ノベルスキー

作家・字書きや小説など文字が好きな人のためのMisskeyサーバーです。
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「まんまんちゃんあん」とは
 まんまんちゃんあん、という言葉がある。
 私はこの言葉に非常になじみがあって、まったくもって共通語であると疑っていなかったのであるが、ある時ノベルスキーでこう言われてしまった。

 「出たな、大阪の謎文化」
 
 ええーっ謎文化なんですか、とその時一通り大騒ぎしたことをご存じの方もノベルスキーにはおられるでしょう。もう話の流れの始まりが一体なんだったかは忘れてしまっているけれども、言われた言葉と言った人のことは忘れていない。
 まあ馴染みがないというのなら解説をします。
 
 この「まんまんちゃんあん」という単語について全く知らない人はぜひとも手元のスマートフォンやらなにやらで検索をかけてほしい。今は亡き「大阪弁普及協会」なる団体はこの単語のことを「南無阿弥陀仏様あな尊しの幼児語」と解説していたそうです。なるほどね。全然知らんかったわ。まんまんちゃんあん、きみそういう意味なんやね。一つ賢くなりました。ちなみに大阪弁普及協会なる団体はもうすでにインターネット上のどこにもないそう。諸行無常の響きをこんなことで感じるとは思っていなかった。世知辛いね。
 どういったときに使うかというと、子供が家でお仏壇のりんをならしたあとに手を合わせて言います。「まんまんちゃん、あん!」
 もちろん言っている当人は意味など知りませんしわかりません。ただ「死んだ親類(おおよそ親の祖父母、つまり幼児本人の曽祖父母にあたることが多い)に挨拶をしなさい」と言われて、これが挨拶の作法だとそうするように教えられる。仏壇にはママのおじいちゃんおばあちゃんやそのおとうさんおかあさんがいるから、ちゃんとご挨拶しなさいよ、ってなもんです。だからそこに意味はない。
 おはようございます、こんにちは、こんばんは、さようなら、まんまんちゃんあん。
 これらすべて同じところにある。死者への挨拶はすべて「まんまんちゃんあん」である。オールマイティワード。汎用性高いね。
 ちなみに私は仏飯を備えるときや仏前のお菓子をおさがりしてもらうときによく使っていました、これ。一番飯は仏様のものだから、最初に炊飯器を開けた人間がお供えをする。仏前のお菓子はほしい人がきちんとご挨拶してから持ってくる。そういうものなので。これは単なる私の食いしん坊エピソードです。
 ちなみにお墓参りのときにもよく使われます。「あんたちゃんとまんまんちゃんにあんしたの」と。あかんあかんしてへんしてへんと子供たちは墓の前で一列に並んでみんなしかめっ面でおててを合わせてやるわけです。「まんまんちゃん、あん!」

 しかしまあ今となっては自宅に仏壇があるおうちは減っていて、何ならお墓ですら永代供養や墓じまいでなじみのないものになっていってるところも増えてきて。令和生まれの子供世代になると、もうこのあたり文化も継承されることも減ってきているのだろうなあ、とはうっすら思っていました。皆さんの家にはありますか、仏壇。実家にはありますか、実家にもありませんか。ちなみに私の生家には仏壇も神棚もありました。
 ただ、そもそも、これ、この「まんまんちゃんあん」、大阪以外にはなじみのない文化っていうのが衝撃ですよ。というかこれ文化なの。だって私にとっては挨拶と同じものなので。人に会ったらおはようございます。お仏壇にご挨拶まんまんちゃんあん。
 おそらく同世代か、まあ前後しても多少くらいの、しかも物知りなはずのノベルスキーの皆様でもご存じない。なじみがない。なにそれ、初めてきいた! うそやろ、ぜえったいにうそ。だってみんな知ってるもん、やってるもん、と私の内なるキッズが大暴れをしたものの、結局ほとんどの人からの反応は思わしくなく。一部関西に馴染みがあるんだろうなという方からは同意を得られたものの。いやいや絶対に嘘だって大阪だけじゃないって本当に……本当に……たぶん……という気持ちを抱えていたときに、たまたま偶然実家方面に戻り姉二人と会う機会があったので雑談のタネとして話を振ってみました。奇しくもその時の用事は墓参り。

「まんまんちゃんあん、大阪人にしか通じへんって言われたんやけどそんなことある?」
「えー奈良と和歌山の子には普通に通じたけどな、あと尼崎」
「ほな京都の人間だけか知らんのは……」
「それあれやん、昔漫才のネタに使われたから広まったやつやん、せやから京都の人間知らんのとちゃう」
「えっ」

 まさかの解答が得られてしまった。
 なにそれどういうこと、と長姉に詳しく聞いてみると、横山何某だか西川何某だかの芸人が漫才でまんまんちゃんあん、という言葉が出てくるネタをしていた時期があったそう。言葉自体は昔からあるもので、使われていたものではあるものの、その芸人きっかけで広く認知されるようになり、お笑い文化になじみの深い大阪を中心に多くの人間に定着していったのではないか、ということらしい。えっ、思ったより「それっぽい」内容だ。少なくとも私の中ではツッコミどころが見当たらない。納得できちゃう。インターネット上で適当に調べたくらいしかソースがないので割愛するけれども、少なくともインターネット上で雑に調べた限りでは矛盾点もなさそう。ところでなんで知ってるの?

たぶんこの話、真面目に調べるとかなり面白いことになると思うんですよ。そもそもいつ使われ始めたのか。本当はどういう意味なのか。ほかの幼児語と似通った部分はあるのか。本当に芸人が使ったから広く知れ渡るようになったのか。当時の「お笑い」「漫才」への社会的地位。言語がどのように広まり使われ定着するのか。本当にこの言葉は京都にだけは馴染みがないのか。そうであるなら、どうして京都の人間にだけ馴染みがないのか。興味は尽きない。調べるの楽しそう。まあそれよりも「めっちゃ手間暇時間かかりそうだなそんな暇ないや」になっちゃうんですけど。
 ですから、あの、もし、この話に興味を持った方がいたら、そして本当に調べたりするのなら、教えてくれませんか。やるよ、でもいいし、こんな結果になりましたよ、でもいいし。そうしたらお礼に何かきっとおいしいものを送ります。ぜひともよろしくお願いします。
安里·アンリ·縒:blobduck42::Netakunai:@asatoyoru