「なんで通勤手当に社会保険料がかかるんですか?」
新人くんが、真顔で聞いてきた。
まるで、社会のバグを見つけたみたいな顔だった
「立て替えた交通費を
返してもらってるだけですよね…?」
その瞬間、言葉に詰まった。
「同期は通勤に15分。
僕は1時間半。正直、これで、
僕の方が取られる金額多いっておかしいです…。」
確かにそうだ。
満員電車に押し込まれて、
朝から体力を削られて、
やっと会社にたどり着く。
そのために払った金を、
後から返してもらってるだけ。
なのに明細を見ると、
その通勤手当にもきっちり社会保険料が引かれている。
「これって…
会社に来るためのコストのはずです。」
彼は、まだ社会の仕組みに
慣れてない顔で言う。
「来なきゃ働けないのに、
来るためのお金まで収入扱いなんですか?」
私は何も言えなかった。
昔、同じ明細を見て
同じ疑問を抱いたことがある。
でもその違和感は、
いつの間にか仕方ないに変わってた。
新人くんはぽつりと続けた。
「会社に来るだけで、
すでに損してる気がするんですけど」
その一言は、かなり重かった。
会社に来るための時間は無給。
来るための体力は自己責任。
来るための金は所得。
当たり前だと思ってた。
でもよく考えたら、
通勤って仕事の一部じゃないのか。
新人のその疑問は、
制度批判でも愚痴でもなかった。
ただ、まだ慣れていないからこそ
見える違和感。
本当に怖いのは制度じゃない。
疑問を持たなくなった自分かもしれない。