概要
日本に伝わる御伽噺のひとつ。
勧善懲悪ものの定番であり、日本では抜群の知名度を誇る昔話及び英雄である。
この為、本作をモチーフにした作品やキャラクターも多い。
桃太郎伝説の原形には諸説あり、発祥の地の候補も数多存在するが、有力とされるのは、鬼ノ城に住んで地域を荒らした温羅(うら)という鬼(蝦夷等の先住民か)を、吉備津彦命が3人の家来(犬飼健(いぬかいたける)・楽々森彦(ささもりひこ)・留玉臣(とめたまおみ))と共に討ち倒したという伝説である。→「吉備津彦」
そんなわけなので、今日の岡山県は桃太郎ゆかりの地として定着している。
吉備津彦の弟の稚武彦命が桃太郎のモデルだとする説もある。
また、陰陽道を大衆に紹介する目的の話だったという説もある。
なお、古代中国には川から流れてきた竹から生まれた人間が王になる竹王の伝説がある。
物体が流れる擬音「どんぶらこ」を日本一有名にした昔話であり、『ドラえもん』のドンブラ粉や『流星のロックマン2』のドンブラー湖、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』などのフィクション関連ワードの由来になった。
物語
あらすじ
ある村に老夫婦が住んでいた。
ある日お爺さんは柴刈り(薪集め)、お婆さんは洗濯へと出かけた。お婆さんは川から流れてきたとても大きな桃を拾い、手土産に家へと持って帰る。その桃を割ってみると、なんと中から元気な男の赤ん坊が出てきたのだった。
二人はこの子を『桃太郎』と名付けて大層可愛がって育て、桃太郎も数年たたずにあっという間にたくましい少年へと成長していった。その頃、村に頻繁に鬼が出入りして村を荒らしまわっており、このことに憤った桃太郎は、鬼退治を決心し、彼らの根城である「鬼ヶ島」へと旅立つことにした。
それを聞いた老夫婦は、桃太郎のために武器や衣装を用意し、またお婆さんはきびだんごを持たせてくれ、鬼ヶ島に向かう道中、犬・猿・雉と出会い、きびだんごを与えてお供につける。そして鬼ヶ島にて鬼たちと激闘を繰り広げ、見事勝利して彼らを改心させた。
彼らから反省の印として荷車いっぱいの財宝を渡され、桃太郎は無事に村に帰って幸せに暮らしたという。
改変
勧善懲悪の物語に対するアンチテーゼや後日談、一味加えた話しも多い。→哀しき悪役
江戸時代には、以前「トリビアの泉」でも紹介された「桃太郎元服姿」を始め、いくつかの続編が書かれた。
一例
- 「鬼ヶ島に押しかけた桃太郎こそが悪者なのでは?」という鬼の側に立った見方。
福沢諭吉はこの点で桃太郎を非難している。芥川龍之介に至っては、桃太郎一派が無抵抗の非戦闘員まで残らずうちのめし、猿は鬼娘を犯し、宝物を残らず奪い去っていくという凄まじい虐殺を描き、ラストでは「復讐は単に復讐を呼ぶに過ぎない」という寓意も含めた地獄絵図をその筆致で描き出している。
- 福澤諭吉:桃太郎が鬼が島に行ったのは、鬼の宝を取りに行くためだったということです。けしからぬことではないですか。宝の持ち主は鬼です。鬼の物である宝を意味もなく取りに行くとは、桃太郎は盗人ともいえる悪者です。・・・ただ欲のためにしたことで、ひれつ千万なことです」──『童蒙おしえ草 ひびのおしえ』より(1872年(明治5年)
- 芥川龍之介:桃太郎は鬼ヶ島の征伐を思い立った。思い立ったわけは、おじいさんおばあさんのように山だの川だの畑などへ仕事に出るのがいやだったせいである。(中略)桃太郎は罪のない鬼に建国以来の恐ろしさを与えた。(中略)鬼は、「あなた様にどういう無礼を致したのやら、とんと合点が参りません」と質問した。──<芥川龍之介全集『桃太郎』より)初出:「サンデー毎日 夏期特別号」1924年(大正13年)7月
