1月末の日英首脳会談で、両国首相はサイバー防衛に関する協力を進めることを確認した。防衛協力を進めるため外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を年内に開催する。ウクライナ侵攻やベネズエラ攻撃など混(こん)沌(とん)とする世界情勢の中で、日英が協力を強化する背景は。
日本と英国は近年、次期戦闘機共同開発、英国のTPP加盟申請などを通じて連携を深めていた。
英国はEU離脱後、日本などのアジアの経済力に期待する一方、日本は英国との経済安全保障の連携を通じて、将来的に米英加豪ニュージーランドからなる機密情報共有枠組み「ファイブアイズ」への加入も視野に入れた取り組みを行っていたことが背景にある。また、日本には戦前の日英同盟のよき思い出もあり、その復活を希望する声もある。
日英両国は、2023年5月広島サミット前に「サイバー・パートナーシップ」で合意し、実務面での協力を重ねてきた。今回のスターマー英首相の来日に合わせて協力関係を格上げした。英国としても、訪中で英国が中国に傾いているという印象を戻してバランスを取る絶好の機会だった。
今回の新たな包括協力では、インテリジェンス共有によるサイバー脅威の検知や防御、水道や電力、交通などの重要インフラ(社会基盤)をはじめとする社会全体のサイバーレジリエンス(回復力)の強化、サイバー人材や新技術の3分野を中心に関係を深める。
インテリジェンス共有では、両国の当局が保有するサイバー攻撃者の手口や標的に関する情報などを共有し、防御強化につなげる。
日本では最近企業がサイバー攻撃を受け社会的な混乱もあった。また、昨年5月に成立した、サイバー攻撃に先手を打って被害を防ぐ「能動的サイバー防御」関連法を生かすために、対ロシアや対中国などのサイバー対策で経験豊富な英国との連携は日本のためにもなる。
日英首脳会談では、日英伊3カ国による次期戦闘機の共同開発をはじめとする安全保障分野や防衛産業でも協力関係を結ぶ。
スターマー政権は労働党政権で中国に融和的だ。しかし、さすがにサイバーセキュリティーや安全保障分野まで親中とはなれないだろう。その点に、高市首相が食い込んでくさびを打ち込んだ。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)