ウクライナ侵攻から4年 ロシアが望む「停戦」は「日本占領型」か
みなさん、こんにちは。ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した2022年2月24日から、まもなく4年になります。
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振り返れば、第2次世界大戦の中でも最も過酷な戦場とされる独ソ戦は、約3年11カ月続きました。今回の戦争は、すでにそれを上回っています。
プーチン大統領は開戦当初、ここまで長引くことをまったく予期していなかったでしょう。
独ソ戦は、1941年6月22日に、ナチスドイツ軍がソ連に電撃的な侵攻を開始したことで始まり、45年5月にソ連軍がベルリンを陥落させて、終結に至りました。ドイツ側は8日(モスクワ時間では9日)に、降伏文書に署名しました。
その間の死者は、双方合わせて約3千万人にも達したと見られています。1日あたり約2万人の命が失われたことになります。私たちが想像できる範囲を超える、人類史的に刻まれる惨事でした。
ロシアには、今も悲劇の記憶が刻まれているはずです。そんなロシアが今回の戦争を始めてしまったという事実に、やりきれない思いがぬぐえません。
トランプ米大統領は業を煮やしたのか、6月までに戦争を終わらせる考えをロシアとウクライナに伝えたといいます。
しかし、実現の見通しはまったく立っていません。
初の3カ国協議、ロシア側に「本気」の気配
ただロシアの姿勢に、少しだけ変化が出てきたようにも感じられます。
その一つは、今回の戦争が始まって、米国、ロシア、ウクライナによる初の3カ国協議が実現したことです。
特に注目されるのは、参加者の顔ぶれです。アラブ首長国連邦(UAE)で1月下旬と2月初めに行われた2回の会合に、ロシアからコスチュコフ軍参謀本部情報総局長が参加したのです。
参謀本部情報総局は一般に「GRU」という略称で知られる、ロシア軍の情報・工作部門です。ソ連時代から、国家保安委員会(KGB)と並ぶ情報機関として恐れられていました。
2018年に英国で起きた神経毒「ノビチョク」を使った暗殺未遂事件をはじめとして、GRUは数々の秘密工作にかかわってきたとみられています。プーチン氏の盟友、故プリゴジン氏が率いた民間軍事会社「ワグネル」との密接な関係でも知られています。
そんな機関のトップが公の場に姿を現すのは、異例のことです。
ここに、私はロシアの「本気」の気配を感じるのです。長くなりすぎた戦争にできれば決着をつけたいのではないか、と。
米を味方にしたいロシア、停戦へ楽観は禁物
ただ仮にロシアが停戦を探っているとしても、楽観は禁物です。
これまでも指摘してきたように、ロシアは、トランプ氏の再登場を好機ととらえています。米国を味方につけて、米ロでウクライナに圧力をかける構図に持ち込もうとしているのです。
米国のルビオ国務長官は1月28日に、ウクライナ東部のドネツク州の帰属の問題が、和平交渉の最も大きな障害だという見解を示しました。
ウクライナ側が重視する、停戦後にロシアによる再侵攻を防ぐための米欧からの「安全の保証」の問題については、ほぼ決着しているという考えも語っています。
ウクライナがドネツク州を譲りさえすれば停戦できるといった口ぶりです。
しかし、問題はそう簡単ではありません。そのことは、ロシア自身がはっきりと指摘しています。ウシャコフ大統領補佐官は1月30日に、ルビオ氏が言うように「領土問題を除いてすべてが合意されている」のかと問われて「私はそうは思わない」と断言しました。
領土問題、つまりどこに停戦ラインを引くのかというのは、確かに極めて重要です。しかし今回の戦争の場合、もっと大きな困難が横たわっています。
何が残された問題なのかについて、ウシャコフ氏は語りませんでした。しかし、これまでの交渉経緯から、ロシアの考えは明らかです。
ロシア側の「停戦」、朝鮮半島の例とは違う?
