入居者の投票用紙を取り寄せ、「代筆」として勝手に候補者名を記入する。不正横行の背景にある、ザルすぎる制度とは。
高市早苗って誰だ? 社会問題やそれに対する政策もわからないし、そもそも選挙が行われることすら知らなかった。そんな状態なのに、自分の「1票」がいつの間にか投じられていたなんて……。
来る衆院選では、こんな高齢者が続出するかもしれない。実は選挙のたびに、職員が入居者になりすます「偽造投票事件」が全国各地の老人ホームで頻発しているのだ。
立て続けに起こっている偽造投票事件
'19年の福井県知事選では、特別養護老人ホーム(特養)の施設長らが認知症の入居者5名の投票を偽造。'21年の衆院選では静岡県伊東市の施設職員が入居者2名になりすました。'22年の参院選、'23年の大分県知事選、'24年の神奈川県藤沢市長選でも同様の事件が起きている。
さらに'25年7月の参院選では、大阪府の2つの高齢者施設で、職員らが入居者35人分の投票を偽造するという大型事件も発生した。
「過去の事件は数名程度なので、35人は異例の規模です。不正を行ったのはエリアマネージャーの男性と、2人の女性職員。入居者の投票用紙を無断で使い、介護団体から立候補した人物の名前を記入した。2つの施設は同じ会社が運営していましたが、組織ぐるみでやったわけではなく、職員の独断での犯行とされています」(施設関係者)
いずれの事件でも不正の舞台となったのは、「不在者投票施設」として指定された老人ホームだ。病気や障害で投票所に行くのが難しい有権者が、都道府県の選挙管理委員会(選管)から指定を受けた病院や老人ホームで投票を行える制度で、指定施設は全国に2万ヵ所以上ある。
高齢者施設の場合は、老人福祉法で定められた特養やケアハウスなどが対象。施設側から申請し、通常、2〜3ヵ月ほどの審査期間を経て指定される。入居者50人以上が目安で、人員や投票スペースが確保できるかなどが審査対象となる。