戦争をしようとしているのは実は誰か
横暴さをどんどんむき出しにしてくる中国に対して、その横暴さと妥協を図ることでしか、日本を平和に導いていくことなどできない、軍事バランスを整えようとすることは双方の軍拡を招くだけだと考える立場も一応あることは理解できる。
だが、平和に対する考え方は一種類しか存在しないわけではない。中国の横暴を認めない姿勢を示し、アメリカ、フィリピン、ベトナム、オーストラリア、インド、欧州諸国などとも連携しながら、軍事バランスの均衡を図り、その行動を抑制していくことでしか、日本を平和に導く道はないと考える立場もある。この立場からすれば、中国の横暴さと妥協を図るというのは、中国の増長を許すことになり、日本の自主性を失っていくことを意味する。
実際に中国のプレゼンスが大きくなった尖閣諸島周辺では、日本の漁船が操業できなくなってきている。こうした事態の放置は、やがては私たちが大切にしたい自由・民主主義・基本的人権の尊重・法の支配といった当然の価値観さえどんどん掘り崩されていくことにもつながる。
中国は軍事的には日本よりも弱いフィリピンに対して、はるかに暴力的な動きに出ていて、フィリピンの漁船団に高圧放水銃を向けて怪我をさせたり、ロープを切断したりするようなことまで行っている。ブータン王国では、ブータンの領土の中に中国側が勝手に集落を形成して、事実上中国領として扱っているところもある。侵食された領土はブータンの国土全体の20%程度はある模様だ。
スプラトリー諸島のジョンソン・サウス礁の領有権を主張するために、同礁を体を張って守ろうと、海に入って一列に並んだベトナム兵64名に対して、中国の人民解放軍の艦船は一方的な機銃掃射を浴びせて皆殺しにするようなことも行われたことがある。こうした中国の横暴を許さない姿勢の先頭に立つことこそ、アジアにおいて日本に求められている役割だと考える立場もあるのだ。
一国の総理に対して「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」とまで平然と言ってくる中国の横暴を大きなこととしては扱わず、悪いのは逆に高市総理の方だとする左派の主張に、大半の国民は同意しなかった。にも関わらず、こうした国民多数派の捉え方をあたかも「戦争への道」であるかのように扱い、中国と妥協する以外に平和への道はないのだとする独善性に、左派勢力は陥った。
この結果として、左派の中では「#ママ戦争止めてくるわ」は大バズりし、Xでのトレンドの1位に躍り出たものの、違う前提を持つ大多数の国民には全く受け入れられず、逆に気持ち悪さを印象付けることになったのではないか。
そしてこの点に、「中道改革連合」の矛盾が端的に示されているとも言える。「中道改革連合」は、「中道」の高邁な理念を説き、分断と対立をエネルギーとするのではなく、色々と異なる意見を聞き、粘り強い対話で合意形成を図っていくことが大切だと訴えていた。日本側とは全く意見の異なる中国側の言い分も聞き、粘り強い対話で合意形成を図っていくべきだと言いたかったのであろう。だが、中国の横暴を容認しない立場に立つことをあたかも戦争勢力であるかのように決めつけることで、日本国内に不要な分断と対立を持ち込むという矛盾を示したのだ。