第18回37年前の攻殻機動隊に現実は追いついた? 士郎正宗氏明かすAI論

有料記事

構成・御船紗子
[PR]

 AI(人工知能)をはじめとする技術と人がともに生きる世界を、37年前に描いた漫画がある。「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」(講談社)だ。その後、アニメ化されて世界的な人気を集め、ハリウッド映画の原作にもなった。今年7月には新アニメシリーズの放送も予定され、世界観を再び広げようとしている。漫画作者の士郎正宗氏は人びとの生活や職場にAIが急速に入り込んでいる現代をどう見ているのか。朝日新聞の書面インタビューに応じた。

インタビューのポイント

・人工知能にゴーストは宿るのか
・現代に「人形使い」は誕生するのか
・人間を人間たらしめる定義とは
アンドロイドへの倫理的見解
・士郎氏が現代を描くなら

 ――攻殻機動隊の連載を始めた1989年当時は、まだインターネットが一般的に普及していませんでした。しかし、作中の世界はネットやAIが社会に浸透し、脳をネットでつなぐ描写もあります。この世界観はどのようにして生まれたのでしょうか。

 小型で高性能のバッテリー、コンピューター関連の技術の急速な発達、高度な通信インフラ。当時はどうなるかわからない技術もありましたが「なんとかなるか~」と目を瞑(つむ)って設定したら、このような世界観が出来ました。生体、特に脳への侵襲技術(物理的なダメージを伴う技術)は「医療分野以外だと実際には進まないだろうな」と思いつつ、架空の物語なので描写する選択をしました。貧富や技術の格差両面を描写するよう気をつけました。

 ――現在のAIの普及をどのように見ていますか。

 生活や仕事を便利に支援してくれるレベルに手が届いてありがたい半面、善良ではない目的でこれを利用する人達もいます。他の多くの技術と同様に多くの問題・課題も生じるし、対策も必要かと思います。人工知能はそうした対応策の検討や実施にも役立ってくれるでしょうから、有効活用するのが良いかと思います。

人間における魂や心とは

 ――本作には枠外に多くの「補助説明文」が書き込まれ、読者が作品の世界観を理解する手助けをしています。この説明文によれば、主人公の草薙素子少佐が言う「ゴースト」という存在は、神道における八百万(やおよろず)の神のような存在だと理解できます。現実世界に氾濫(はんらん)するAIやその他多くの電気通信、データセンターのサーバーにも、ゴーストは宿ると思いますか。

 人間はそもそも認知機能や心的原因から、壁のシミや木目に顔や人影を見いだしたり、現象の乱雑さに非偶然性を感じたりする想像力豊かな生物です。人工知能が単に文章や画像を統計処理して、あたかも人格や心があるかのような姿をし、人格や心があるものの手によって作られたかのような会話応答をした場合でも、実際にその人工知能に心と呼べる機能があるか否かとは関わりなく、人はそこに意思や心を見ることがあると思います。

 人間における魂や心とは何か…

この記事は有料記事です。残り3911文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

【スタンダードコース|デジタルのみ】有料記事が読み放題!今なら4カ月間月額200円!詳しくはこちら

【ダブルコース|宅配購読者限定】新聞+デジタルのお得なコースも!詳しくはこちら

この記事を書いた人
御船紗子
国際報道部
専門・関心分野
国際問題、サイバー
  • commentatorHeader
    藤田直哉
    (批評家・日本映画大学准教授)
    2026年2月14日9時55分 投稿
    【提案】

    熱心に熟読しました。『攻殻機動隊論 新版_2045』を書き、『攻殻機動隊MMA』や『Pen』攻殻特集、『芸術新潮』さんの記事などに協力させていただき、『攻殻』と士郎正宗のビジョンと現在の状況との関係について、たくさん考えることがあります。現

    …続きを読む
AIの時代

AIの時代

現代社会に浸透するAI(人工知能)。私たちの暮らしや産業の仕組みを塗り替えつつあります。使う人、つくる企業、向き合う政府の動きから、社会の変化を追います。[もっと見る]

連載AIの時代 何を託すのか(全18回)

この連載の一覧を見る