【創作羞恥小説】超能力小戦

創作羞恥CFNM

自分に “何か” が備わっていると気づいたのは、ふと木を眺めていたときだった。
公園のベンチに腰掛けてぼんやりしていると、視線の先の木がやけにツルツルして見える。
気になって近づき、手で触れてみると――そこにはちゃんと木の皮があった。

まるで、皮一枚だけをつるりと剥いたように見えていただけだったのだ。

「……透視?」
そんな考えが頭をよぎり、試しに目の前で休んでいたおじさんをじっと見つめてみた。

すると、スーツのジャケットだけがスッと消えたように見えた。

驚いて、今度は通行人を一人ずつ凝視してみる。
何度か試すうちに、ようやく自分の能力が理解できてきた。

――どうやら、相手の衣服を “一枚だけ” 消して見ることができる能力らしい。

「……使えるのか?この能力……。」

通りすがる人々を眺めながら、密かに能力を使っていた。
――服を一枚だけ消す力。
目立たないように視線を滑らせつつ、その場にいる誰かの服をそっと一枚“消して”みる。

「……せめて夏ならなぁ。」

季節はもう秋。
人々は少しずつ厚着をはじめており、露出も控えめになっている。
それが少し残念ではあったが、それでもこの奇妙な能力を楽しまずにはいられなかった。

そんな時だった。
背後から肩をトンと叩かれる。

「おはよう。」

振り返ると、クラスメイトの橋本さんがいた。
彼女とは隣の席になった時に話しかけられ、それ以来意気投合していた。

「どうしたの?さっきからキョロキョロして。ちょっと不審者っぽかったよ?」
からかうように笑う彼女。

確かに、能力を発動するにはある程度じっくり見つめる必要がある。
うかつだった――と内心で反省する。

「おはよう。秋になってきて、みんなの服が変わってきてるなって思ってさ。」

咄嗟にそれらしい言い訳を返すと、彼女はすぐに頷いた。

「そうだよね。この時期が一番悩むんだよね、服。制服が可愛くて助かってるよ。」

たしかにそうだ。
ブレザーに身を包んだ橋本さんは、どこか季節の景色に溶け込むような柔らかい雰囲気をまとっていた。

思わず、じっと見てしまう。
その瞬間――ブレザーがふっと消えた。

(……そういえば、少し前まではもっと薄着だったっけな。)

思考を逸らすように視線を外しながら、口に出す。

「ブレザー、いいよね。」


授業中もノートを取りながら、ちらちらと視線を彷徨わせていた。
黒板の文字を写すフリをしつつ、“チャンスがあれば”先生の服を一枚消す。

最近では、能力に少しずつ変化が出てきていた。
以前は“上着限定”だったのに、最近ではズボンまで消せるようになっていたのだ。

(……なんでこの先生、男なのにTバックなんだよ。)

思わずツッコみたくなる光景だったが、それはそれとして――
“下”が消せるようになったことで、世界はまるで別物になった。

教室を見渡せば、女子たちがみんなスカートを履いていない状態になっている。
机に座る姿勢、足を組み替える動作、その一つひとつが新しい意味を持ち始めていた。

(使えるか疑問に思ってごめん。)

心の中で能力に謝りながら、しばし至福の時間に浸っていた――そのとき。

「えっ、鼻血出てるよ!?大丈夫!?」

突然、隣の橋本さんが声を上げる。
はっとして鼻に手をやると、指先にサラッとした感触があった。

手をみると赤く染まっていた。

「マジか……。」


橋本さんに連れられて、保健室へやって来た。

「酒井くんが急に鼻血出して。……エッチなこと考えているからですよね。」

そんなことを笑いながら保健の先生に報告している。

先生もつられて笑みを浮かべながら言った。

「ふふ、それは俗説よ。エッチなこと考えても鼻血は出ないっていうのが今の通説ね。でも……鼻の粘膜ってすごく薄いから、興奮して切れちゃうこと自体は、否定しきれないわね。」

