中華系詐欺集団の全手口 日本人標的も中国の公安当局者「もっと日本人騙せばいい」|ニフティニュース

アーカイブされた 2026年2月16日 20:13:20 UTC
「もっと日本人を騙せばいい」中国公安の非常識…日本の高校生を食い物にする中華系詐欺集団の全手口

中華系詐欺集団の全手口 日本人標的も中国の公安当局者「もっと日本人騙せばいい」

2026年02月16日 20時55分 PRESIDENT Online

記事まとめ

  • 東南アジアを拠点とする中国系詐欺組織が、日本人を標的に犯行を拡大させている
  • 2025年2月には、特殊詐欺に加担させられていた日本人の高校生二人が、タイ当局に保護
  • 日本人が標的になっていることに、中国の公安当局者は、「もっと騙せばいい」と発言も

「もっと日本人を騙せばいい」中国公安の非常識…日本の高校生を食い物にする中華系詐欺集団の全手口

2026年02月16日 18時15分 PRESIDENT Online
「もっと日本人を騙せばいい」中国公安の非常識…日本の高校生を食い物にする中華系詐欺集団の全手口
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dragos Condrea
中国系詐欺組織が日本人を標的に犯行を拡大させている。さらに日本の高校生が知らぬ間に「騙す側」に組み込まれていた実態が判明した。ジャーナリスト・藤川大樹さんの著書『ルポ特殊詐欺無法地帯』(文春新書)から、東南アジアを拠点とする詐欺組織の手口と構造を紹介する――。■恋愛感情を利用した投資詐欺

盧の詐欺グループは中年の中国人女性に偽の仮想通貨(暗号資産)投資を持ちかけ、金をだまし取っていた。数週間かけて恋愛感情を持たせ、信頼を得る手口が豚の肥育に似ていることから「Pig Butchering Scam(豚の食肉解体詐欺)」と呼ばれている。

詐欺師たちは約千五百台ものスマートフォンを使って、中国の通信アプリ、微信(ウィーチャット)で偽物のプロフィルを作成した。プロフィルには盗まれたアカウントや携帯電話番号、写真、動画などが使われた。詐欺用のスマートフォンはiPhoneが多く、組織内連絡用は主に中国大手の小米科技(シャオミ)の機種だった。

主なターゲットは三十歳から五十歳の女性で、既婚者や離婚経験者だった。

盧はその理由を「三十歳未満は経済的に(仮想通貨投資するだけの)余裕がなく、五十歳以上はアプリをインストールすることができない。また、既婚者は不貞行為を疑われるのを恐れ、なかなか警察や家族に相談できないため狙われていた」と解説する。

詐欺師は微信でターゲットに友達リクエストを送り、返信があった被害者と数週間かけて親密な関係を築く。やりとりしながら配偶者の有無や出生地、資産状況など相手の個人情報を収集した上で、自身の「豊かな生活」が、仮想通貨への投資収益で成り立っていることを伝え、偽の仮想通貨投資サイトへと誘導する。

■最初の利益はエサにすぎない

詐欺師はまず千四百元(約二万八千円)〜三千五百元(約七万円)ほどの少額を、偽の仮想通貨投資サイトに入金するよう促す。

「最初は利益が出るようになっており、被害者はこの時点では利益を含めて全額を引き出すことができます。その後、大口取引に誘い込み、被害者が利益を引き出そうとすると、口座が凍結されます。アプリには『取引はマネーロンダリング(資金洗浄)と判断された。保証金が支払われない限り口座は凍結される』『利益に対し所得税を支払う必要がある』などのメッセージが表示され、さらなる追加資金を要求するのです」

このグループは二〇二二年七月から十一月までの五カ月間で、二百十四人の被害者から日本円にして七億円以上をだまし取ったという。

詐欺グループが被害者からだまし取った金は、瞬く間にマネーロンダリング・ネットワークに吸い込まれ、消えていく。被害者がしばらくして詐欺に気づき、銀行や警察に通報しても、多くの場合は手遅れだ。

