絶え間ないドローン攻撃の「地獄」、最前線の塹壕で4か月生き抜いたウクライナ兵「自分は廃人同然」
【キーウ=倉茂由美子】ロシアによるウクライナ侵略は24日で4年を迎える。両国が大量に投入したドローン(無人機)は戦争の姿を根本的に変えたとされる。空からの絶え間ない攻撃にさらされながら、陣地を死守するため「ゼロライン」と呼ばれる最前線の塹壕(ざんごう)で戦った兵士が、ドローン戦争の過酷な実態を証言した。 【動画】戦争の形態を変えた1人称視点(FPV)ドローン 「ウクライナ戦争では死傷の主要因」と指摘する専門家も
「もはや人間が生き残る余地がない、地獄だ」。西部フメリニツキー近郊の自宅で1月下旬、ウクライナ軍兵士のセルヒー・トルスチュクさん(51)は、東部ドニプロペトロウシク州の前線の状況を、青白い顔で語り始めた。外は氷点下だが、玄関は開けたまま。光がないと、今も塹壕にいる錯覚に襲われパニックになるからだ。
同州ノボパブリウカのゼロラインに向かったのは、まだ暑い昨年8月下旬だった。すでに多数の兵士が犠牲となっていたが、陣地を維持するには誰かが駐留しなくてはならない。任務を拒否する隊員も出るなか、経験が豊富なトルスチュクさんら3人が引き受けた。
最前線から約15キロ・メートルのエリアは、死傷する可能性が高い「キルゾーン」。露軍のFPV(一人称視点)無人機が頻繁に飛び交う。車は使えず、徒歩で3日かけて向かった。道中には収容されない無数の両軍兵士の遺体が転がっていた。地雷を避けるため、時には遺体を踏んで進んだ。
長くても1か月で交代が来る。そう思っていた。だが、交代要員は露軍無人機の攻撃で死傷し、誰もたどり着かない。食料や弾薬を運ぶ無人機も撃ち落とされた。飢えに苦しみながら、昼夜を問わず襲い来る無人機、忍び寄る露軍兵士を撃退し続け、約4か月が過ぎ去った。塹壕で身動きが取れないまま、季節は寒さの厳しい冬になっていた。
「もうこのまま死ぬのかも」何度も絶望
ロシアによるウクライナ侵略では、最初にドローン(無人機)攻撃で効果を上げたのはウクライナだったが、その後、ロシアも無人機の生産を強化し、無人機が戦闘の主役となった。政治専門紙ポリティコによると、両軍兵士の死傷者の7~8割が無人機攻撃によるものだという。