観光庁がオーバーツーリズムの対策強化に乗り出す。1月末に2030年度までの観光政策を示す「観光立国推進基本計画」素案を有識者会議に提示。住民の生活にマイナス影響を及ぼすオーバーツーリズムの現状と必要な対策はどうか。
観光庁が提示した素案では、観光の意義を「観光は地域の活力を維持するとともに海外との双方向交流によって国際相互理解も促進する」とし、「観光産業は国内第2位の輸出産業に急成長しており、地域経済・日本経済の発展をリードする戦略産業」と位置付けた。その上で「国民の理解を得る不断の努力が不可欠」とした。これは、オーバーツーリズム問題だ。
基本計画の施策の3つの柱として「インバウンドの受け入れと住民生活の質の確保との両立」「国内交流・アウトバウンド拡大」「観光地・観光産業の強(きょう)靱(じん)化」を掲げた。
このうち「インバウンドの受け入れと住民生活の質の確保との両立」では、パークアンドライド駐車場の整備、手ぶら観光の推進、交通空白の解消、需要に応じた入域管理や予約制の導入など、細かな具体策はある。
2030年度に向けた目標値もある。訪日外国人旅行者数6000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円の目標は継続。新たな目標としては、過度な混雑やマナー違反対策など、観光客の受け入れと住民生活の質の確保との両立に取り組む地域を、2025年の47地域から、2030年度に100地域に拡大することを目指す。
以上、ざっと「観光立国推進基本計画」素案を紹介したが、訪日外国人数の目標など基本的には従来の延長線だ。
コロナ期の入国制限があった期間を除くと、訪日外客数とドル/円の為替には0・7程度の相関係数がある。10円の円安で年間ベースで360万人程度、訪日外客数は増える。もちろん、月ごとの傾向には季節要因があるが、それを無視しても、高い相関がある。円安傾向が続く中、訪日外国人は増えるだろう。
従来の延長の対策でオーバーツーリズム問題は解決できるのか。訪日外国人の入国総量管理などは行われず、結局、訪日外国人の事故対策や民泊での環境悪化への対策など問題解決は地方任せになるのではないか。少なくとも、各自治体はさらにオーバーツーリズム問題に取り組む覚悟をしていたほうがいい。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)