@manaka
短くてごめんぴよ
雪のように白い肌
黒檀のように艶やかな髪
血のように赤い唇
人形のように整った顔は母譲りだと聞いた。
生みの母が願ったというわたくしの容姿。毎朝毎晩、鏡を見るたびに思う。
美しさって、そんなに大切なものなのかしら、と。
今わたくしの掌に、林檎が一つ乗っている。
艶々と光る、見ているだけで口の中が潤ってくる林檎。
ふわりと漂う甘い香り。
「わたくし、直接齧るなどしたことがないの」
愛らしく首をかしげる少女に、老婆は愛想よく笑う。
「では、今してごらんなさい」
小人のお爺さんたちはりんごをかじっていたけれど、わたくしには皮をむいて食べさせてくれていた。一人で食べられるよう、皮むきの練習もさせてもらっている。
ただ、日中1人でいる時は、刃物は鍵つきの扉にしまわれていた。
怪しい人から物を貰ってはいけない、何が来ても扉を開けてはいけないと言い含められていたのに、なぜ今わたくしは、目の前のお婆さんと外で話しているのだろう。
なぜ、林檎を口元に近づけようとしているのだろう。
ダメだと、口を開いてはいけないと、わたくしのなかの何かが叫んでいる。
白雪姫は林檎に強く唇を押し付ける。唇を開かないように。
林檎よりもなお紅く艶やかな唇を見た老婆は、なぜだか無性に苛立った。
「ほぉら、おいしいですよ」
言葉に力を籠め、姫を篭絡する。蠱惑的に、誘うように。賢いとはいえまだ幼い姫は、老婆―――継母の魔法に、抗いきれず、唇を開けた。
真珠のつやを帯びた歯が覗く。艶やかな赤をなお引き立たせ、果皮に僅か食い込んでいく。
継母はほくそ笑んだ。しかし歯がそこで止まる。内なる声が必死で押しとどめているのだ。
継母は今度こそ苛立ちを抑えず、力ある言葉を発する。
「さっさと食べなさい」
少々力加減を誤ったのか、白雪姫は勢いよく林檎を噛み切った。
小指の爪くらいの大きさに歯形がつき、姫はそのまま頽れた。
だから継母は気づかない。
即効性のある致死毒を仕込んでいたものの、致死量には少し足りないことを。 #同シチュで書いてみた
黒檀のように艶やかな髪
血のように赤い唇
人形のように整った顔は母譲りだと聞いた。
生みの母が願ったというわたくしの容姿。毎朝毎晩、鏡を見るたびに思う。
美しさって、そんなに大切なものなのかしら、と。
今わたくしの掌に、林檎が一つ乗っている。
艶々と光る、見ているだけで口の中が潤ってくる林檎。
ふわりと漂う甘い香り。
「わたくし、直接齧るなどしたことがないの」
愛らしく首をかしげる少女に、老婆は愛想よく笑う。
「では、今してごらんなさい」
小人のお爺さんたちはりんごをかじっていたけれど、わたくしには皮をむいて食べさせてくれていた。一人で食べられるよう、皮むきの練習もさせてもらっている。
ただ、日中1人でいる時は、刃物は鍵つきの扉にしまわれていた。
怪しい人から物を貰ってはいけない、何が来ても扉を開けてはいけないと言い含められていたのに、なぜ今わたくしは、目の前のお婆さんと外で話しているのだろう。
なぜ、林檎を口元に近づけようとしているのだろう。
ダメだと、口を開いてはいけないと、わたくしのなかの何かが叫んでいる。
白雪姫は林檎に強く唇を押し付ける。唇を開かないように。
林檎よりもなお紅く艶やかな唇を見た老婆は、なぜだか無性に苛立った。
「ほぉら、おいしいですよ」
言葉に力を籠め、姫を篭絡する。蠱惑的に、誘うように。賢いとはいえまだ幼い姫は、老婆―――継母の魔法に、抗いきれず、唇を開けた。
真珠のつやを帯びた歯が覗く。艶やかな赤をなお引き立たせ、果皮に僅か食い込んでいく。
継母はほくそ笑んだ。しかし歯がそこで止まる。内なる声が必死で押しとどめているのだ。
継母は今度こそ苛立ちを抑えず、力ある言葉を発する。
「さっさと食べなさい」
少々力加減を誤ったのか、白雪姫は勢いよく林檎を噛み切った。
小指の爪くらいの大きさに歯形がつき、姫はそのまま頽れた。
だから継母は気づかない。
即効性のある致死毒を仕込んでいたものの、致死量には少し足りないことを。 #同シチュで書いてみた