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誰も観ていないのにコスト莫大 BS4K・8Kは廃止すべき

今回はTwitterでリクエストを頂いたBS4K・8K、いわゆるスーパーハイビジョンについてです。50代以上のNHK職員しか知らない話も多いと思いますので、若手の皆さんは「日本放送史」の基礎としてもご一読ください。

結論から言えば、4K・8Kのように無駄なものは即刻停波すべきだと私は考えています。カネも時間も莫大に掛かるにも関わらず、一般の方はもちろん、職員すらまともに見たことが無いような代物です。

私は制作もしてきたので、骨身に染みてその“不正経理”っぷりを理解していますが、協会幹部は誰も作ったことも見たことも無いのに、この波を“悪用”しています(まぁ、幹部は老眼だから協会内のモニターを見ても違いを認識出来ないのですが)。

NHKにおけるBS放送の歴史を振り返りながら、いかに巧妙に受信料収納の理屈づけにNHKがBSを“悪用”してきたのかを炙り出していきます。

BSアナログ放送で味をしめたNHK

超ざっくり言いますと、もともとの衛星放送(BS)は難視聴対策として始まりました。

今ほどケーブルTVやIP通信が発達していなかった太古の昔(1980年代)、通常の電波(VHF・UHF)だけで「あまねく」放送を伝えるのには限界があり、衛星を使った放送が計画されたのです。

その実現のためには巨額の投資が求められました。しかし、総合テレビと同じものを流してもカネは取れません。人口増・世帯増も限界が見えた時代、NHKは新たな収益源を求める必要に迫られます。

そこで計画されたのが、BSに付加価値を持たせることです。BS1を報道とするなら、BS2はWOWWOWなどの有料放送を上回るような贅沢なラインナップを目指す事で、地上波を受信できている世帯も、より高額な衛星契約に切り替えさせられるのではないか?とNHKは企んだわけです。

結果として、馬鹿みたいな人的・金銭的リソースがBSに投下される事になります。ドラマ・教養・映画の他、様々な意味不明な特番も制作されます。

さらに、「朝ドラ」や「大河」の放送開始をBSは総合テレビより45分くらい早めるなどの姑息な手も使います。当時、「朝ドラ」は総合テレビでは8:15からの放送でしたが、BSでは7:30からとします。これによって通勤・通学前にもギリギリ見られるという新たなインセンティブを生み出します。ちなみに、今も「大河」の放送がBS4Kだけ超早いのは、この時代に産み出した奇策に縋っているからです。

地上波よりBSの方が若干高画質というメリットもありましたが、緊急報道の難視聴対策という当初の目的はいつしか忘れ去られ、老人向けに娯楽を提供することがBSの目的と化しました。「文化の発展」とかっていう放送法上の表現を「娯楽」と確信犯的に曲解して、NHKは主に老人からの契約を膨大に集める事に成功しました。

BSアナログハイビジョンの敗北

NHKにとってBSはまさに「濡れ手に粟」でした。BSにも放送を展開する事にするだけで番組予算が倍増する事もあり、90年代からは総合テレビとBSのマルチ展開も急増します。

総合テレビ用には落とした素材を適当に繋いで尺を伸ばすだけだから、コスパが良いわけです。視聴者からしたら地上波とBSでほぼ同じものが流れていても無意味なのですが、湯水の如く制作費を使える点で、地上波とBSのマルチ展開は、制作側にとってはもの凄く旨味のあるものでした。負の側面もありますが、良い意味での投資効果もあり、90年代には特にNHKのTVドキュメンタリーはその地位を確立します。

平成元年に始まったNHKスペシャルの“黄金時代”もこの頃です。

が、うまい話はそう続きません。次第にBS契約も頭打ちになります。

そこで、NHKは更なるBS拡充を企てます。それが、MUSEという独自性の高い方式を導入した「BSアナログハイビジョン」です。アナログ放送の走査線本数(画質に関わる値)525本に対して、BSアナログハイビジョンは1000本相当と、およそ2倍の高画質化を達成しました。