複雑なマネーロンダリングの仕組みを追った米紙ニューヨーク・タイムズの取材チームは「マネーロンダリング業者は銀行強盗が逃走する際の運転手と同様、犯罪者にとって不可欠な存在だ。彼らがいなければ、戦利品は生まれない」と表現した。

■数時間で消える詐取金の行方

詐欺グループは、仮想通貨投資詐欺や国際ロマンス詐欺でだまし取った金を、「運び屋」と呼ばれる個人やペーパーカンパニーが管理する銀行口座や仮想通貨ウォレットに振り込ませる。運び屋は詐取金を別の口座へ移動させ、最終的に仮想通貨へ変換。それを「仲介人」へ送り、仲介人が取り分を抜いた後、数時間以内に、すっかり洗浄された金が詐欺グループに届けられる仕組みだ。

詐欺グループはTelegramベースの「闇の取引市場」を通じて、世界中に運び屋のネットワークを抱える仲介人を探す。仲介人は「取引」を始める前に、プラットフォーマーが開設するエスクロー口座に資金を預け入れなければならない。もし運び屋が詐取金を持ち逃げした場合は、この口座に預け入れた保証金が没収され、詐欺グループに渡されるという(※1)。

特殊詐欺向けの取引市場を提供していたプラットフォーマーの一つが、カンボジアに拠点を置く金融コングロマリット「フイワン・グループ(Huione Group)」の一部門「フイワン・ギャランティー(Huione Guarantee)」だった。フイワン・グループ傘下には、カンボジアのフン・マネット首相のいとこが取締役を務める会社もあるとされる。

■いたちごっこは続く

フイワン・ギャランティーの取引市場では、マネーロンダリング・サービスや盗まれた個人データ、拷問器具など特殊詐欺に必要なものが販売されていた。同社は当初、取引市場で売買されるサービス・物品には「一切の責任を負わない」と表明していたが、後に「人身売買」「銃器」「テロリズム」に関連するものを含む特定の商取引を禁止する、と変更した(※2)。

米財務省は二〇二五年十月、フイワン・グループが東南アジアを拠点とする仮想通貨投資詐欺や、北朝鮮による仮想通貨窃取の収益を洗浄したとして、米国の金融システムから排除すると発表した(※3)。

ただ、こうした闇の取引市場を提供しているのはフイワンだけではない。中国人のITエンジニアは「フイワン・ギャランティーのプラットフォームを別の会社が買収したと聞きました。それに、この分野には他にも小規模なプレイヤーがいます」と言い、「Tudou」や「JinBei」などいくつかのプラットフォームの名前を挙げた。

当局の対応は後手に回り、いたちごっこが続いているのが現状だ。

■愛知の高校生が知らぬ間に「騙す側」に

中国系犯罪組織の魔の手は日本人にも伸び始めている。

二〇二五年二月、メーソートで日本人の高校生二人がタイ当局に保護されたことが明るみに出た。未成年の少年がタイとミャンマーの国境地帯で特殊詐欺に加担させられていたという事実は日本社会にも衝撃を与えた。

二人のうち一人は愛知県在住の男子高校生だった。不登校だった高校生は二〇二四年十二月、「バーベキューに行ってくる」と家族に言い残し、自宅を出た。インターネットで「技能を伸ばせる仕事がある」と誘われ、パスポートを用意した上で、空路でタイに入国。かけ子などの勧誘を行う「リクルーター」の引率でミャンマーへ連れて行かれた。

高校生は父親に助けを求めるメッセージとともに、自分の居場所を知らせる位置情報を密かに送っていた。高校生が保護された後、日本の同僚記者がつかんだ情報を頼りに現地へ向かうと、カイン州の街ミャワディから南に七十キロほど離れた「凱旋園区」と呼ばれる場所に行き着いた。

国境を流れる小さな川を挟み、対岸にカイン州を望むタイ・ポップラ郡ワーレー地区。位置情報近くの国境ゲートへ足を運ぶと、地元住民らが川にかかった小さな木の橋を渡り、自由に国境を越えて行き来していた。