否定なのか肯定なのか――なんとも微妙な返答だった。

治療といっても特別なことはなく、ガーゼを手渡されて鼻を押さえるだけ。
その間も、先生は白衣姿でこちらを見ていた。

下にはワンピースを着ているらしく、白衣の隙間から柔らかそうな布地がちらりと見える。

(透視……できたらな……。)

思わず意識がそちらに向く。
じっと視線を集中させると――白衣がふっと消えた。
続いて、ワンピースまでもがスッと視界から消え去った。

そこにいたのは、下着姿の保健の先生

その瞬間、ブシャッと鼻から再び血が噴き出した。

「だ、大丈夫!?」

下着姿のまま、慌てて駆け寄ってくる先生。

(なんかもう……悔いなし……。)

朦朧とした意識の中で、そんな思いが脳裏をよぎった。


新学期、クラス替えで席が変わった。

隣になった男の子のカバンには、見覚えのあるキャラクターグッズがついていた。
某ゲームのキャラ――私も好きな作品だったので、思い切って声をかけてみた。

すると驚くほど話が合った。
私だって友達は普通にいる。
でも、彼と話すようになってから、学校が少し楽しく感じられるようになった。

今日も登校中に彼を見かけた。
なぜかやたらとキョロキョロしている。
声をかけると、妙に慌てた様子で「秋服がどうの」と言い訳めいたことを言った。

仕方ないので、私は制服のブレザーを少し広げて見せてあげた。
私のブレザー姿をじっと見たかと思うと…

「ブレザー、いいよね。」

……ちゃんと、私を褒めなさいよね。

その日、彼はずっと落ち着かない様子だった。
授業中も視線をあちこちに飛ばしたり、かと思えば先生をじっと見つめて、何とも言えない顔をしていたり。

見ていて可笑しくもあるけれど、どこか気になる。

そして、休み時間。
彼は幸せそうな顔で、クラスを――いや、女子を――眺めていた。

すると、鼻から赤い物がスッと…。

鼻血が垂れていた。

しかも、結構な量。

慌てて保健室に連れていって、処置をしてもらう。
しばらくして落ち着いたと思ったら、今度は保健室の先生を凝視し始め――

またしても、鼻血。

先生も彼も慌てていたけれど、私はその光景を冷静に見つめていた。

(……そうか。彼も、私と同じような――)


能力を使っているうちに、いくつかわかってきたことがある。

一人の人間に対して、服を一枚だけ透視する程度――
このくらいなら、ほとんど負荷はかからないようだ。

けれど、対象が二人、三人と増えていくと、突然キャパシティを超えてしまうらしい。
結果として出てくるのが、鼻血という情けないリスクだった。

「鼻血なんて、ベタすぎるでしょ……。」

そんなことを呟きながらも、彼は今日もせっせと透視を続けていた。

最初は一枚だけだった透視も、今では二枚、三枚と重ねて見ることができるようになってきていた。
――使えば使うほど、能力が少しずつ強くなっていく。
そんな感触があった。

その様子を、遠くからじっと見つめる影があった。

橋本さんだ。

校庭の端、木陰に立つ彼女は、じっと彼の背中を見つめながら、小さく呟く。

「……いい加減、痛い目見せた方がいいのかな。」

(っていうか……どんな能力か知らないけど、私に構わなくなったのが許せない。)

彼女の周りで不自然に落ち葉が揺らめいていた。


最近、能力のことばかりに夢中になっていたせいで、橋本さんと話す機会が減っていた。
そんなある日、久しぶりに彼女の方から声をかけてくれた。

「ねぇ、新作のゲーム買った? 良かったら……うち来てやらない?」

……えっ?

橋本さんの“うち”って、まさかの自宅!?
女の子の部屋に――俺が!?

