「バレないと思った」老人ホームで35人分を無断投票、不在者投票の悪用で有罪判決…大阪地裁
●「当選させなきゃいけないのかな…」
弁護人の被告人質問では、“政治”との関わりが問われた。これまでの選挙活動や特定の宗教との関係について、被告人はいずれも否定した。 会社が応援している候補者がいて、不在者投票の説明を受ける中で、「不正をしてもバレないのではないか」「当選させなきゃいけないのかな」と思ったという。 弁護人:会社から悪用しろと指示されたり、それを匂わせるようなことは? 被告人:ありませんでした。 弁護人:出世したいと思い、会社の意向に忖度したという思いは? 被告人:そうではありません。選挙の翌月には転職先も決まっていたので。 弁護人:ではどうして? 被告人:会社が応援している人がいて、不在者投票の話もあったので、当選させなきゃいけないのかなと思い…。 あくまで自分で判断したという。検察官はこの経緯を「突飛な行動」などと評した。
●再犯を防ぐために何が必要か
被告人は公判で、何度も「バレないと思った」という言葉を口にした。捜査機関が現れたときも「なんで来たんだろう」と思ったという。 しかし、取り調べで大量の資料を目にして初めて、ことの重大さを認識した。35票分の不正を立証するため、捜査にどれほどの労力が費やされたのか、想像に難くない。 現在、被告人は別の介護施設でヘルパーとして勤務している。意思表示が難しい利用者と日々接する中で、自らの行為がいかに尊厳を無視したものだったか反省しているという。 不在者投票は本来、投票の機会を広げるための制度だ。再発防止のための管理強化は必要だが、それは投票機会の制限につながってほしくない。
●判決にこめられた“5年”の意味
判決は拘禁刑1年6カ月(求刑:同じ)、執行猶予5年。動機に汲む点はなく、選挙の公正を害する悪質な犯行であると厳しく非難された。 注目されたのは、執行猶予5年という期間の長さだ。裁判官は法廷で理由に触れることはなかったが、検察官が求刑時、執行猶予期間を5年とすべきと述べていた。 一部の選挙犯罪では、罰金刑でも5年間の公民権停止が科される。執行猶予付き判決の場合、その満了までが停止期間となる。そのため、被告人の執行猶予が5年未満だと、罰金刑よりも短くなり、不均衡が生じる──という理屈だ。 被告人はこの5年間、自らの一票の重みをどのように受け止めることになるのだろうか。
弁護士ドットコムニュース編集部