の中にバリバリに入り込んでるの笑ってしまった。十二星座の起こりは紀元前なので、そこから7世紀もあればシルクロード通して仏教に取り込まれるのも分かるけど、それにしてもよ。
あとグノーシス主義の影響っぽいのがチラホラある気がする。密教ってかなり神秘主義っぽい感じがあるし、大日如来とその権現としての釈迦如来いう存在もグノーシス主義の神と、神の流出という概念から影響受けてる気がするんだよな。
よくわかる真言宗 重要経典付き (角川ソフィア文庫) | 瓜生 中 |本 | 通販 | Amazon
「日本語の秘密」(川原繁人)
いやもうこれめちゃくちゃ面白い。とんでもない。
音声学が専門の言語学者が歌人/ラッパー/声優/言語学者・作家のレジェンドと対談するという本なんだけど「そ、そ、そうだったのかー!!!」みたいな話の連続。
僕は昔から日本語ラップと日本語の音の関係に興味があって、『「ん」って韻の要素になる時とならない時があるよな?』とか、『そもそも日本語の「ん」の音って複数あるよな?』とかを考えていて、そういうのを分析できないかなーと考えていたんだけどそれを遥か以前にやっていたのが川原先生。Mummy-Dとの対談は「うーんうんうんそうだよねー確かに!」みたいな話の連続で、日本語ラップの特に押韻が好きな人間なら絶対面白いと思う。
あと話に出てくるラッパーがRHYMESTER/ZEEBRA/K DUB/山田マンとかめっちゃ世代でウケた。川原先生は僕の8つ年上なので、僕が高校でラップをずっと聞いてた時期と、川原先生が留学先でラップを聞いてた時期って確かに被ってる。
短歌も単純に5・7・5の形に音を並べるだけかと思っていたのだけれど、音を心地よく響かせるためにはもっともっと奥深い世界が広がっていて、めちゃくちゃ面白かった。
あとは「文化」というものをすごく大事にしてるなーという感じがある。言語の音が面白いのはそうなんだけど、それはあくまで人間同士のコミュニケーションの上で育まれた「言語」という文化的基盤があって初めて成り立つものというか。そこらへんの思いみたいなのも良かった。
日本語の秘密 (講談社現代新書) | 川原 繁人 |本 | 通販 | Amazon
「よくわかる曹洞宗」(瓜生中)
純粋な禅の宗派として始まった曹洞宗が紆余曲折を経てかなり混交的な宗派となっていった過程がよく分かった。曹洞宗は確か寺院数が日本一なのだが、(個人的には)教義や成り立ちが分かりづらく他の鎌倉仏教と比べて影が薄い印象なのだが、おそらくそれも信者獲得のために信仰を変化させていった結果。
一方で修行としての生活の雑事(食料生産や掃除)や精進料理など、多くの日本人が持つ"寺での生活"のイメージを形作ってきたのも曹洞宗なのではと思う。まぁそういうのも含めて非常に日本人っぽい宗派というか。
よくわかる曹洞宗 重要経典付き (角川ソフィア文庫) | 瓜生 中 |本 | 通販 | Amazon
「自動車絶望工場 ある季節工の日記」(鎌田彗)
トヨタの期間工(当時は季節工という名称が一般的だったっぽい)として6ヶ月働いた著者の体験記。「ベルトコンベアでの労働は労働者の人間性を失わせる」みたいな書き方は「あーハイハイハイハイ」と思ってしまうのだが、それにしても確かに仕事はキツそう。
あとは労組環境の劣悪さだったり労災隠しや職制の安全性軽視は許せん。根本的な危険性から目を背けて、バイオリズムがどうとか言い出す職制はマジであり得ない。
この本に書かれているトヨタはまさに資本によって膨れ上がった独裁国家さながらであって、これを見ると今の左翼の人たちの国家不信、大企業不信というのも分からんではないと思う。
一方でメーカーの人間から見ると、トヨタの方法論(とくになぜなぜ分析に代表されるような品質管理のフレームワークと、5Sや三現主義のようなスローガン)は日本の製造業の安全性向上・品質向上にとんでもない貢献をしていると思う。そこの現場とのすれ違いというか、現場リーダーレベルまでの浸透が少なくとも当時はできていなかったのかな。
自動車絶望工場: ある季節工の日記 (講談社文庫 か 20-1) | 鎌田 慧 |本 | 通販 | Amazon
「夢中になる東大世界史~15の良問に学ぶ世界の成り立ち~」(福村 国春)
東大の世界史入試問題を解いていくという本なんだけど、普通にめちゃくちゃ面白い。東大の世界史は「○○について述べよ。ただし以下の単語を使うこと [単語8個くらい]」みたいな形式なんだけど、単に世界史の一事件ではなく複数の事件の繋がりを問われる問題。
歴史のイベントという点が線で繋がる感覚で、普通にめちゃくちゃ面白い。東大生はこんな問題解いて入学してんだなぁ、そりゃ賢いわ……と思った。
夢中になる東大世界史 15の良問に学ぶ世界の成り立ち (光文社新書) | 福村 国春 |本 | 通販 | Amazon
「日本神話の源流」(吉田敦彦)
本書の大きな主張としては、印欧語族の神話と日本神話は類似性がある!ということ。比較神話学としては大きくゴンドワナ型神話とローラシア型神話が知られてるけど、三種の神器と他神話の法器の対応とかさらに踏み込んだ感じ。
一部「ホントかよ?無理矢理じゃない?」みたいな部分もあったが全体としてはかなり面白かった。神話の古層を明らかにするってホントにロマンありますよね。
日本神話の源流 | 吉田 敦彦 |本 | 通販 | Amazon
「忘れられた日本史の現場を歩く」(八木澤 高明)
日本史の現場を歩くというタイトルそのまま、日本史にゆかりのある(とはいえマイナーな)途中の写真とともに、訪れた印象を数ページで買いていく。エッセイ風なのかな。忘れられた日本史を掘り起こす!とかそういう血気盛んな本ではない。どちらかというと情緒とかノスタルジーとかそういう系。
忘れられた日本史の現場を歩く | 八木澤 高明 |本 | 通販 | Amazon
「君に恋をするなんて、ありえないはずだった 」(筏田かつら)
手違いで買ってしまった本ではあったけど、せっかくだからと読んだら面白かった。内容的にはよくある(失礼)思春期のすれ違いだけど、主人公が下心なしでやる行動はかっこいいなーと思う。子どもに読んでほしい。
君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫) | 筏田 かつら |本 | 通販 | Amazon



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