総死亡率が一番少ないのは血圧160の人、認知症が一番少ないのはなんと血圧185の人だった【医学常識のウソ④】
日本の医学界は間違いを正そうとしない
大櫛 アメリカの医師がおもしろいのは、実際に薬を減らしてみたことです。 和田 血圧の高い人のほうが元気だと統計が示しているなら、わざわざ薬で下げる必要はない、という発想をする。 大櫛 アメリカには退役軍人のための病院が多数あるんです。そこで降圧薬を飲んでいる1万2000人に対し、「継続して飲む群」と「薬を減らす群」に分けて追跡調査をしました。すると薬を減らした群のほうが、認知機能が低下しにくいことがわかりました。これは2024年のデータです。 和田 日本にもね、柔軟な病院はあるんですよ。1990年代半ばの話ですが、青梅慶友病院という長期入院の老人病院がありましてね。 大櫛 有名な認知症の病院ですね。 和田 そうです。当時「入院医療の定額制」というものができましてね。それ以前は「出来高払い」だったので、薬をたくさん使うほど病院は儲かったんです。でも定額制なら薬を使わないほうが儲かる。というわけで、この病院では薬を3分の1に減らしたんです。 大櫛 なるほど。 和田 これだけ聞くと悪徳病院のように思えるでしょ(笑)。でも薬を減らしたら、寝たきりの人が歩きだしたんです。 大櫛 そうなるでしょうね。 和田 青梅慶友病院の医院長はそれを講演会などで話すんです。薬を減らすと元気になる人が多いですよと。そしたら薬を減らす老人病院が増えて、日本中で寝たきりの人が歩きだすみたいな状況が見られたんです。 大櫛 柔軟に対応したいい例ですよね。 和田 ところがね、そういう事実があるにもかかわらず、それを基に研究をしようという大学病院の医者がいないんですよ。 大櫛 少ないでしょうね。だけど浜松市では私の知ってる菅野剛史先生(元浜松医科大学副学長)が顧問をされていましてね。高齢者の施設に入るときはすべての薬を一回やめる、ということを基本にしています。それで症状が出て必要と認めたら薬を戻していく。薬を見直す医療をしているんです。 和田 そういう人が増えてくるといいですけどね。医師は一度、虚心坦懐に統計データと向き合ってみたらいいと思うんですよ。それこそ大櫛先生の研究も百寿者の研究も素晴らしい統計データがたくさんあるんだから。学ばないのは損だと思いますけどね。 ※5回目に続く 大櫛陽一/Yoichi Ogushi 東海大学名誉教授・大櫛医学情報研究所所長。1947年徳島市生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。大阪府立の複数病院で研究をした後、1988年より東海大学医学部教授。2012年より現職。著書に『高血圧の9割は正常です』『長生きしたければ高血圧のウソに気づきなさい』『「血圧147」で薬は飲むな』など著書多数。 和田秀樹/Hideki Wada 精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー等を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。当対談連載をまとめた『80歳の壁を超えた人たち』をはじめ、『80歳の壁』『幸齢党宣言』など著書多数。
TEXT=山城稔