ゲームの話ももちろん気になる。けれど、それ以上に頭の中は別のことでいっぱいになった。

「行きます!いや、いかせてくださいっ!」

反射的に飛び出た言葉に、橋本さんは少しだけ呆れたように笑って言った。

「……なんで敬語なのよ。でも、変なことしたらダメだからね?」

完全に釘を刺されたけれど、それでも嬉しさは隠せない。

「う、うん、もちろん……!」

約束は土曜日。
それまでにお土産、何を持っていくか悩まないと……。
そんなことを考えながら、俺はその日を指折り数えて待ちわびていた。

約束の当日、俺は駅前でケーキを買った。
せっかく呼んでもらったのだから、手ぶらでは失礼だと思って。
家族にも渡せるように、少し多めに包んでもらった。

そして今、橋本さんの家の前に立っている。
心臓の鼓動がうるさいくらいに響いて、落ち着かない。

震える指で、インターホンのボタンを押した。

ピンポーン。

数秒の静寂のあと、インターホンから声が聞こえた。

「はい。」

橋本さんの声だ。自然と背筋が伸びる。

「あ、酒井です。」

「はーい、今開けまーす。」

たったそれだけのやり取りなのに、胸の奥がふわっと温かくなる。

俺のことを呼んでくれた。
少なくとも、嫌われてはいない――そう思えるだけで、なんだか嬉しい。

(……少しだけ、期待してもいいのかな。)

ガチャリ、と扉が開く。
姿を現した橋本さんは、私服だった。

制服姿とはまた違う雰囲気。
いつもより少しラフで、だけどどこか品があって。
その姿がとても新鮮で、なにより……とても可愛く見えた。

二階建ての一軒家。
彼女の部屋は、その二階にあるらしい。

「……恥ずかしいから、あんまりジロジロ見ないでね。」

そう言いながら、橋本さんは部屋へと案内してくれた。

白とピンクを基調にした、まさに“女の子らしい”空間。
ベッドの上にはぬいぐるみが並び、壁には可愛らしいポスターが貼られていた。

自然と視線があちこちに向いてしまう。
キョロキョロしている俺を見て、橋本さんは苦笑したあと――

「お茶、持ってくるね。」

そう言って、部屋を出ていった。

……ひとりきり。

女の子の部屋に、初めて入った。
そして、そこでたった一人で待たされているこの状況。

(余計なことをしたら即死だ……。)

そう自分に言い聞かせながら、渡されたクッションの上に正座して、ひたすら静かに待った。

数分後。

ケーキとコーヒーの乗ったトレイを持って戻ってきた橋本さんは、その姿を見てクスッと笑った。

「もう、そんなに固くならないでよ。」

テーブルにカップが置かれ、ほわりと香るコーヒーの香りが緊張を少し和らげてくれる。

「ここのケーキ、私も好きなんだよね。家族の分までありがとう。」

その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなった。
どうやら――今日のお土産は、正解だったらしい。

少しだけ、肩の力が抜けた気がした。
ちなみにご家族は、と言うか母親は夕方に帰ってくるらしい。
それまで二人っきりだ。


今、俺は橋本さんのベッドの上にいる。
そして――彼女に押さえつけられていた。

だが、決して色っぽい状況ではない。
なぜなら俺の上にまたがる橋本さんは、仁王立ちで、明らかに怒っていた。

目にはっきりと怒気が宿っている。
……なぜこんなことになったのか。

話は少し前に遡る。


持参したケーキを一緒に食べたあと、橋本さんが入れてくれたコーヒーを口にした。
香りが良くて、味も本格的だった。聞けば、豆から自分で挽いているらしい。

「今日のために選んできたんだ。」

そう言われて、胸が少し熱くなった。
俺もコーヒーは好きだ。話が弾み、今度一緒に豆を買いに行く約束まで取りつけた。

――これは、もしかしてデートの約束……?
そう思ったら、嬉しさで胸がいっぱいになった。

そのあとはゲームを一緒にプレイした。
くだらないことで笑い合い、勝敗に一喜一憂しながら、時間が過ぎていった。

日が傾き始めたころ、彼女がぽつりと口を開く。

「酒井くんってさ……超能力、使えるよね?」

一瞬、時が止まった気がした。

(……ばれてた!?)

