「自分の名で別人が…」 不正横行したバングラデシュで「初」の選挙

候補者の横断幕が風に揺れ、選挙ムードに包まれるダッカの街=2026年2月11日、松本紫帆撮影
候補者の横断幕が風に揺れ、選挙ムードに包まれるダッカの街=2026年2月11日、松本紫帆撮影

 「祭典にようこそ」――。取材中に出会った地元の記者は、笑顔でそう声をかけてきた。

 街にはどこか浮き立つ空気が漂う。

 学生デモの激化で長期政権が崩壊したバングラデシュで12日、総選挙が行われる。

 リキシャが行き交う首都ダッカの中心部では、クラクションが鳴り響き、候補者の顔写真入りの横断幕が風に揺れていた。

 普段ダッカで暮らす人々も、出身地で1票を投じるため故郷へ向かった。「これから夜行バスで帰ります」。塾講師のファイサルさん(26)はそう言い残し、人波に紛れていった。

 3年前に訪れたときと比べると、市内の様子は大きく変わっていた。ハシナ前首相の在任中、至るところにムジブル・ラーマン初代大統領の肖像画が掲げられ、独立の英雄である父の偉功が前面に押し出されていた。だが、その姿は街角から消えていた。

 民間企業で働く40代の女性は「前政権はある時からムジブル氏の名を神のように使い始めた。今も多くの国民は彼を敬うが、尊敬は内面から生まれるもので、強制的に押しつけられるものではない」と語った。

 通算約20年に及んだハシナ政権の崩壊につながった学生による抗議デモは、2024年7月、国内有数の名門ダッカ大学で始まった。卒業生のサイードさん(27)もその一人だった。講堂で始まった小さな声は瞬く間に他の大学に広がり、やがて一般市民を巻き込む大きなうねりになった。

 治安部隊の銃撃で多くの市民が命を落とす中、「恐怖よりも…

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