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生きづらさはどこからくるのか?「社会の構造」に光を当てる本

あしかけ4年、ブックライターとして伴走した書籍が今日、発売になる。

著者の安部さんとの出会いは、今から12年前。当時勤めていた出版社の社長が、同じ25歳ということで、同僚だった井上くんと一緒に引き合わせてくれた。東大在学中に、社会課題の現場をめぐるスタディツアーを軸に「リディラバ」を立ち上げていた安部さんは、なぜかマグロ漁師でもあり、知性と愛嬌があふれる話がおもしろくて、刺激を受けたことをよく覚えている。

そこから数年が経った2020年のコロナ禍、著者・安部さん、編集者・井上くん、ライター・私の同世代チームで書籍づくりが始動。テーマは「社会課題をひらく」。

恥ずかしくて今さら聞けない、無知が誰かを傷つけてしまうかもしれない、余計なことを言って責められたくない。そもそも自分に関係ないから興味が持てない。タブーも多く、お勉強感があって、取っつきにくい「社会課題」を身近に感じてもらう入門書を目指すことに。

「社会課題を、みんなのものに。」を掲げて活動するリディラバは、スタディツアー以外にも、調査報道もかねた独立メディア「リディラバジャーナル」の運営ほか、世の中の「無関心を打破する」あらゆる活動に取り組む。その一環でありながら、そこへの架け橋になることがこの本の目的でもある。

どのようなかたちで届けられるのか。さまざまに議論して、安部さんの一人称ではなく、社会課題のタブーに躊躇なくツッコミ学ぶ「おば」という架空の人物との対話形式を取ることにした。

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各章の冒頭は漫画に。おばは53歳のメーカー勤務、23歳の息子がいる設定だが、ライターとしてリアルな体験談や生活者の感覚を盛り込んだ

子どもの虐待、発達障害、ホームレス、選択的夫婦別姓、ジェンダー、外国人労働者、物価高。

一つのテーマに対して数時間、素朴な疑問を起点に、安部さんと編集部で対話を重ねて、文章にして、社会課題の「構造」を紐解いていった。

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入門書といってもこの本は、社会課題の基本を学ぶ教科書的な本ではない。安部さんの目を借りて社会を「構造化」して見る癖をつける本とも言える(と私は思う)。

安部さんは10年以上、リディラバの活動を通して、常に俯瞰の目を持ち「社会の構造」を見つめて思考し行動を重ねてきた人だ。個別の社会課題の第一線で活動するNPO団体とつながり現場を訪ね、当事者や専門家に取材をして伝え、自治体や官僚組織に伴走して政策提案をして、企業や金融機関とタッグを組んでお金の流れを変える。『モーニングショー』をはじめコメンテーターとしてお茶の間にも登場するし、地域のソフトボールチームの監督も務める。

並外れた思考と行動の源泉には「社会にやさしい関心のネットワークをつくる」というブレない志がある。

安部さんは社会課題をはじめ、問題が生じたときに、個別の誰かを悪者にして責めることなく、構造・しくみに焦点を当てて、解決の糸口を探る。なぜその人がそうなってしまったのか、その社会的な背景を辿り、想像力を働かせて。その構造を解き明かして、第三者の立場、社会の側からアプローチをする。

解決策を探る議論をするときは、極端な白と黒を並べて、そのどちらかではなく、「間」に落としどころを見つけていく。特定の人たちだけが得をしたり、不利益を被ったりするのではない、ベターなバランスを見出そうとする。

自分たちだけで課題を解決しようとしないで、あらゆる人を巻き込んで、一歩ずつ、長い目で大きな変化の波を起こそうとしている。

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安部さん・リディラバの俯瞰の目で見た社会課題の相関図。家庭も社会も、そこで生じる課題もぜんぶ地続きにあって、自分が"無関係"であることはない。