「えっと……ちょ、超能力?」
なんとかとぼけてみる。

けれど、橋本さんはクスリと笑った。

「私も使えるの。たぶん、同じ力かもって思ってた。」

(……同じ?まさか、橋本さんも透視を!?)

驚いて訊き返す。

「え、えっ!?橋本さんも透視能力、使えるの?」

途端に、橋本さんの笑みがスッと消える。

「は? 透視?なにそれ。」

……しまった。

誤魔化しきるべきだった。
なぜ、あんな余計なことを……。

透視能力なんて、普通の感覚なら嫌悪されてもおかしくない。
まして相手は女の子だ。

「なるほど、やっと話が繋がったわ。教室で鼻血出したのはクラスの子を見てたんだ……保健室では先生を、ね。」

明らかに空気が変わった。
不機嫌どころではない。怒りが、にじみ出ている。

彼女は俺を真っ直ぐに見据えて言った。

「どうせ私のことも……透視してたんでしょ?」

(……あ。)

能力に目覚めたばかりの頃、ブレザーを一枚だけ透視したことがあった。
それ以来、無意識のうちに、橋本さんを見るときだけ能力を“切っていた”。

「いや、俺橋本さんは見てないや。」

だが、言った瞬間に悟る。

(――それは、最悪の答えだったようだ。)

「は? 何それ?他の子は見るのに?私の裸は見る価値ないってこと?」

彼女の顔に、はっきりと怒りが浮かんだ。

「ち、違うよ!そういう意味じゃ――!」

次の瞬間。
目に見えない力に弾かれたように、体が浮かび――

ドスン、とベッドに叩きつけられた。
痛みはなかったが、あまりの衝撃に声が出なかった。

そのまま橋本さんが俺の上にまたがり、睨みつける。

その背後では、ぬいぐるみたちがふわりと宙を舞っていた。

(……なるほど。サイコキネシス……ってやつか。)

ようやく、彼女の能力がわかった。
と同時に、今の状況の意味も――痛いほどわかってきた。

俺のピンチは、まだ終わっていなかった。

「透視する!透視するからっ!」

叫ぶように訴えると、橋本さんはキッと睨んで答えた。

「……そんなこと言われて、喜ぶと思ってるの?」

……正論すぎて何も言えない。

「私に興味ないくせに、なんでうちに来たのよ……。」

ぽつりとつぶやくその声には、怒りよりも、どこか寂しさが混じっていた。

「ち、違うんだって!それは誤解で――男には色々あるんだよ!」

必死で弁解するも、その声は届かないようだった。

「他の女の子たちは、あんたに勝手に透視されて……恥ずかしい思いをしたんだよね?だったら、私が代わりに仕返ししてあげる。」

(代わりってなに!?)

思わずツッコミたくなる理屈を言いながら、橋本さんの能力が再び発動する。
俺の両腕が無理やり持ち上げられ、シャツがズリッと脱がされた。

「ちょ、待って!これは良くない!完全に良くない!」

「何言ってるのよ。今までやってきた報いを受けなさい。」

完全に暴走モードに入っている。

さらに力を使って、次の服を脱がそうとしてくる。

「い、いいのか!?これ以上続けるなら……透視するぞ!?橋本さんの裸、見ちゃうぞ!?」

そう脅しのつもりで言うと――

「できるものなら、やってみなさい。」

……逆に煽られた。

言葉に詰まる。
だが、この状況を打開するには……やるしかない!

