米在庫抱える民間業者に“損切り”の動き「今になれば、なぜあの値段で…」 米価値下がりの兆しも、JA側は価格維持の姿勢崩さず
「令和の米騒動」をきっかけに高騰していたコメの小売価格が、値下がりの兆しを見せ始めた。JA系統と民間業者による集荷競争などで2025年産米も高値が続き、販売ペースは鈍化。関係者によると、高値で仕入れて在庫を抱える民間業者が「損切り」を始めた影響とみられる。一方で、JA系統は卸への販売価格を大きく下げる様子はなく、どこまで小売価格が下落するかは見通せない。 【写真】店頭価格を引き下げた大手スーパー 1月、コメ集荷・卸「高橋屋商店」(新潟市西蒲区)の倉庫には出荷先が決まらないコメが積み上がっていた。「例年の半分くらいの契約状況」。阿部潤社長は苦笑し、在庫の山を見上げた。 ほかの卸業者に購入を打診したところ、昨年放出された備蓄米や収穫直後に仕入れた25年産米の在庫があるとして断られたという。阿部社長は「このままでは26年産米の収穫期を迎えられない。今、赤字を出してでも売っていかざるを得ない」と話す。 民間の集荷業者の多くは、JA全農県本部が提示する仮渡し金(概算金)の額を踏まえて仕入価格を決める。25年産米の仮渡し金は一般コシヒカリで60キロ3万3千円と過去最高額だった。阿部社長は、この仮渡し金の水準では精米5キロの小売価格が4000円台後半になると予測。売り切れるのかと半信半疑だったが、在庫確保のため集荷に奔走した。 「今になってみれば、なぜあの値段で頑張って集めたんだろうと思う」。今後は複数年契約など、単年度での集荷が中心のJA系統とは違う集荷方法も検討するという。 米穀安定供給確保支援機構が発表するデータには、先安感が表れている。向こう3カ月のコメ価格の見通しに関する指数を見ると、1月まで5カ月連続で下がっている。大手スーパーでも、店頭価格を引き下げる動きが見られるようになった。 埼玉県を中心に首都圏に約150店舗を展開する大手スーパー「ベルク」(埼玉県)。銘柄米のほとんどは5キロ4千円台半ばから後半だったが、1月中旬から全銘柄で5キロ当たり300円から600円下げた。 バイヤーの片山彬さんは値下げについて「卸とわれわれ小売りの歩み寄り」と説明する。「5キロ4500円以上では消費者はついてこられない。3千円台になればどんな銘柄も売れる」と分析。春にかけて、さらに引き下げる予定だ。 ただ、同社は値下げに敏感な生産者側も気遣う。コメ不足に見舞われ、量の確保に苦心した24年産米での経験から教訓があるからだ。本県などの生産現場に出向いて状況を見聞きし、仕入れ先の確保と生産者の所得確保を踏まえた価格水準を意識する。 今回の値下げは、販売が鈍化している25年産米を端境期までに売り切り、26年産米の大幅な下落を避ける狙いもある。片山さんは「生産者と消費者がともに納得できる価格に落ち着かせることが、小売りにとっても大きな宿題だ」と強調した。 ◆県内JA関係者「大幅な引き下げはない」 卸売業者に「損切り」する動きがある一方、新潟県内JA関係者は、大幅な引き下げはないとの姿勢を見せる。JA系統は一定の価格水準を維持する見通しだ。 全国ではJA全農が生産量の約3割を集荷。県内はJA全農県本部と各地域JA合わせて、県内生産量のおよそ5割を集荷する。小売りや中食・外食業界向けへの販売が鈍化しているが、県内地域JA関係者は「(価格を)大幅に下げることはない」と断言する。 JA系統から卸へ販売する際、年間の販売数量はあらかじめ取り決める一方、価格は端境期にかけて変動させる契約が多い。JA関係者は「今後の出荷分については多少下げるだろうが、生産者に仮渡し金は支払い済み。生産者からの『仕入れ値』を割る値段で売ることはない」とする。 民間の卸業者間で取引される「自由米相場」は下落している。米穀データバンクによると、25年産の新潟県一般コシヒカリ(60キロあたり・関東)は、昨年9月下旬の3万7千円前後をピークに下降。2月4日現在は2万6千円台前半となっている。 県内のコメ流通関係者によると、多くの卸業者はこれまでの仕入れた分を損切りするほか、下落傾向の自由米相場から調達。小売りに対してはJA系統の高値分を吸収した水準で価格を決めるという。流通関係者は「3月決算に向けて卸が損切りを進める可能性はある。しかし、小売価格がどの程度まで下がるかは見通せない」と話した。