数年かけて安部さんと対話をして文章にまとめていく過程で、私はそういう社会の見方や接し方、人生との向き合い方にも通じる視野を授かった気がしている。

実際にこのnoteにも散々書いてきたように4年前の私は、ワンオペ育児、孤育ての"当事者"だったと思う。東京のマンションで幼い娘とふたりで発狂寸前、頬にはよく涙がつたっていた。どうしようもなく、やり場もなく、働きすぎで不在の夫を"悪者"にして責め立てていた。

でもある時から、個別の家庭の問題を、社会の構造の問題として見られるようになった。共働きであるにもかかわらず、出産を機に女である私が家庭で子育てをして、男である夫が外に働きに出るのは、夫婦同姓(明治の家制度)に根付く家族観や縮まらないジェンダーギャップが社会にあるからだとか。

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いつしか私は、ワンオペ育児、孤育てを家庭の中で解決するのではく、家族をひらいて、周囲の人たちを巻き込み"みんなで育てる"ことを目指すようになった。ライターとして書いていくテーマとしても、パートナーシップや家族のかたちから、その先にある地域や社会に関心が向くようになった。

「家族をひらく」をテーマに家を建てたこともあり、今は近所の人たちと子どもを預け合ったり、一緒にごはんを食べたり、「助けて」と言い合える関係が地域にある。身近に小さな「やさしい関心のネットワーク」ができて、相変わらず夫は不在だけど、孤立せず安心して暮らせるようになった。私は今、自分が暮らす地域で程よい距離で子どもたちを見守りおせっかいを焼く「近所のおばちゃん」でありたいと願っている。

話は逸れたけど、ささやかながら私の「近所のおばちゃん」活動は、安部さんに"巻き込まれた"とも言える。本の中の「おば」や私のように、社会に関心を寄せる人たちが増えて、それぞれがそれぞれの場でできることをして小さな光を灯していけたら、じわじわと、社会に「やさしい関心のネットワーク」は広がっていくかもしれない。社会にも人生にも課題や悩みがなくなる、なんてことはきっとないけれど。

4年かけて、私はそんな小さな希望を託してもらって、ライターとしてこの本に託したつもりだ(本は読者の手に渡って初めて成り立つものだと思うけれど、どんなふうに読んでもらえるのか毎度どきどきする)。

4年かけて、というのは、実はこの本は初期メンバーのそれぞれの事情によって、一休みしていた期間があった。ゆっくり進む時計の針をぐるりと一気に動かしてくれたのが、私たちよりも若い編集者の的場さんだ。学生時代にリディラバでインターンをし、NewsPicksパブリッシングに入社した彼女は、私たちと同じ想いを持ち(それ以上かもしれない)、この本をかたちにするエンジンとなった。

社会課題は常に動いていて、4年の間に、校了寸前まで、刻々と状況が変わり、それに伴い安部さんの視点も変化し、その都度原稿のアップデートが必要だった。そんな中、超多忙な安部さんのスケジュールを確保し、自転車漕いでゲラを取りに行き、徹夜ももろともせず……。今の時代、なかなか「がんばって」と言えないけれど、彼女の"がむしゃらながんばり"がなければこの本は世に出てなかったかもしれない。

安部さんの著書ではあるけれど、編集者、ライター、デザイナー、漫画家、リディラバのみなさん含め誰か一人でも欠けていたらこのかたちにはならなかった。これだから本づくりはおもしろい。

安部さんはリディラバの活動を通して、社会の構造をじわじわ変えていく仲間を増やしているように思う。私たちがそうであるように、ゆるやかに"巻き込まれて"、接続した社会でそれぞれができることをする。この本がそんなきっかけになったらいいなと勝手ながら願う。

書店やオンラインストアでぜひ、手に取ってのぞいてもらえたらうれしいです!




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徳   瑠里香 読んでくださりありがとうございます。とても嬉しいです。スキのお礼に出てくるのは、私の好きなおやつです。

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