覚悟を決めて、橋本さんを凝視する。

セーターがふっと消えた。

「セーターの下はキャミソール……!かわいいと思います!」

思わず本音が出てしまった。

さすがに気まずかったのか、橋本さんは咄嗟に胸元を押さえた。
その瞬間、俺にのし掛かっていた力がふっと弱まる。

(チャンス!)

体勢を立て直そうとしたその時――

「……っ!」

橋本さんが、俺に向けて手をかざす。

(なるほど。手の動きで能力をコントロールしてるのか……)

情報が揃ってきた。

この力の発動条件と、制御の方法。

もしかしたら――
この状況、ひっくり返せるかもしれない。

「……いいのかな?次はズボンだぞ?パンツ見ちゃうぞ?」

そう口にすると、橋本さんの表情が一瞬だけ強張った。
だが――すぐに意志を取り戻したように、彼女の力が再び強まる。

(効かないか……!?)

と思ったその瞬間、俺の腰元がずるりと引っ張られる。

(うお……!)

ズボンのボタンが器用に外され、ジッパーがゆっくりと降りていく。

(……コントロール、めちゃくちゃ正確だな。冷静に感心してる場合じゃないけど。)

こちらも負けてはいられない。

さらに集中する――
視線の先、橋本さんのズボンがスッと消える。

そして、現れたのはリボンのついた可愛らしいピンクの下着

(ああああああああああああ!!!)

彼女は俺の上にまたがるように仁王立ち。
その状態で、パンツ丸出し。

刺激が強すぎる。理性が崩壊しかけた。

「ピンクのパンツ、かわいいです!しかも、この角度からは……なかなか、破壊力高いです!!」

見上げる形になるそれは、思っていた以上に危険だった。

橋本さんは顔を真っ赤に染めたが――すぐに表情を引き締め、
そのまま俺のズボンを完全に脱がせにかかる。

(マジかよ……こっちの羞恥返し!?)

パンツ一枚の姿で押さえつけられながら、目の前では彼女もパンツ姿で仁王立ち。
まさに――能力で服を剥ぎ合う、極限の心理戦

お互いに睨み合いながら、
どちらが先に折れるか。どちらが先に羞恥に負けるか。

もう、これは“刺し合い”だった。

能力と羞恥、視線と怒り――
言葉も交わさず、ただ沈黙の中で、熱を帯びた時間が流れていく。

……冷静に考えると、かなりまずい。

橋本さんは恐らくキャミソールと下着。
一方の俺は、シャツとパンツだけ。
一枚差で、すでに追い込まれている。

しかも――

俺の透視能力は、一度に全部透かせるわけじゃない。
“服を一枚ずつ”透かしていくタイプだ。

そのことに、橋本さんも気づいていた。

「話しててわかったけど……あなたの能力って、“全体”じゃなくて、“一枚ずつ”透かすのね。……余計にエッチだわ。」

こっちの手の内がバレたうえに、変態認定までされてしまった。

(た、確かに……極めれば上半身はちゃんと服を着せたまま、下半身だけ丸出しみたいなこともできる……のかも……)

でも、実際には見えているだけで脱がしているわけじゃない。

「あなたの方は、あと1枚か2枚が限界ってところでしょ?私は脱がせてるだけだから、何枚でもいけるけどね。」

言葉だけでなく、能力の性能面でも橋本さんが圧倒的に上だった。
そもそも――透視サイコキネシスじゃ、戦力差がひどい。

「……わかってないな。」

俺は、勝ち目がないなりに強がってみせた。

「今、橋本さんはパンツ丸出しだよな?じゃあ、最後の1枚をパンツに使えばいい。下から見上げた景色はさぞ絶景だろうな!」

言った瞬間、橋本さんが俺にかざしていた左手を一瞬、下腹部のあたりに動かしかけた。

(まさか効いたか……!?)

しかし、すぐに手を戻し、再び俺の方に向けられた。

「ふん……できもしないくせに。そんな細かい指定、まだできないでしょ?それに――その度胸、あなたにあるの?」

(ぐっ……!)