内容ではなく、高画質化で差別化しようという魂胆です。いかにも旧日本軍的な発想ですよね。NHKらしいと言えばNHKらしいと言えます。

https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/focus/161.html

実際、90年代の高精細映像を後世に伝えた点では評価もできますが、このBSアナログハイビジョンには酷い欠点がありました。

まず、機材の互換性が従来の地上波・BSと全く無いのです。カメラはどこの神輿だというサイズで、カメラマンとフォーカスマンが必須。とてもじゃないですが機動的なロケなど出来ません。編集も試写も全く異なるシステムが必要で、尋常じゃ無い金額の設備投資が必要となりました。

で、ここからが本当にバカらしい話なんですけど、一般の人もTVを買い替えないと視聴できなかったんです。いくら高画質でもフィラーのような自然番組くらいしか流れていないBSアナログのために30万以上もするようなデカいブラウン管TVを買えというのは人をコケにしています。

結局、80万台程度しか出荷されませんでした。2007年まで18年間も、ほとんど誰も見ていないものを放送していたのだから“不正経理”もいいところです。責任者も天下りを繰り返して、一切罰せられることなく余生を謳歌しています。

NHK内で共食い 異常なるBS3波時代の幕開け

この18年間のサンクコストがこれまたNHKを次なる暴走へと駆り立てます。

今度はBS1・2・プレミアムの3波体制時代です。地上デジタル放送が開始され、家電エコポイント等の奇妙な政策の後押しもあり、16:9の液晶・プラズマTVが急速に普及します。今度は、互換性のミスを犯さないようにと、あくまで地デジと同じコーデックで、よりビットレートを高めた形でBSデジタル放送はなされました(厳密には違うんだけど、一般向けにはこれでOK)。

相次ぐ不祥事による不払いなどで打撃を受けましたが、CATV等の普及により、TVを持っている=BSも受信できる=BS契約が標準となったことと、訴訟による強権的な回収が可能になったことを受けて、BSは再び収益源として息を吹き返し始めます。

しかし、BSも海外から買ってきた番組や地デジとほぼ同じものばかりが流れるようになり、求心力を失っていきます。BSは一部の高齢者だけが見る程度のものとなり、大河・朝ドラの放送で世帯視聴率3%かそこらという状態でした。画質的なアドバンテージが無い上に、内容的にも、つまらないか長すぎて人間の集中可能時間を超えているという問題があり、見放されたんです。

実際、60分尺のBSプレミアムの番組って、試写段階では90分くらいあるんですよね。もし120分の番組だったら200分以上はあります。そんなの見せる方も見る方も忍耐の限界を超えています。一般視聴者からしたら尚更です。ま、この異常な尺の長さが「字幕問題」にも繋がるのですが、それは次回の「NHK職員有志一同批判」で詳しくお伝えします。

さすがに2010年ごろになると、行政からも「NHKの放送波多すぎるだろ…」と目をつけられるようになります。総合・教育・BS1・BS2・BSPと5つあっても誰も見ないですよ。内容的にも全部NHKの管理する番組だから同じようなものばかりですし。

流石にNHKも折れて、BSを2波に削減することを裏で決めますが、それと引き換えにまたNHKが悪巧みを始めます。それが、BS8Kの世界標準化です。

実は、ハイビジョン(2K)の次のスーパーハイビジョンって8Kだったんですよ。「4Kじゃ当たり前だから8Kで世界の度肝を抜くんだ」と滑稽な研究を2000年代初頭からNHKは始めていたんです。

その果てに結実したのが「8K(7680×4320)・22.2chオーディオ」という超がつくほどの“不正経理”です。この日本の住環境において、最低100インチ・スピーカー24個も必要なものを誰が求めるというのでしょうかね?BSアナログハイビジョンを遥かに上回るほどの異常な放送規格が作られてしまいました。

NHKとしては地デジは南米など一部でしか規格として採用されなかったという悔いもあり、世界の放送フォーマットを支配してビジネス化したいという謎の欲求に駆り立てられていたのです。2000年代初頭に既に4Kは想定されていましたから、その次の8Kにいち早くツバをつけて世界を席巻しようなどという誇大妄想に取り憑かれて、こんな無駄なものを作ってしまったんです。

が、問題が発生します。折りしも東京オリンピックが決まるかどうかの頃ですが「8K視聴環境は一般には普及しようがない」とNHKだけでなく行政サイドも気付いたのです。「やり始める前に分かるだろ…」ってマトモな神経をしていたら分かりそうなものですが、2010年代中盤になってやっと気付いたんです。

