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"Hypergryph"から学ぶ、発展した課金型コンテンツの長期運営施策と傾向予測

※2023年10月に作成したものを再編してお届けしております。

本noteでは、ユーザーがいかにして課金に辿り着き、リピーターになっていくのかを整理する。また、それらを実現させるためにどのような予測・設計が行われているのかを、ユーザー視点とコンテンツ提供者視点の双方から紹介する。あわせて、「基本プレイ無料+課金型コンテンツ」の現在地と今後について考察する。


前回の振り返り


前回は「長期運営のためのマネタイズ方法」について簡単に触れた。結論は非常にシンプルで、「基本プレイ無料+課金システムは、もはや特殊な形ではなく“当たり前”になっていく」というものだった。


基本プレイ無料モデルの一般化


ロジェ・カイヨワが提唱した「4つの遊び」の整理を踏まえると、この予測はその後の市場動向を見ても大きく外れてはいない。

かつては買い切り型・年次アップデート型が主流だったタイトル、例えば『パワプロ』や『FIFA(現 EA Sports FC)』といった超大型IPですら、基本プレイ無料や継続課金を前提としたモデルへと舵を切り始めている。

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国内、国外を問わず、基本プレイ無料はスタンダードな運営方法になった

国内外を問わず、基本プレイ無料はスタンダードな運営方法となった。一方で、すべてのタイトルが成功しているわけではない。

数年が経過し、大手企業も既存IPを活用しながら買い切り型から基本プレイ無料へ移行してきたが、失敗例も少なくない。(偶然ではあるが、本稿公開時の2025年12月22日には『パワフルプロ野球 栄冠ナイン クロスロード』のサービス終了が告知された)

人気IPであっても躓くほど、ソーシャルゲームの長期運営は難しい。しかし、基本プレイ無料という商法自体は、もはや避けて通れないものになっている。

そんなハードルを越えるためにゲーム運営側はどのような施策を用意すべきなのか?

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そのような状況下で、本稿では最前線を走っていると筆者が考えるHypergryph、および同社の代表作『アークナイツ』を事例として、この問いを整理していく。


Hypergryphとは


Hypergryph(ハイパーグリフ)は、中国・上海に拠点を置くゲーム開発会社である。代表作はタワーディフェンスゲーム『アークナイツ』であり、他にも以下のタイトルを手がけている。

・『エクスアストリス』
・『アークナイツ:エンドフィールド』
・『ポッピュコム』

また、IPのアニメ化など、ゲーム外分野への展開も積極的に行っている。


アークナイツの基本設定


詳細な世界観解説は別稿に譲り、ここでは前提となる要素のみを整理する。

・感染症「鉱石病」が蔓延する世界観
・プレイヤーは製薬会社「ロドス・アイランド」の関係者として行動
・獣人・異種族的なキャラクターデザイン
・惑星「テラ」と資源「オリジニウム」を巡る対立構造

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惑星「テラ」と主人公らを取り巻く「オリジニウム」について

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対立する陣営

重要なのは、アークナイツが比較的ニッチなタワーディフェンスというジャンルでありながら、長期にわたって高い評価と収益を維持している点である。


コンテンツ設計が支えるマネタイズ


アークナイツでは、メインストーリー以外にも多様なコンテンツが展開されている。これらは単なる引き延ばしではなく、「毎日遊び続ける理由」を提供するための設計である。

イベントではコンテンツの充実と同時にガチャに使用するアイテムを配布することで、ユーザーが日課から外してしまう候補になることを防いでいる。

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アークナイツを語る上で外せないのが「基地システム」だ。

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施設アップデートで普段のプレイに効果を還元しつつ、
戦闘や戦術以外の面で楽しむユーザーもサポート

キャラを配置して育成やハウジングに必要な資源を生産、戦闘とは切り離された半放置/半マネジメント要素は後発タイトルにも大きな影響を与えており

・ドールズフロントライン2:エクシリウム
・勝利の女神:NIKKE
・白夜極光

など、多様な作品が明確にこの路線を追従している。


サブコンテンツの充実度


他社の事例として、miHoYoでは定期的なイベント開催に合わせて、別のゲームのエッセンスを取り入れミニゲームとして展開することが多い。

この施策はユーザーにとって新しい刺激になり、飽きが来るのを遅らせられるメリットもあるが、その度にユーザーは新しいルールを理解しないといけないため、学習コストが高くなってしまい、"毎日続けるコンテンツ"としては億劫になりかねない点には注意が必要だ。