完全に図星だった。

透かせるとしても、次はキャミソール。
そして――本当に“そこ”を見てしまう勇気は……正直、ない。

だが――このまま引くわけにはいかなかった。

「舐めるなよ!」

そう言いながら能力を発動した。

その瞬間、視界がふさがれた。

どうやら、シャツを脱がされたらしい。

そして、視界が明るくなると、そこには下着だけの橋本さんがいた。

上下お揃いの、淡いピンクの下着。
部屋の雰囲気ともよく合っていて、とても可愛い――そして、エロかった。

「ちょっ!何、大きくしてるのよ!」

見下ろす橋本さんが、眉をひそめる。
どうやら、パンツの盛り上がりに気づかれたらしい。

「仕方ないだろ!生理現象だよ!思春期の男の前で下着姿になる方が悪い!」

「なってないわよ!勝手に透視してるだけでしょ!」

……確かにその通りだった。

客観的に見ると、ベッドに押さえつけられている男と、
その上に仁王立ちで服を脱がせていく女――

なかなか見られない光景だ。

(……写真一枚くらい欲しいな。残念だけど。)

そんなことを考えていたとき――
パンツがずり、と動いたような感覚が走る。

「ちょ、待とう!パンツはまずくないか!?冷静になろう!」

「たくさんの女の子の裸、見たんでしょ?これはその報いだって言ったじゃない。」

(いやいやいやいや!この能力、せいぜい下着までしか透けないんだよ!?裸なんて一度も見てない!!)

俺は顔を真っ赤にしながら叫んだ。

「次、こっちが能力使ったら――確定で下着が消えるぞ!?おっぱいか、下!見ちゃうぞ!!」

頭がカーッと熱くなる。鼻血の予兆だ。

初めて来た女の子の部屋のベッドで鼻血まき散らすなんて――
それだけは避けたい。

(頼む、引いてくれ……!)

そんな俺の必死の訴えに、橋本さんは一瞬だけ表情を曇らせた。
……けれど。

「別にいいわよ。その代わり――もっと恥ずかしいことしてやるんだから。」

その目は、もう正気とは思えなかった。

橋本さんの左手が、すっと動いた。
次の瞬間――下半身が、急に涼しくなる。

同時に、鼻先にツッと温かい感覚が走った。

視界の端に、赤いものが垂れていくのが見える。

(……あ、鼻血……)

そして、視線の先には――

パンツ一枚の橋本さんが立っていた。
上半身は、何も着ていない。

生まれて初めて目にした、女性の胸。

ブラジャーで押さえつけられているせいか、少し窮屈そうにしているのがまた……たまらなく愛らしかった。

「……おっぱい。」

思わず、呟いてしまった。

橋本さんは、さすがに恥ずかしさを感じたのか、
右手で俺を押さえつけながら、空いた左手で胸元を隠す。

けれど、その動作は完全に間に合っていなかった。

「……一応、聞くけどさ。」

抑えた声で問いかけてくる。

「その鼻血……私の裸を見て、興奮したってことでいいの?」

ここで「はい」と言えば、少しは空気が和らいだのかもしれない。

だが――
時折、悪い選択肢を選びたくなってしまうのが、俺の悪い癖だった。

「いや、ほら……保健の先生が言ってたじゃん。エロいからって鼻血は出さな――ああああああああああああ!!!」

股間に、見えない何かがぶちゅっ!と掴みかかってきた。

痛いというより、強烈な衝撃。

理屈抜きでわかる――これは完全に怒っている。

橋本さんは、胸に当てていた左手を外すと、
なにやら空中で指をくるくると動かし始めた。

その瞬間――

さっきまで宙に浮かんでいたぬいぐるみたちが、一斉に動き出す。

手足を押さえられ、仰向けのまま――全裸で大の字にされてしまった。

(えっ!?)

さすがに状況がカオスすぎる。

必死で橋本さんの顔を見た。

その鼻の下を、一筋の血が流れていた。

(鼻血……!)