以下、わかりやすく説明してみましょう。
私たちが普通に考える「停戦」というのは、敵対する両者の間に境界線を定めて、お互いに境界線の向こう側には手や口を出さないと約束することです。
過去の実例としては、北朝鮮と韓国の関係がわかりやすいでしょう。
1950年6月に始まった朝鮮戦争では、3年後の53年7月に休戦協定が結ばれました。
北緯38度線付近に引かれた停戦ラインは「軍事境界線」と呼ばれています。
戦争は今も、正式には終結していません。それでも協定締結後、境界線の北と南では、まったく別々に国造りが進みました。
安全保障面では、韓国は米国と同盟関係を結んでいます。一方北朝鮮は、米国本土を攻撃できるような核・ミサイル開発を進めています。
元々は同じ民族ですが、停戦後70年以上の時間を経て、国のあり方も国民性も異なる、別々の国が世界地図上に出現したのです。
しかしロシアは「線を引いた後は、お互い好き勝手にやりましょう」という停戦は望んでいません。
これまでロシアは、停戦条件として、ウクライナに対して領土の割譲だけではなく、次のような要求を突きつけてきました。
・軍備を大幅に制限する
・憲法に書かれた北大西洋条約機構(NATO)加盟の目標を取り下げる
・外国軍の駐留を認めない
・反ロシア的な政党や組織を解散させる
これは、朝鮮半島タイプの停戦とはまったく異なります。
第2次大戦後の日本が実例
実はロシアが求める形の停戦にも、よく似た実例が過去にあります。それは、第2次大戦後の日本です。
ポツダム宣言を受諾して無条件降伏した日本を占領・統治したのは連合国軍総司令部(GHQ)でした。占領下の日本では、それまでの体制を根幹から変える、一連の政策が進められました。
・日本軍の解体と武装解除
・戦犯を対象とした東京裁判
・軍国主義者や戦争協力者の公職からの追放
・新しい憲法の制定
こうして見ると、ロシアのウクライナに対する要求に通じるようにも見える内容が、いくつもあります。
要するに、ロシアが望む「停戦」とは、朝鮮半島型ではなく、日本占領型なのです。もちろんロシアが占領者として振る舞うつもりです。
日本についてプーチン氏は、沖縄の基地問題などを挙げて、日本は米国に逆らえないのではないか、と指摘したことがあります。
そんな日本のあり方を批判しているプーチン氏ですが、自分の方こそ、ウクライナをロシアに逆らえない国にしたいのです。
プーチン氏は今のところ、力でそうした条件をウクライナに押しつけようとしています。しかしそれが100%通ることはまずないでしょう。
しかし、ロシアがいずれかの段階で妥協して条件闘争に移るのか、あくまで戦い続けるのか。それを決められるのはプーチン氏だけです。
その判断に大きく影響する要素が2点あります。
1点目は、トランプ氏の姿勢です。トランプ氏が目先の停戦を優先して、ウクライナに対してロシアの要求をのむよう求めるのであれば、プーチン氏はトランプ氏を怒らせないためにも、戦闘を停止するかもしれません。
2点目は、戦場の現実です。ロシア軍がまだまだ前進を続けられるとプーチン氏が考えるなら、妥協を探る必要性が薄れます。
いずれも、ウクライナにとっては受け入れがたいシナリオでしょう。
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- 【視点】
プーチン政権が表向き掲げていないので、記事でも触れていないが、現実にはウクライナのNATO加盟と同じくらいロシアが拒絶することになりそうなのが、ウクライナのEU加盟である。 率直に私見を申し上げれば、ロシアはウクライナのEU加盟を何としても挫こうとすると思う。 記事にあるとおり、ロシアの目的は端的に言えばウクライナを実質的に支配下に置くことであろう。他方、ウクライナのEU加盟は、ウクライナという国のガバナンスを欧州スタンダードに変えていくことを意味し、ロシアの目的と根本的に相容れない。 では、現時点で何ゆえにロシアがウクライナのEU加盟に表立って反対していないかというと、NATOの場合には軍事同盟なのでロシアにとっての脅威云々と主張しやすいのに対し、EUは経済や制度を旨とする統合枠組みなので、「ロシアにとっての脅威だ」と騒ぎ立てにくいという、それだけの違いだと、個人的には認識している。
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- 【視点】
ウクライナ戦争の解決・停戦交渉で、ネックになっているのが領土問題といわれています。 上記の記事が触れているように、ロシアはウクライナ・支援国に対しほかにも様々な要求を出しています。 ただ、ロシアがウクライナに対し「日本占領型」を求めているという解説を読んで、読者の中には漠然とした「それほど悪くないのでは」という印象を持つ方が出てくるのではないでしょうか。 現在のウクライナの状況は、戦後日本とは決定的に異なるように思います。 日本は降伏後に占領されましたが、ウクライナは今まさに侵攻を受け、戦闘が続いている最中です。これを日本に置き換えて想像するなら、「米国が日本本土に侵攻し、北海道や九州の一部を占領しながら、なお戦闘を継続している」「その状況下で停戦交渉が行われ、占領地の割譲が停戦の条件として突きつけられている」という状況に相当するでしょう。 「侵攻され、今も領土を奪われ続けていること」、そして「その領土喪失を認めることが停戦交渉の入口となっていること」。これを受け入れることが、いかに困難か、実感できるのではないでしょうか。
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