自民圧勝で防衛力強化が加速?ドローンや原潜導入構想「現場は疲弊」
「防衛力の抜本的強化」を掲げる高市早苗首相のもと、自民党が衆院選で戦後最大となる3分の2超の議席を確保した。防衛省・自衛隊の内部では、防衛力の拡大政策が加速するとの見方もあり、「組織や環境が追いつかない」との懸念も漂う。
高市政権は昨秋の発足後、防衛費を国内総生産(GDP)比2%にする目標を前倒しして、今年度の防衛費を計約11兆円に増額している。米トランプ政権は同盟国に軍事負担増を求めており、自民はさらなる予算拡大を視野に、選挙戦で「新たな時代に対応した防衛体制を構築する」との公約を掲げた。
そのうえでの衆院選圧勝。投開票翌日の9日、防衛省幹部は「まさかここまで極端な結果になるとは」と驚きを隠さなかった。
選挙結果を受けて、防衛省関係者の間では、中国の軍備拡張などを念頭に、防衛装備品の購入や組織の新設が加速するとの受け止めが広がる。
自衛隊員の待遇改善などへの期待感もあるが、現場の実態を踏まえない政策が進められることへの不安もくすぶっている。
防衛省内でささやかれる「ハリボテ構想」
例えば、ドローンの大量導入。
政府は沿岸を防衛する「シールド構想」を打ち出し、来年度予算案に攻撃型ドローン数千機を初めて購入する予算1千億円超を計上している。高市首相は選挙戦で、ドローンを活用した「新しい戦い方」にさらに備える考えを街頭で訴えた。
しかし、防衛省関係者によると、ドローンを本格的に運用するための環境や運用構想が自衛隊には今のところないという。
ドローン戦の本格的な訓練には広い土地が必要とされ、米国では東京23区よりも広い演習場が使われている。それに比べて国内の演習場は小規模で、訓練時にコントロールを失えば近隣の民間地に墜落しかねない。
電波の問題もある。大量のドローンを動かすには多くの周波数帯を使用するほか、敵のドローンには電磁波を放って攻撃するが、その訓練も周辺の民間人のスマホやテレビを故障させる恐れがある。
自衛隊での運用が定まらないまま装備の導入が先行する状況に、防衛省関係者は「省内外で『ハリボテ構想』とも呼ばれている」と打ち明ける。
原潜導入にも壁 「現実は簡単ではない」
自民が維新との連立時に合意した「次世代動力艦の保有」にも不安の声があがる。原子力潜水艦の導入を念頭にしたものだが、防衛省内では否定的な受け止めが少なくない。
原潜は長期間にわたる潜航が可能で、大型化により長射程のミサイルも搭載できる。ただ、原子炉を扱う専門性の高い人材が必要なうえ、艦も大きくなるため、定員は通常動力型(約70人)の2倍ほどが必要になる。
自衛隊は毎年2万人の定員割れが続いており、特に海上自衛隊は人手不足が深刻だ。中でも、密閉空間である潜水艦は最も過酷な職場とされる。音で他国の艦艇に位置を探知されないようにシャワーは3日に1回。隠密行動のため家族にも出航期間を伝えられない。
政府は自衛隊員の給与の改善などを打ち出しているが、それで人手が確保されるかは見通せない。ある防衛省幹部は「現実は、簡単にはいかない」と話す。
緊張続く現場 「外交努力もしてほしい」
高市首相の「台湾有事」発言以来、日中関係の悪化は深刻さを増す。12月には中国の空母艦載機が日本の戦闘機にレーダー照射する事案も起きた。
連立を組む維新は衆院選で「専守防衛」から「積極防衛」への転換を公約に掲げており、そうなれば中国の警戒をより強めるおそれもある。
自衛隊機による中国機への緊急発進は常態化しており、2013年度以降は年間400回を下回ったことがない。ある防衛省関係者は「現場は疲弊している。防衛強化と同時に、偶発的な衝突がエスカレートして戦争につながらないよう外交努力もしてほしい」と語る。
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