「橋本さん!鼻血出てる!もうやめよう!俺が悪かったってば!」

けれど、その声は届かない。

彼女の目にはまだ怒りの火が灯っていた。

「……よく、そんな小さいちんちんで……私のことバカにできたわね。」

(えっ……!?)

さっきのふざけた返しが、“バカにされた”と受け取られてしまったらしい。

「ち、違うって!あれは冗談だよ!あと、小さいは……正直ちょっと傷つきます!」

……まぁ、確かに小さいのは認める。
でもさ――こっちはちゃんと勃起してるし、反応としては真っ当なわけで。

……というか、ちょっと待て。

「あの、一つお伺いしたいのですが……どなたと比べておられるのでしょうか? もしかして、他の方々のを見たことが?」

なぜか丁寧語で聞いてしまった。

すると、橋本さんの動きが止まる。
頬がうっすら赤く染まり、少しだけ目が泳いだ。

「ば、バカ……!見たことなんてないわよ!……酒井くんのが、はじめてよ。」

(……はじめて……)

そうか。俺が、はじめて。

ってことはつまり――

(処女……)

自然と顔がニヤけていたらしい。

「……なにニヤニヤしてるのよ。状況、わかってないみたいね。」

そう言うと、橋本さんは再び右手を動かした。

その動きに呼応するように――
股間のあたりに、ふわりとした見えない力場が広がっていく。

(……な、なんか始まる!?)

股間に集まった見えない力が、
ふいに振動するような――あるいは上下運動のような、奇妙な動きを始めた。

「な、なにこれ……っ!?」

初めて感じる感覚だった。

自分の手で触れるのとはまったく違う。
比べものにならないほど――気持ちいい

「だ、ダメだ!やめて……っ、出ちゃう……!」

何もない空間が、まるで意思を持っているかのように、自然に動いている。
見た目には何も起きていないのに、確かに刺激だけが襲ってくる。

「恥ずかしいね。女の子の前で出しちゃうの?」

挑発するような口調。
けれど、その裏にあるのは――どこか微妙な余裕と、好奇心。

(こんなテク……まさか、橋本さん自身に試して……?)

そう考えた瞬間、ダムが決壊した。

「う、うああっ……!」

びくんと腰が跳ねる。

先端から、ぴゅっ、ぴゅっと白濁が飛んだ。

それでも、動きは止まらなかった。
刺激は途切れることなく続く。
勃起してなお被っていた包皮を器用に剥いていく。
そして、敏感な亀頭に触接刺激がぶつけられた。

「ちょっと待って!やばいって……!また、また……!」

懇願もむなしく、再び射精

ガクッと全身の力が抜けた。

その放たれた液体を、
橋本さんは空中でふわりと受け止め――ティッシュで優しく包んだ。

「……お見事。」

そんな俺の言葉に小さく笑う彼女を見て、俺は悟った。

――完全に降伏だ。

だけど、なぜか。
胸の奥は、不思議と温かかった。

……これは、もしかしたら――

幸福なのかもしれない。


橋本さんは、小さくなった俺のそれを、黙って丁寧に拭いてくれた。

「……自分でやるから、大丈夫だよ?」

そう言ってみたものの、手は止まらなかった。

もしかしたら――罪悪感がこみ上げてきていたのかもしれない。

服を着直した俺を見てから、橋本さんは呟いた。

「……酒井くん、ごめんね。完全に……やりすぎた。」

彼女は、しょんぼりと視線を伏せた。

そして、ポツリと呟く。

「……誘っておいて悪いけど、もう……帰って。」

胸が痛んだ。

(このまま帰ったら……俺たち、もう元に戻れない気がする……)

「ちょっと待って! さすがに今帰るのは――」

言いかけたとき、橋本さんの鼻からスッと血が落ちた。

そして、彼女のまわりに空気の壁のような力場が形成される。

(……このサイコキネシスは…恐らく完全な拒絶だ)

