年明け早々、東京・豊洲市場でのマグロの初セリで6年ぶりに落札を果たし、久方ぶりに脚光を浴びた寿司チェーン「すしざんまい」を展開する喜代村の社長・木村清氏。落札額は史上最高値となる5億1030万円となった。
「多くの人に縁起の良いマグロを食べてもらって元気になってもらいたい」――満面の笑顔でメディアの取材に応じる木村氏。ところが、その表情のウラには“焦り”もある。それが、すしざんまいを運営する株式会社喜代村の経営不振だ。
コロナ禍前の2019年の売上高が296億円だったのに対して、直近2024年は181億円。店舗数もピークの62店舗から45店舗(2026年1月現在)へと減少している。「5億円マグロの宣伝効果で業績回復を目指す」といったあたりが、同社の本音だろう。
だが、ご存じの通り、寿司業界は高級店から大衆店、回転寿司チェーンら入り乱れ、かつてないほど群雄割拠の様相を呈している。はたして一時は「マグロ大王」たる地位を欲しいままにした木村氏ならびにすしざんまいに“再浮上”の目はあるのか。業界に詳しい回転寿司評論家の米川伸生氏が解説する。
“中途半端感”がつきまとう「すしざんまい」
回転寿司業界の話をさせていただく。この業界は大きく3種類に分類される。大手チェーンと鮮魚を職人が捌いて握るグルメ系、そして地方にありがちな凡庸な回転寿司店。
このうち、ご存知のように大手チェーンは相変わらず好調をキープ(たとえばスシローの場合、コロナ禍前の19年の売上高1990億円から24年は3611億円に)している。また、インバウンド需要を含めて観光客にも人気の高級グルメ回転寿司も、一店舗あたりの売上では大手チェーンを超える店も少なくないなど着実に勢力を伸ばしている。
一方、この狭間にあるどっちつかずの昔ながらの店というのがどんどんと淘汰されている状況だ。前回、寿司業界でも大衆寿司店が苦戦していると述べたが、回転寿司にも同じことが言える。中途半端ではダメなのだ。
「すしざんまい」という業態にもこの“中途半端感”がどうしても付きまとう。普通の寿司店という業態である以上(回転寿司業態は築地に2店舗ある)、手軽さでは回転寿司に大きく劣り、本格的という店では高級寿司店に敵うべくもない。あくまでも個人的な感想だが、商品、サービス、ご当地性、オリジナリティを含めて、高級グルメ回転寿司店にもかなりの差をつけられていると感じる。
人気店に共通することは、また行きたくなる店である、ということ。すなわち、「一度行けばいいや」と思われてしまう店は衰退の一途を辿っていく。「すしざんまい」はまさにこのポジションにある。