単位が取れないのなぜ? 大学の知能検査で知った「自分」 困りごとの背景に発達障害
特性だけでは診断されない
発達障害のある大学生は増えている。日本学生支援機構によると、24年度に大学、短大、高等専門学校に在籍する発達障害のある学生は1万4666人。10年前の約5倍に増加した。 国は乳幼児健診などを通して子どもの発達障害の早期発見、早期支援を進めている。それでも「大学進学という環境の変化で困りごとが生じ、知能検査をきっかけに発達障害の特性があると分かるケースは少なくない」と、発達支援に詳しい中島さんは指摘する。 24年度にCSルームで支援した47人のうち、大学入学後に診断を受けた人は3~4割を占める。生まれつき特性があっても、社会生活に支障がなければ診断されないという診断基準が関係している。学力が高いことで、高校までは表面化しにくい人もいる。 中には知能検査の提案を断る学生もいる。「発達障害かもしれないとうすうす思っているけれど、触れられたくない」という場合が多いという。「それは当然の権利。本人の意向を大切にしている」と中島さんは話す。検査後に、医師の診断を受けるかどうかも本人やその親次第だ。
知能・心理検査活用の動き
大学の支援の基本は心理職らが面談で相談を受けることだが、知能検査や心理検査を併せて活用する大学もある。 筑波大の障害学生支援部署は、在学中の学生なら誰でも検査を受けられることを、ホームページなどで案内している。 ウェクスラー式をはじめ、発達障害の傾向、職業適性などを調べる心理検査を提供する。費用はいずれも無料だ。事業責任者の佐々木銀河准教授(障害科学)は「パンク状態になるくらい申し込みが来ている」と語る。 目的は、発達障害の診断につなげることではない。「全ての学生に多様な発達特性がある」という考え方から、医師の診断を問わずに支援を始めることだ。 ただウェクスラー式を実施できるのは、特定の資格を持つなどした専門職に限られる。成蹊大の岩田淳子特別任用教授(臨床心理学)は「知能検査は継続的なサポートがセットでないと結果が独り歩きするリスクがある。発達障害のある大学生が可視化されるようになり相談対応が多忙になる中、多くの大学では提供が難しいのが現状だ」と語る。 一方、京都大の障害学生支援部門では、職業適性や読み書きの能力を調べる4種の心理検査を提供する。ワークシートを使って日常の困りごとを整理するセミナーも開き、「自己理解」を後押しする。 自己理解の持つ意味はとりわけ大きい。発達障害は、同じ診断名でも状態は多様だ。特性がどう困りごとにつながっているのか、自分でも分からないことが多い。合わない選択で困りごとが深刻化し、うつ病など2次障害につながることがある。 部門長の村田淳准教授(福祉社会学)は「どんな環境でバリアーが生じ、どうすれば少しでもうまく対処できるのか。本人が言語化できるように支援していくことが、最後の教育機関である大学には求められる」と強調する。