そんな中、アークナイツでは基地システム以外にも、ユーザーに対して本筋(ストーリー攻略)以外にも様々な"毎日ログインするべき理由"が用意されている。

・ローグライク形式のモード
・難易度をプレイヤーが自由に調整できるコンテンツ
・明確に"歯応え"を求める高難易度コンテンツ

など、既存システムの再解釈で寿命を伸ばしているのがポイントだ。

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あくまでタワーディフェンスなのがミソ

その他にも、デイリーやウィークリータスクとは別に

・1週間かけてじわじわ進めていく
・一気に消化することも可能

と言った、攻略スピードをユーザーに任せる"マラソン型コンテンツ"が存在する。細かいタスクの消化を積み重ねることで報酬を得られるシステムは、今こそ月間/シーズンパスといった形で浸透しているが、これはそういったパスとも違う報酬形式であることには注意が必要だ。

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ウィークリーイベントとして固定で配布されるガチャに必要なアイテム


イベントの常設化・復刻化


ソーシャルゲームの平均寿命は約2.5年と言われている。リリースから3年が経過したアークナイツは、さらなる施策として過去に開催したイベントをいつでも遊べるような環境づくりを進めた。

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長期/短期イベントの常設化・復刻は

・当時育成が追いついておらず、クリアできなかった
・様々な理由から報酬を取り逃がしてしまった

過去の失敗や後悔に対し、改めて再挑戦の機会を用意することで既存ユーザーのコレクション欲を満たしつつ、新規ユーザーの脱落を防いだり、古参ユーザーとの差を可能な限り縮め"いつ始めても同じ体験"を提供できるような環境を目指していると言えるだろう。

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リリース初期のイベントと、最新イベントのテキスト量について

ソーシャルゲームのイベントは、ただユーザーが時間を潰したり、ガチャのためのゲーム内マネーを得るだけのものでなく、ストーリーやキャラクター/陣営同士の繋がりなどを補強する機会にもなっている。

3年間プレイし続けたユーザーと、今日から始めたばかりのユーザーで体験/できるコンテンツ量に差が出来てしまうことは、Hypergryphが目指すユーザー体験とはほど遠いだろうし、今後のストーリーに張る伏線なども気を遣う必要が出てきてしまう。

それらを解消するのが過去イベントへのアクセス環境というわけだ。このような環境作りはプリコネR原神など、アークナイツと同様にソーシャルゲームの平均寿命を超えたゲームらが続々と取り入れていっており、今後のスタンダードになると予測できる。


石は貯まる。でもガチャは"主役"じゃない


ゲーム側が用意してくれたコンテンツを毎日プレイしていると、それなりに不自由ない程度に、ガチャに必要なアイテムを手に入れられる。アイテムが貯まればガチャを回すというのが一般的な流れかと思うが、アークナイツのマネタイズの主軸は実のところそれだけではない。

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スキン販売という本命


キャラクターや装備に対するスキン販売自体は珍しい事例ではないが、アークナイツでは課金をせずとも、ゲーム内で手に入れた有償アイテムと同等の報酬を利用してスキンの購入をすることができる。

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もちろん、ガチャをベースとしたマネタイズに関して否定するつもりはない。ガチャにはガチャでしか得られないような魅力や、ロジェ・カイヨワが提唱する「4つの遊び」に紐づいた満足感があるのは間違いなく、事実、セールスランキングにも大きく影響する商法の一つである。

ただし、ガチャに依存した商法は諸刃の剣であり、リターン以上にリスクも抱えることになる。環境や提供具合のバランスが上手く保てなかった会社から運営が立ち行かなくなるという例も少なくないので注意が必要だ。

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その点、ガチャ以上にスキン販売に力を入れているアークナイツはかなり異質であると言える。

・キャラ実装ごとのスキン
・イベントごとのスキン
・周年記念スキン

など、キャラクターのスキンだけでもゲーム内でカタログ化されるほど充実している。ただ見た目が変わるだけでなく、固有のアニメーションや台詞、モーションを付けるのも怠らないあたり、スキのなさが伺える。

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天井まで回させることを考えれば収益性の面から見てもガチャに軍配が上がりそうなものだが、あえてガチャではなく、スキン販売に力を入れる理由は何なのだろうか?

