「カッパのものまねが面白いCGクリエイターがいる」
その話を聞いたのは、他社の知り合いのクリエイターからだった。
まだ若いのに頭頂部がややザビエルになりつつあるその方は、私の知り合いの上司にあたる人で、休憩時間などに“カッパのものまね”でチームを爆笑の渦に巻き込んでいるらしい。
その芸は、誰が見ても何度見ても抱腹絶倒だという。
私はその話を聞き、いつかぜひ拝見したいと思っていた。
そんな折、その会社へ営業を兼ねて挨拶に伺う機会があった。
部下と二人で会議室に通されて待っていると、役員の方と現場リーダーの方が現れた。
その現場リーダーを見て、一目でわかった。
……あのカッパの人だ。頭頂部がかなりザビエルだ。
名刺交換と挨拶を交わし、会社紹介などをしていたが、正直ほとんど頭に入ってこない。
なにしろ、噂のカッパが目の前にいるのだ。
会談が終わり、互いに退室しようとしたそのとき。
この機会を逃せば、もう二度と見られないかもしれない。
そう思った瞬間、私は口走っていた。
「あの……カッパのものまねをしていただけませんか?」
場が凍りつく。
カッパは一瞬固まり、「えっ?」と言った。
そして「……えっと、どういうことでしょうか?」
私はしどろもどろになりながら、
「実は御社の○○さんと知り合いで……いろいろお話を聞いていまして……」
するとカッパは苦笑いを浮かべ、
「ああ、そういうことですか……まあ、それは……また今度……」
そうして、この話題は静かに流された。
帰りのバスの中で、私は我に返り、部下に確認した。
「俺、営業先の初対面の人にカッパのものまねしろって言ったよな?」
「言いました」
「どう思った?」
「イカれてるって思いました」
「……そうだよな」
バスの中で、その部下とはそれ以上会話をしなかった。
そして、それっきり――
その会社と仕事をすることはなく、あのカッパとも二度と会うことはなかった。