ミドリムシを活用したバイオベンチャー企業、ユーグレナの出雲充社長が11日までに産経新聞のインタビューに応じた。栄養素が豊富で植物と動物の特徴を併せ持つミドリムシには、食糧不足や地球温暖化などの課題を解決する力があると説明。「持続可能な代替航空燃料(SAF)」は、国内空港発着の国際線で給油する燃料の1割に使用することが2030年に義務化される。ミドリムシなどを原料としたSAFの商用化に向けては、「30年代前半に商業プラントを完成させる」と目標を語った。主なやり取りは次の通り。
動物と植物の特徴併せ持つ
--ミドリムシの特徴は
「光合成をするのに自分でも動けるという植物と動物の特徴を併せ持ったスーパー微生物。栄養の観点でも価値が高く、59種類の栄養素を一度に摂取できる」
--活用の仕方は
「まず食糧や栄養の不足問題。これまでバングラデシュの子供たちにミドリムシを使ったクッキーを2千万食届けてきた。日本人も栄養バランスは悪く、睡眠の質が落ちており、開発した食品や飲料などは効果がある。そのほか、スキンケア商品や二酸化炭素の排出量が少ないバイオ燃料など、人と地球を健康にする事業を展開している」
--SAF事業への参入理由は
「植物と動物の両方の遺伝子を持つミドリムシは、SAFなどのバイオ燃料に適した成分の油を体内に生成する。その油を原料に最新のバイオ燃料製法を用いると、従来の製法だと発生してしまう不要な副産物なども出ず、ジェット燃料に近い高品質のバイオ燃料を製造できることが分かった。これはかなりの優位性であり、参入を決めた」
--現時点でSAFは廃食油由来のものが主流だ
「30年から燃料の1割をSAFにしないと日本で国際線は飛ばせなくなる。必要量は171万キロリットルだが、国内の廃食油は全部で50万トンに満たない上、多くが家畜の飼料などに使われていて全然足りない」
30年めどに羽田空港に供給
--ミドリムシを原料とするSAFの現状は
「(販売価格が)1リットルにつき1万円だったら供給可能だ。政府専用機にも使われたし、安全性や品質に問題はない。あとはどれだけ価格を下げられるか。30年を目標に羽田空港に5万キロリットルを供給する契約を結んだ。それまでに安定供給できる信頼性、一定規模を納品できる体力と実績を築かなければならない」
--欧州連合(EU)では今年からSAFの一部使用義務化が始まった。国産の必要性をどう考える
「当社も当面は安価な廃食油のSAFをつくって時間稼ぎをしつつ、コスト削減などミドリムシ由来の技術を磨く。石油と同様にSAFを輸入に頼ることになれば、日本は高値で買わされることになるだろう」
--一方で米トランプ政権が脱炭素化に逆行の動きをみせている
「トランプ氏は大切にしている石油産業が脱炭素を進める手段としてのバイオ燃料には前向きだ。それに米国内での山火事やハリケーンの大型化などは温暖化が要因だと理解され、損害保険会社や支持層の農家らへの影響も大きくなってきている。脱炭素を『やめる』とはならないだろう」
--「日本は国際競争力で世界一に返り咲く」と考える理由は
「日本でミレニアル世代やZ世代ら、生まれたときからデジタル機器が身近な『デジタルネーティブ』の世代が、生産年齢人口(15~64歳)の過半数を占めるのが25年だ。こうなるとDX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に進む。少子化で他の主要国から遅れたが、効率性で同じ土俵に立てば日本人の勤勉さも相まり、5年間で日本が世界一に戻るはずだ」
出雲充
いずも・みつる 広島県生まれ。東京大農卒。2002年、東京三菱(現三菱UFJ)銀行入行。05年8月にユーグレナ創業、現職に就任。内閣官房知的財産戦略本部の調査会委員なども務めた。45歳。
編集後記
ユーグレナといえば国内初の完全オンライン方式による株主総会の開催が記憶に新しい。運営面で懸念の声はあったが、地方の株主も参加が容易だと好評を博したという。「良いか悪いかではなく、新しいことをやることに価値がある」と断言。大学の秋入学や選択的夫婦別姓なども賛成だ。その心とは。「生物は変化を続けないと死んでしまう。変化こそ生物の本質」。生物の専門家らしい興味深い回答に考えさせられた。(福田涼太郎)