東大時代から熱中していたアメフトをプレイする姿/講談社写真資料室
東大時代から熱中していたアメフトをプレイする姿/講談社写真資料室

「もう一本撮らないと死ねん」

2010年代に入ると、長谷川和彦はFacebookやTwitterのSNSアカウントを開設し、映画関係者やファンとさらなる交流を始める。2014年には広島国際映画祭が「長谷川和彦監督新作プロジェクト」をスタート、広く企画を募った。しかし、第3作が撮られることはないだろうと冷ややかな目で見る向きも多く、かくいう筆者もそのひとりであった。もう無理だろうと。

その後も再評価は高まり、『キネマ旬報』2018年8月上旬号の1970年代日本映画ベスト・テン第1位に『太陽を盗んだ男』が選ばれ、表紙を飾る。2022年には『長谷川和彦革命的映画術』(A PEOPLE)が刊行され、渋谷のミニシアター・ユーロスペースでは長谷川と水谷豊のトークが行われた。また、国立映画アーカイブでは「長谷川和彦とディレクターズ・カンパニー」という特集上映が行われ、これまた壇上でゴジ節が披露された。

『長谷川和彦革命的映画術』(A PEOPLE)
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2024年3月、Facebookにおいて長谷川和彦助監督公募プロジェクト「ドキドキわくわくプロダクション」が始動、パーキンソン病に苛まれながらも若き才能との出会いを求めた。『ドキドキわくわく/迷い鳩』という新作シナリオも用意された。同じく2024年、『映画秘宝』において先に引用した伊藤彰彦の不定期連載「未完の長谷川和彦」が始まり、翌年に第一部完となった(やがて単行本化されることだろう)。

Facebookの長谷川和彦助監督公募プロジェクト「ドキドキわくわくプロダクション」
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本人のインタビューにおける精力的な“語り”は晩年まで続き、下積み助監督の苦労から『青春の殺人者』『太陽を盗んだ男』のディテール、次回作の構想までさまざまな証言が残されている。自身の筆による文章も読みごたえがあり、今後1冊にまとまる機会があるかもしれない。

すでに伝説的映画監督の訃報を多くのメディアが取り上げているが、追悼特集がウリの『映画芸術』には明暗ふくめて知られざる逸話も掲載されることだろう。常々「もう一本撮らないと死ねん」と公言しながら世を去った長谷川和彦、まるで刑事ドラマのような愛称がこれほど広く知られた映画監督も珍しい。

それほど、ゴジに魅せられた者は多い──。

講談社写真資料室
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【前編記事を読む】『長谷川和彦「幻のデビュー作」の「意外な内容」…一躍脚光ののち、プロデューサーを激怒させた「超常現象」への傾倒』

『青春の殺人者』

●監督:長谷川和彦●原作:中上健次●脚本:田村孟

BD¥2,750(税込)/DVD¥2,090(税込)発売中

発売・販売:キングレコード

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