中道重鎮の12選を阻んだ39歳 味方につけたのは東北第2の都市

森北喜久馬

 今回の衆院選自民党圧勝のポイントの一つは「若さ」だった。政治の刷新を掲げた民主党による政権交代から17年。いつしか自民は若い世代の支持を受ける党になった。候補も世代交代し、各地で民主党時代の大物だった年上の対立候補たちを打ち破った。その一つが福島2区だ。

 当選から一夜明けた9日午前6時半、自民前職の根本拓氏(39)を起こしたのは支援者からの祝いの電話だった。「携帯電話を切っておくのを忘れてしまいました」。取材陣に苦笑いしたが、表情は晴れ晴れしていた。

 厚生労働相などを歴任した匠(たくみ)氏を父に持ち、東京大学法科大学院を修了。大手法律事務所で国際弁護士としてのキャリアを積むなど華やかな経歴を携えて政界に飛び込んだ。

 だが、前回、福島2区で父の後継として立つも、当時立憲で、民主党政権で外相を務めた玄葉光一郎氏(61)に大敗し、11選を許した。地盤の郡山市でも1万3千票余の差を付けられた。「比例復活の知らせで事務所に戻ると、当選を信じる支援者がたくさん残っていた。情けなかった」と振り返る。

 それ以来、対話集会を重ねること250回以上。小選挙区での勝利を追い求めてきた。だが、1年3カ月で突然の解散となり、選対幹部は「早すぎる。あと1~2年かけて追いつくつもりだったのに」と焦った。

 一方の玄葉氏。公示3日前の会見で「前回と同じ相手だったら票を伸ばす自信がある」と言い切った。ところが、その6日後、郡山市の演説会で「崖っぷちです。(公明出身者が名簿上位にいて)比例復活はない。議員バッジを外さなければならない」と訴えていた。

 その間、報道各社が厳しい情勢を伝えていた。選対幹部は「1カ月前は余裕で勝っていたのに」と困惑した。

 何が起きていたのか。

 地元の田村市など旧3区には「玄葉党」と呼ばれる長年の支援者が根を張り、逆風の選挙でも命脈をつないできた。自民が政権に復帰した12年の衆院選でも玄葉氏は3区で勝ち残った。

 だが、24年の前回選から、人口減にともなう区割り変更で新2区での戦いとなった。玄葉氏にとって新たに選挙区となった郡山市は、人口30万人を超える東北第2の都市で「風を受けやすい街」でもある。若者も多い。

 終盤戦の5日夜、故郷であり最も強い結束を誇る田村市で集会を開いた。「絶体絶命」「これが地元で話す最後かもしれない」。悲壮感をあらわにした。

 玄葉選対によると、遊説の反応は過去の選挙と遜色なかった。選対幹部は「選挙戦は現場ではなく、スマホの中で行われているような感じだった」と話す。

 最終日の7日夜、根本氏は郡山市の百貨店前で最後の集会に臨んだ。支援者が次々に握手を求め、選挙活動終了の午後8時が迫っても行列が途切れない。スタッフがあわててタスキを外した。

 支援者の女性は「総理大臣になるんだよ。その頃、私はあっちにいるけどね」と指で空を指しながら、若い根本氏に記念撮影を求めた。

 ふたを開けてみると、根本氏は12万8948票を得て3万8802票差で勝利。8万票余りが郡山市での得票だった。

 朝日新聞社の出口調査によると、2区では70代を除く全世代で根本氏の支持が玄葉氏を上回った。年齢が下がるほど、その傾向が強かった。

 根本氏は言う。

 「高市旋風という追い風があった。しかし、みなさんの熱い思いを感じたのも間違いない」

 晴れやかな笑顔の半面、右手は握手のたびにズキッと痛みが走るまでになっていた。

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