【3/20 キミセカ11】 君と灰になるまで 【冒頭サンプル】
2026年03月20日(東京)HARU COMIC CITY 35内で開催される『キミと彩るセカイ 11』にて頒布予定
いちさき騎士パロ小説本のサンプルです。
※注意事項は必ずお読みください
⬇️現在下記フォームに部数アンケート実施中
ご協力お願いします!
https://forms.gle/PigDPM3Z25kL6qQi8
後日BOOTHでも頒布予定
【内容】
A6 / 218p / 1000円 ブックカバー使用
新規書き下ろしの長編小説
・徒花
・残影
・君と灰になるまで
※注意※
・キャラおよびモブの死亡描写あり
・流血表現、自傷行為あり
・一歌と咲希以外の登場人物もよく喋る
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「後悔なんて、するわけがないよ」
薄暗い洞窟の中、少女の掠れた声が静かに響いた。深く吸い込んだ冷たい空気が肺を満たし、吐き出すように激しく咳き込めば喉に焼けるような痛みが走る。細切れの息を吐きながら口元を押さえていた手を見遣れば、零れたのは乾いた笑い声がひとつだけ。少女は、虚しい声を響かせながらゆっくりと壁に背を預けて天を仰いだ。
しかし、いくら目を細めて見たところで満天の星空が拝めるはずもない。少女の眼前に広がるのは、ただただ無機質な岩壁だけ。遠くに霞んで見えたそれに向かって赤く汚れた手を伸ばしてみるけれど、その手で掴めたものなど何ひとつなくて。
「己の選択が間違っていたのではないかと、本当に疑いもしないのか?」
伸ばした手を力無く下ろし、声がした方へ視線だけを向けた。見つめた先にいたのは、男でもなければ女でもない。もっと言えば、人間の力など到底及ぶはずのないそれが黄金色の瞳で少女を見つめている。いや、正確にはそんな気がしただけだ。声の主を見つめ返した青灰色の瞳では、もはやその輪郭を正確に捉えることなどできていなかったのだから。
自身の血で服や手を汚し、それらを拭う気力すら残されておらず、息を吸って吐くだけで強烈な痛みに襲われて苦痛に顔を歪める。それにもかかわらず、少女はまだ霞んだ青灰色の瞳の中に希望をひとつだけ灯していて。ゆっくり目を閉じたかと思えば小さく首を横に振り、そして変わらない輝きを見せつけて。
「私、は……何回だって、同じ道を選ぶ、から……」
にこり、と柔らかい笑みを浮かべた。もうすぐ後ろまで絶対的な恐怖が迫って来ている。それは少女自身が一番よくわかっていることだ。それでもなお、満足そうに微笑んだその心境を理解できる者は誰一人としていないのだろう。
肩にも届かない短い黒髪がはらりと流れ落ちる。それを耳にかけ直すだけの力さえ、少女にはもう残されていない。ただ、僅かに目を細めただけ。その耳元では海色のピアスが控えめに揺れていた。