医師として一つだけ伝えたい。
「薬代の25%が追加負担」と聞くと大したことなさそうに聞こえる。でも実際に計算すると、患者さんの実質負担は今の3割から47.5%に跳ね上がる。これ、ちゃんと報道されていますか?
2027年3月から始まるOTC類似薬の新制度について、正確な情報を整理します。
まず「保険が外れる」はデマです。保険適用は維持されます。
ただし、ロキソニン・アレグラ・ムコダイン・ヒルドイドなど77成分・約1100品目について、薬剤費の1/4が「特別の料金」として保険外の全額自己負担になります。
ここが見落とされがちですが、残りの3/4にも通常の3割負担がかかる。
つまり、
薬剤費1000円の場合
現行:300円(3割負担)
改正後:250円(特別料金)+225円(残りの3割)=475円
約1.6倍です。
外来で診ていて感じるのは、風邪で来院される方の多くにはロキソプロフェン、カルボシステイン、トラネキサム酸などが同時に処方されるということ。対象薬が複数重なれば、薬代だけで数百円単位の負担増になります。
そしてこの制度で最も問題だと感じるのは以下の3点。
①「これはまだ第一段階」であること
合意文書に「令和9年度以降に対象範囲を拡大」「特別料金の割合の引上げも検討」と明記されている。77成分・25%で終わる話ではない。
②医師の判断で免除される仕組みが「検討中」のまま
「治療上必要なら今まで通り」と説明する医師も多いが、合意文書の原文は「配慮を検討する」。確定していない。
③受診控えが確実に起きる
外来で「湿布だけもらいに来た」「花粉症の薬だけ欲しい」という患者さんは非常に多い。この層が来なくなると、本当に治療が必要な症状の早期発見の機会が失われる。高血圧の患者さんが「ついでに相談」してくれる場が減る。
制度の趣旨は理解できます。
現役世代の保険料負担は限界に近い。セルフメディケーションの推進も必要。
ただ、国民皆保険の根幹は「お金がなくても医療にアクセスできる」ことのはず。今回の制度は、その入口を少しずつ狭めていく第一歩になりかねない。
「たかが数百円」と思うかもしれません。でも、その数百円で受診をやめる人が確実にいる。その人たちの中に、本当は診察が必要だった人が含まれていないと、誰が言い切れるでしょうか。
(厚労省 第209回社会保障審議会医療保険部会 資料1-3/自民党・維新 政調会長間合意 令和7年12月19日署名 に基づく)