そこで、急遽計画が立ち上がったのがBS4Kなのです。「2Kの次は8Kだ」と息巻いていたNHK技術局・放送技術研究所は地団駄を踏んで悔しがったと思われますが、こうしてBS4KとBS8Kという“存在してはいけないもの”がBS1・2に加えてさらに並列されることとなりました。

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異常な数の放送波を抱えたNHK

皆さんご存知の通り、東京オリンピックはもはやスキャンダル以外誰の記憶にも残らないような幕切れとなりましたが、戦後の日本のようにオリンピックにスーパーハイビジョン(BS4K・8K)の普及を託していたNHKの計画もまた泡と消えました。悪事はやっぱダメなんだよ。

もはや8Kはα7rシリーズなら誰でも撮影できますし、YouTubeでも見られます。その一方、スクリーンの小型化が進んで映像メディアの解像度にはさほど意味を持たない時代が到来しました。もはや、8Kには何の特別性も無い状態となったのが2022年の日本です。

無駄だらけのBS4K・8K番組制作

前置きの歴史だけでクソ長くなってしまいましたが、その上でここからの本論を読んでください。あと一息です。

BS4Kはまだマシなんですが、BS8Kはまるで映画のごとく手間がかかります。カメラはデカくて、下手したら1日1カットも撮れないとかがザラ。ストレージも特殊、編集機も特殊。誰も完成形をイメージできないまま制作するなど、物凄い異常性・不採算性のもとで制作されています。とにかく無駄にコストが掛かるんです。

で、ここからが最大の問題です。百歩譲って大変でも良しとしましょう。BS4Kも8Kも地上波の2K解像度放送へのダウンコンバートが実質できないから、露出の機会が全然無いんですよ。

専門的に言いますと、BS4Kは4K・HDRという規格で作られています。縮小しても画質的にはあまり問題が無いのですが、色情報を地上デジタル放送では再現できないんです。

黒が潰れ、白が飛び、階調がきちんと表現できないんですよね。それを補ってダウンコンするのってすんごい手間が掛かるんです。最近の大河ドラマの画作りが苦手という方、多いと思いますが4K・HDRで作ったものを窮余の策でダウンコンしてるからなんですよ。

8Kはもっと酷いです。8Kになると、画面が動くと物凄いストレスがあります。なので、振り回したりズームしたりという操作は極力避ける必要があります。必然的に、フィックス(固定画角)がベースとなります。

宝塚などステージものの8K番組があるとしたら、出来るだけ全体を広く写しておくことが求められます。そして「視聴者は見たいように見る」と。

何が問題かって、フィックスばっかりの8K映像って、仮に色や明るさの問題が解決されたとしても、画角が2Kと両立しないんですよ。ハイビジョンでは細部が見えないこともあって、画質の悪い監視カメラを見せられているようになっちゃうんですよね。

だから、視聴者が全国で100人くらいしかいないBS8Kに何千万もコストをかけて番組を作ったとします。でも、それを総合テレビ向けにリメイクすることも出来ないから、本当に100人見ただけで終わりなんですよ。

それで8K制作の現場で何が起きていたかというと、8Kカメラに加えて、通常の2Kハイビジョン撮影用のカメラも入れて総合テレビ用の撮影もすることになっていたんです。物凄い無駄ですよね。

8Kは今、無駄な足掻きを続けています。近年は、BS8K対応のTVも50万近辺まで値下がりしていますが、24個もスピーカーが必要という異常性はなかなか解決されずにきました。そこで、いわゆるサウンドバーのようなもので代替できるようにしようというのです。

いや、「そりゃ耳は基本的に2つだし、音声だって2ch以上録ることは稀なんだから、最初から2chかせいぜい5.1chにしとけよ」って私なんか大学生の頃から思ってたんですけど、ようやく20年前の私にNHKが追いついたみたいです。もはや、NHKが妄想していた8Kの強みは何も残っていませんがね…

大体、MA(整音)においても、誰も24ch全部の音を精密に聞いてる技術スタッフなんていませんでした。全く酷い規格だと思います。映画ならまだしも、TV放送の規格としては明らかにおかしいって、やる前にわかりますよ。