それはユーザー体験に対する設計思想の変化だ。

かつてのソーシャルゲームにおけるユーザー体験は、「いかに短時間で強い刺激を与えるか」に重きが置かれていた。限定ガチャ、強力な人権キャラ、期間内に引けなければ取り返しがつかない報酬。そこでは焦りや不安こそが、体験の中心にあったと言っていい。

しかしアークナイツをはじめとした近年の成功例では、その軸が明確にずらされている。プレイヤーに求められているのは即断即決ではなく、継続的な関与だ。今日少し遊び、明日もまた触り、気づけば数か月、数年と同じゲームに留まり続けている。その時間そのものが、価値として設計されている。

また、ガチャは一種のギャンブル的な体験であるが、スキン販売はあくまで「購入体験」である。支払ったものに対して見合うだけの価値が約束されている体験は、ソーシャルゲームの中では珍しい形式である。

もちろん、スキンも課金することでいち早く手にすることもできるが、毎日少しだけアークナイツに時間を割けば無料で手に入れられる環境を提供し、ユーザーはそれを受け入れるというwin-winな状況が結果的にコンテンツの寿命を伸ばしていることに繋がっている。

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ならどのゲームもスキン販売に力を入れて、ガチャと並ぶ二本軸でマネタイズを進めればいいのではないか。一見すると、それは極めて合理的な解答に思える。

しかし、実際にはそう簡単な話ではない。

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まず前提として、スキン販売を主軸の一つに据えるには、異常とも言える開発スピードが求められる。キャラクターが追加されるたびに新規スキンを用意し、イベントや周年に合わせてさらに投入する。その供給が止まった瞬間、スキンは「待たれる商品」ではなく「忘れられる商品」になる。

そして、このペースを維持するためには、技術的な取捨選択が不可欠だ。3Dモデル主体のゲームでは、衣装変更は単なる見た目差分では終わらない。モーション干渉、カメラワーク、物理演算、表情制御──そのすべてに調整コストが発生する。結果として、スキン1着あたりの制作負荷は跳ね上がる。

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一方、アークナイツやブルーアーカイブのように、2DイラストとSDキャラを中心に据えた設計では、この問題を根本から回避できる。3Dのリッチなモデリングに頼らず、SDキャラでの表現力を高めることで、見た目の変化とプレイフィールの変化を最小限のコストで両立させている。

つまり、スキン重視のマネタイズは「真似すれば成立する手法」ではない。それは、ゲームの表現形式・ジャンル・開発体制まで含めて最初から設計されている場合にのみ成立する戦略だ。

ガチャとスキンの二本軸は、確かに理想的に見える。だがそれは、誰でも持てる武器ではなく、選ばれた構造の上にしか成り立たない前提条件付きの解答なのである。


結論:「細く、長く」


ここまでを整理すると、現在の潮流は次のようにまとめられる。

  • ゲーム内マネー(課金可)で買えるものの“価値”を上げる

  • ガチャに明確なハズレを作らない

  • できるだけ早くキャラを手に入れさせる

射幸心を煽るのではなく、「早く当たったらラッキー 次の更新まで貯金しておこう」という心理を作る設計だ。

運営もプレイヤーも、細く、長く付き合う前提が重要になりつつある。

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次なる一手として


アークナイツはガチャ上限の明確化を行った

  • 天井システムの導入

  • 実質◯◯連で確定

など、これらはもはや“安心材料”として必須になりつつある。

「スタンダードスカウト」「リミテッドスカウト」は、排出率を調整した特殊ガチャで、ガチャのおまけで交換できる常設キャラを充実させることで、今までゲームに時間をかけてきたプレイヤーらが損をしない一方で、新規も追いつきやすくなるような構造だ。

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そして、買い切り型への挑戦。SDベースから3Dベースへ


最後に注目したいのが、Hypergryph自身の動きだ。

・『エクスアストリス』という買い切り型タイトル
・『アークナイツ:エンドフィールド』

従来の長期運用で信頼とIPを育て、「次は買い切りでも付いてきてくれるかどうか」を確かめる段階に入っているようにも見える。エクスアストリスの挑戦については、またいつか別で語れる日が来たらと思う。

※スライドを作成した日が古く、エンドフィールドが買い切り型 と記述していますが、正しくは基本プレイ無料+一部課金型です。

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おわりに


アークナイツの成功は、課金圧を下げた結果ではなく、遊び続けられる構造を徹底的に設計した結果として“払いたくなる場所”を作り出した点にある。

この思想は、今後のソーシャルゲーム運営における重要な指標の一つになるだろう。


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