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夜に一人、屋上にいたネフェルの話/Novel by けだま

夜に一人、屋上にいたネフェルの話

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以前Xに上げてたものをちょっと修正

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ナシャタウンで一際目立つ大きなクーヴァキ装置の裏側、秘聞の館のすぐ脇にあるリフト
それはクーヴァキ砲の制御室と、そのさらに上のクーヴァキ砲台のある屋上へと続いている
その屋上でネフェルは一人、夜風にあたっていた
ここからはナド・クライの島々が一望でき、さらに遠くの国々も微かに望むことが出来る
荒くれ者の多いタウンから響く喧騒など聞こえていないかのように彼女は静かにある方角を見つめる


「・・・まったく、人に難題を押し付けて自分は迷い人を案内するだけなんて随分といい身分じゃないか・・・」

「全てが砂に埋もれたあの時から今まで、あたしは本当に変わってしまったよ・・・、父さん」


ネオンが眩しく光るナシャタウンからでも輝いて見える万種母樹と、うっすらと、しかしはっきりとした輪郭の浮かぶキングデ
シェレト霊廟
その中間、砂煙が舞うだけの空間を見つめながら彼女はトキの王と父に独り呟く

『回答が面白い』

そう力とともに課題を与えられ、ナド・クライに移り、その力と詐欺の能力を駆使して悪政勢力の数々を転がし潰し、月の輪を授かっても尚謎は解けないままでいる
とんでもない面倒事を背負わされたものだと独り自嘲する
そうしていると背後でリフトが稼働する
乗ってきたリフトが下降していき、しばらくしてまた上昇する音が聞こえてくる

「・・・・」

ガシャンとリフトが止まる音がしてネフェルは振り返らないまま

「ラウマだね?」
と声を掛ける

そう言われた人物、ラウマのは少し驚いたように

「よくわかったな」
とそう返す

「館が閉まっている夜にあたしの住処に近づく真似なんて、余程浮かれた余所者しかやらないよ。それに、あんたの角の装飾の音がしたからね」
「なるほどな」

ラウマはそう返しながらコツコツと近づいて隣に並ぶ
ネフェルは視線を彼方に向けたまま

「こんな時間にどうしたんだい」

と聞いてみる

「リーリキが忙しいと聞いたので様子を見に来たのだ。その後ネフェルに会いに来たが留守だったのでな、ここにいる気がした」

そう言われてラウマの方を見るとふわりと笑っていた
まるで見つけられたことを喜んでいるように

そしてラウマは先程ネフェルが向いていた方角を見やる

「あの方角にネフェルの故郷があるのか?」
そう聞くラウマに

「どうしてそう思うんだい?」
と返すネフェルの視線は未だ彼方へ向いている

「スメールから訪れた者が霜月の里にいたことがあってな、子供達によく方角を指して教えていたのだ」

それに、と彼女は続ける

「そなたの背中が、どこか寂しげに見えた」

そう言いながらラウマは距離を詰め、ネフェルの腕に自分の腕をつける
触れ合った腕からじんわりとラウマの体温が伝わる感覚で、ネフェルは自分が思っていたより長く夜風にあたっていたのだと自覚する

内心自分に呆れていると、気が戻ったことに気づいたのかラウマが口を開く

「ネフェル、私ではそなたの抱えている物事を解決してはやれないのだろう。」

砂漠の方角を見遣りながらそう答え、それからネフェルに顔を向け

「だがネフェル、そなたが呼ぶなら私はいつでも駆けつけよう」

そう静かに目を合わせながら答え

「これは取引ではないぞ?」

ふふ、と彼女としては珍しく冗談めかして笑う
そんな彼女に一瞬見惚れていたことを隠すように

「・・・詠月使様は忙しい身の上だと聞いていたけど、とんだ暇人のようだね」

いつもの自分のペースに戻し、そう返しつつリフトに足を向ける

「ま、せっかく来たんだ。館に戻るよ。詠月使様に風邪を引かせるわけにはいかないからね」
「私は平気だ。いつも水に浸かりながら儀式をしておるからな。それよりそなたの方が心配だ。体が冷え切っているのではないか?」
「だから帰るんだよ。まったく、一人ほんやりすることも許されないなんてね」

「ネフェル」

そう呼ばれてリフトに乗ろうとする足を止める

「過去がどうあれ、今のそなたはここにいる。それだけは忘れないでくれ」

そう告げたラウマの言葉を、ネフェルは振り返らなまま刻み込むように瞼を閉じて聞く

「はあ・・・よくそんな恥ずかしい言葉が言えたもんだね」
「そうか?気持ちを伝えるのは大切なことだ」
「はいはい、わかったよ。それじゃ、今度こそ戻るよ。先日取り寄せた茶葉を試そう」



「もう十分、伝わってるよ」

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