受信料収入拡大のツールとして悪用されてきたBSの歴史を一刻も早く精算すべき

まとめです。BS放送って最初こそ難視聴対策という大義名分があったわけですが、ここ30年はNHKが収入拡大のために悪用してきたツールに過ぎませんでした。

私はギリギリ4K・HDRのテレビを持ってますけど、私が4K番組を作ったときに4Kの視聴環境を持っていた人はスタッフに誰もいませんでしたよ。カメラマンも照明も、CPも誰もBS4Kなんて見たことなかったんです。

8Kに至っては出演者に「これ、誰が見てるんですか?」と問われたCPが「誰も見てないです」って答えてみんな爆笑するくらいのものです。NHK西口玄関入ってすぐのところにある8Kモニターも、午前中は大体放送休止で、まるで怠惰なNHK職員のようです。

そんな無用の長物でも、いざ制作しようとしたら1本あたり1000万以下で作るのはほぼ無理と言えます。それでいて、将来への映像資産、というほどの価値もありません。4K以上は一緒ですよ、ぶっちゃけ。何なら、4Kから綺麗にダウンコンした2Kでも良いです。だって私4K番組の中に、間違って4Kから2Kにダウンコンした素材を入れちゃったことあるんですけど、試写してて誰も気づかなかったですからね。普通の視力の人間が、40インチくらいのモニターで見たらそんなもんなんですよ。

恒例の提言

じゃあどうすれば良いか?究極的には今の総合テレビと教育テレビだけで良いんですよ。解像度も2Kで良い。どうせNHK的に重要な番組は全部総合テレビでやるんだし、Webに配信するのも2Kくらいが丁度良い。

所詮NHKごときが作るテレビ番組に、度を超えて高精細な映像など誰も求めていません。私は本当に4K・HDRの番組作ってて辛かったですよ。メディア(CFast)は20分ごとに変えなきゃいけなくて大昔のベーカムのようだし、バックアップは大変だし、編集してても完成形の色がわからんし、グレーディングにもクソ時間が掛かるし、2Kの地デジ版と編集が両立しない箇所があったりするし…

でも、何より一番辛かったのは、「こんなん作っても誰も見ねえよ」っていう徒労感と、イコール受信料を無駄遣いしている事の罪悪感でした。

BS4Kと8Kは絶対に即刻停波すべきです。今すぐ損切りすべきですよ。

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  • 52本

コメント

3
moyashi
moyashi

今や、NHK BSPとNHK BS4Kがほぼ同じ番組を流していることがほとんどです(民放BS4Kも同様)。8Kはどれだけ個人で視聴している人がいるのでしょうね。NHK支局と家電店でしか見たことがありません。

家電メーカーとテレビ局が組んで東京五輪パラで大々的に盛り上げようとしていたようですが、完全に読みを誤っています。ブラウン管のアナログ放送から2Kテレビに移行して、多くの視聴者はそれに満足し、それ以上の画質は望んでいないと思います。それに、ネットでの配信やYouTube等が台頭している時代に、どこまで本気で高画質を追求しているのかなぁと。
(T ^ T)

コメント誠にありがとうございます

民放のBS4Kで、525時代のSD画質のドラマ再放送をしているのよりはマシかもしれませんがNHKも酷いですよね

BS4Kへの予算も急速に縮小していますので、そのうちNHKもアプコンだらけになるかもしれません

仰る通り8Kは私も局内でしか見たことありませんが、解像度が高いだけで決して美しい映像とは言えません

国民の方ではなく、仕様書・カタログスペックだけを見て放送フォーマットを決めたからこんな愚かな事になるのです

はやく通常のHD放送だけに縮小すべきと私は思います

moyashi
moyashi

そう思います。画質ではなく、コンテンツなのですよね。

間違いなく、「マス」メディアの時代は終焉し、「パーソナル」メディアの時代に突入しています。投げ銭をしながら、推しのアイドルや芸人の配信をスマホで見ているのが現状です。放送は文字通り「流しっ放し」なのですが、枠組みを変えて時代に追いつく必要があります。

日本人が専門バカにならないようにするのが、NHK総合の使命です。総合的で定食みたいな番組編成は、視聴率に左右される民放では難しいでしょうから、ここでこそ公共放送の出番です!

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