このままでは、力づくで部屋からはじき出される――
でも、どうしても伝えたいことがあった。

俺の能力は……透視能力じゃない。

きっと、“表面にあるものを消す力”だ。

ならば、この力場も消せるはずだ。

橋本さんを強くイメージして、力を解放する。
鼻の奥が熱くなる。今日、何度目の鼻血だろうか――

視界がぶれる中、俺の力と、橋本さんの力がぶつかる。

ぶわっと風が吹いたような感覚のあと――

力場は、消えていた。

「……なんで!?」

狼狽える橋本さんに向かって、一気に距離を詰めて――
そのまま、ぎゅっと抱きしめた。

「橋本さん!ずっと好きでした!……こんな別れ、嫌です!!」

沈黙。

(ダメだったか……)

そう思った瞬間。

彼女の腕が、俺の背中に回される。

「……ありがとう。私も、好き。」

心が――通じた。

その瞬間だった。

ガチャッ。

ドアが開く音。

「紗菜ちゃん? お友達が来てるって聞いたんだけど――って……あらあら。お邪魔だったわね。」

橋本さんのお母さんだった。

鼻血を流しながら抱き合っている俺たちを――
彼女はどんな顔で見ていただろうか。

橋本さんが、顔を真っ赤にして何かを言ってる。
でももう、俺には心の準備ができていた。

羞恥も、誤解も、これからのすべても。

……もう、全てを受け入れる覚悟はできている。


エピローグ

「……超能力、消えちゃったね。」

あれ以来、俺たちはふたりとも力を失った。

俺はともかく――
それなりにサイコキネシスを日常で活用していた橋本さ…いや、紗菜は、少し困っているようだった。

「まぁいいじゃん。俺が近くにいるときは、俺がサイコキネシスの代わりするからさ。」

そう言うと、紗菜は俺の顔を見て、にっこりと笑った。

「やだ。私が近くにいるときは、私にくっついてなさい。」

腕をからませながら、そう返してくる。

「やっぱり……失った力より、得たもののほうが大きすぎるな。」

「そうね。もう他の女の子の裸見る心配もないしね。」

……こうして、ことあるごとに言ってくる。

「だからさ、裸はあの時の紗菜しか見てないって。下着までだって。」

「下着だってダメに決まってるでしょ?」

……まぁ、それはそう。

「ちょっと聞きたかったんだけどさ、なんで私のこと透視しなかったの?」

「…男はな、一番好きな子は逆にエロい妄想とか、そういった対象に出来なくなることがあるんだよ。」

正確に言えば、一番好きな女の子は”おかずにしにくい”だが、さすがにオブラートに包んだ。

「ふーん、そうなんだ。」

ちょっと嬉しそうな顔をしている。

「それとね、今日もお母さんが“連れてこい”ってさ。」

少し面倒くさそうな顔をしながら、紗菜が言った。

あんな初対面だったのに、妙に気に入られてしまったらしい。

俺がひとり暮らしなことを知ると、ちょいちょい晩ご飯に誘ってくれるようになった。

「ありがたいけど……迷惑じゃないかなぁ。」

最近、少し甘えすぎてる気もしていた。

「お母さんね、男の子も欲しかったんだって。だからあなたのこと、かわいくて仕方ないみたいよ?」

そう言われると、なんだかくすぐったい。
料理も美味しいし、お母さんも紗菜に似て、けっこう美人だし――

(……うん、ありがたい話だよなぁ)

と、鼻の下が少し伸びていたところに――

ゴスッ!

横から強めの衝撃が飛んできた。

(また紗菜に突っ込まれたか……)

そう思って彼女の方を見ると、なぜかじっと、自分の手を見つめていた。

「……あれ?」

…まさか。

「超能力が…戻った?」

すると紗菜は俺の方を見てにっこり笑った。

「なーんちゃって。」

END


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