非公式の国境ポイントである。橋のたもとでは自動小銃を構えた三人のタイ軍兵士が目を光らせていた。外国人の往来は認められていないが、ダメ元で「ミャンマー側でお土産を買って帰りたい。すぐに戻るから渡らせてほしい」と交渉すると、カメラやスマートフォンをタイ側へ置いていくなら、という条件で許された。

■数メートルの橋の向こうは犯罪拠点

わずか数メートルの小さな橋を渡ると、ミャンマー側には、DKBAの詰め所があり、この一帯を実効支配しているのがBGFではなく、DKBAであることがわかった。

国境ポイントの目と鼻の先には、高い塀と有刺鉄線で囲まれたリゾート風の建物群があった。建物の壁には中国の春節(旧正月)の飾り付けとみられる赤い灯籠や対聯(ついれん)があり、「福」や順風満帆を意味する「一帆風順」の文字が読み取れた。

オレンジの屋根の上には、イーロン・マスク率いる米航空宇宙企業、スペースXが提供する衛星インターネットサービス「スターリンク」の受信機とみられる機械が多数備え付けられていた。

国境地帯は通信環境が不安定で、特殊詐欺にスマートフォンやパソコンを多用する犯罪組織は独自のインターネット環境を確保しているとされ、凱旋園区と呼ばれるこの一帯も詐欺拠点であることは一目瞭然だった。

路地の奥に入り口らしき場所があり、こっそりと持ち込んだスマートフォンを向けると、近くにいた男たちが何やら叫び、こちらを指さしているのが見えた。身の危険を感じ、きびすを返した。

■「もっと日本人を騙せばいい」

近くにいたミャンマー人の少女に声をかけると、「あそこはカジノです。ただ、敷地内に入ったことがないので、何があるのかは分かりません」と言葉を濁した。

だが、付近の住民らは時折、詐欺拠点から逃げ出したとみられる人を目にすることがあるという。国境近くで商店を営むタイ人女性は「数カ月に一度、ミャンマー側から逃げて来てタイ軍兵士の詰め所に駆け込む外国人を見かけます」と語った。

高校生が監禁されていた拠点内には「仕事場」のほかレストラン、売春宿があった。中国人の上司からノルマを課せられながら、八人ほどの日本人と警察官を騙(かた)り、日本の家庭に嘘の電話をかける役割を担ったという(※4)。

中国系犯罪組織のターゲットは当初、同胞である中国人が多かったが、最近は欧米人や日本人を狙った詐欺が増えている。

中国政府も自国民が狙われる特殊詐欺の被害拡大に頭を抱えており、ミャンマー国軍やカンボジア政府、タイ政府に取り締まりを強化するよう圧力をかけてきた。

ただ、その標的が自国民でなく、欧米人や日本人となれば話は別だ。中国系犯罪組織はそれを見透かしている。

盧は詐欺拠点から救出された後、中国の公安当局者が口にした言葉が今も脳裏に焼き付いている。「あいつら(詐欺グループ)は、もっと日本人を騙せばいいんだ」

1 “The Scammer’s Manual: How to Launder Money and Get Away With It” The New York Times, 23 March 2025
2 “Huione: the company behind the largest ever illicit online marketplace has launched a stablecoin” Elliptic Research, 14 January 2025
3 “U.S. and U.K. Take Largest Action Ever Targeting Cybercriminal Networks in Southeast Asia” U.S. Department of the Treasury, 14 October 2025
4 「日常逃げたい/付け込まれ」『中日新聞』2025年2月26日朝刊


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藤川 大樹(ふじかわ・ひろき)
東京新聞記者
1980年、静岡県静岡市生まれ。東京外国語大学外国語学部卒業。2004年、中日新聞社(東京新聞)入社。経済部、社会部、バンコク支局などを経て、現在は国際部デスク兼論説委員。2019年に「税を追う」取材チームで「日本ジャーナリスト会議(JCJ)」大賞を受賞。
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(東京新聞記者 藤川 大樹)
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