絶え間ないドローン攻撃の「地獄」、最前線の塹壕で4か月生き抜いたウクライナ兵「自分は廃人同然」
最前線「ゼロライン」の塹壕(ざんごう)で4か月生き抜いたウクライナ軍兵士セルヒー・トルスチュクさん(51)は、2023年4月の動員当初は負傷兵救助の運転手だった。だが昨年夏、露軍がFPV(一人称視点)無人機を大量投入すると、車で前線に近づけなくなり、運転手から歩兵になった。
ゼロラインでの任務は、陣地の境界線となる塹壕を死守することだ。24時間感覚を研ぎ澄まし、飛来する無人機を後方部隊に連絡して撃墜する。塹壕を奪おうと突入してくる露軍兵士を銃撃し、周辺には遺体が積み重なっていった。
身動きが取れる時間は視界不良となる霧や薄暮の時間帯だけ。要員交代は気候条件が整った時に3回試みたが、計9人全員がたどり着く前に死傷した。近くまで来て無人機に襲われたチームもあったが、「助けに行っても、自分も遺体になるだけ」と、うめき声を聞きながらじっとこらえた。
補給用の無人機が露軍に妨害されれば、食料も届かない。5日間、水も食料もなくなった時は尿を飲んでしのいだ。体重は10キロ・グラム以上減少し、「もうこのまま、ここで死ぬのかもしれない」と何度も絶望した。
だが12月下旬、4回目にしてやっと交代要員が到着した。経験の浅い兵士3人で「彼らはきっと長く生き延びられない」とも感じたが、後を託して後方の基地へ向かった。その後まもなく3人は死亡したという。
生還後も深いトラウマに苦しむトルスチュクさんは「自分はもう廃人同然だ」と嘆く。夜は1~2時間しか眠れず、ベッドから跳び起きては露兵の姿を探す。塹壕にいる感覚に襲われ、脱出しようとドアをたたき割ったこともあった。人員が欠乏する部隊から、前線に戻るよう求められたが、拒否している。「次はもう生きて帰れない。戦場には死しかない」
無人車両、負傷兵の「生命線」にも
戦場での無人機の浸透は、負傷兵の救出方法も変えた。救助に向かえない地域では、遠隔操作による陸上ドローン(無人車両)が生命線となっている。