- 滑川(1981:442-452) が指摘するように、桃太郎の解釈が変化する中で、教材としての是非をめぐる議論も起こった。その初期の例が、1925 (大正15) 年1月発行の『文芸春秋』(新年特別号)で、作家の山本有三が自由主義の立場から第3期の『国語(巻一)」を批判した論考に見られる。山本有三は考察の最後に桃太郎を取り上げ、舞台設定が都会の子どもには理解しにくいことや、明確な理由もなく鬼を伐する理不尽さを挙げて、「この思想は他国人は鬼と思えと言うも同じで、今どき数科書に入れるべき話ではない」と断じている。──『昔話の主人公から国家の象徴へ : 「桃太郎パラダイム」の形成
童謡でも4番の歌詞に「潰してしまえ鬼ヶ島」といった現代の観点からすれば過激な表現があったり、5番に至っては上記のように桃太郎一行が面白がりながら鬼達を蹂躙し尽くす様が歌われていたりと、この見方やそれを示唆する描写は古くから存在していた。
福沢諭吉や芥川龍之介らがこれほど強く桃太郎を批判しているのも、実は明治以前の桃太郎と、それ以降の桃太郎とでは相違点があるためである。
- 明治以前の桃太郎と、明治期以降の桃太郎とを比較すると以下の相違点が確認されている。
- ・明治29年(1894年)出版の巌谷小波の桃太郎より前は、桃太郎が宝欲しさに鬼ヶ島へ行き、鬼は悪さをしていない。
- ・その後、「悪い鬼を退治する」という理由が付け加えられた。
- ・江戸~明治時代のはじめの桃太郎は、鬼から宝を奪い取っている。
- ・明治の終わりごろから、鬼が自ら宝を差し出すようになっている。
2018年(第22回) 文部科学大臣賞 倉持よつば 桃太郎は盗人なのか? −「桃太郎」から考える鬼の正体−より
明治期の児童文学者嚴谷小波が口伝で伝えられてきた多くの民話や昔話を書物の形で再編・再話した際に、「悪い鬼を退治する」と改変されたとされている。
- 次に、 内容の改変について。 例えば、 「桃太郎」において「仔細を申さねば御不審は御道理。 元来此日本の東北の方、 海原遥かに隔てた処に、鬼の住む嶋が御座ります。 其鬼心邪にして、我皇神の皇化に従はず、 却て此の蘆原の国に冦を為し、 蒼生を取り喰ひ、 宝物を奪ひ取る、世にも憎くき奴に御座りますれば、私只今より出陣致し、彼奴を挫に収て抑へ、貯へ置ける宝の数々、残らず奪取て立ち帰る所存。何卒此儀御闇届けを、偏へに御願ひ申します」 と鬼が島を征伐する理由づけが行われている。 こうした改変についても、昔話の研究家からは賛言であり昔話の枠組みを破壊するものであると非難を受けている。──一嚴谷小波「日本昔噺」 叢書一『日本昔噺』(「東洋文庫2001.8.8 平凡社)に掲載より
- 様々な設定の追加・変更
- 鬼退治が暴力的なのでオブラートに包んだ表現に変えたものもあれば、作中の諸所が時代にそぐわない型通りなものという批判もあれば、今どきの青少年像という時代を反映してか、上述した「実は怠け者だった」とする人物像を加えたものもある。
- 後日談
- 桃太郎が鬼から奪い取った金銀財宝をきちんと村人に返すようなシーンが追加されている絵本などもある(一部地域では実際にそう伝承されている)。
- 劇団四季のミュージカル「桃次郎の冒険」は、桃太郎のお話の後日談として、人間側の傲慢さやがめつさや、鬼の中にも優しい者がいる、といった一面を描いている。
作品
余談
時代背景
- 室町時代~江戸時代
- 桃太郎の原典では、文献によって内容の細部が異なっており、「桃太郎は川で拾った桃から生まれたのではなく、川で拾った桃を食べたおじいさんとおばあさんが若いころの体に戻り、その若くなった夫婦の間に生まれた」「桃太郎が怠け者でなかなか働こうとせず、渋々山へ柴刈りに行ったと思ったら怪力で柴の木ごと引き抜いて持ち帰ったせいで家やおじいさんとおばあさんが木に潰されてしまう」といった筋書きの物も存在する。特に「川で拾った桃を食べたおじいさんとおばあさんから桃太郎が生まれた」とするものは以前は「桃から生まれた」という現代でよく知られている話よりもメジャーであったとされる。これが逆転したのは明治時代になって教科書に載せる際に、子供が読む教科書に「子作り」表現があるのは拙かろうということで後者のバージョンを採用したためらしい。
- 太平洋戦争
都道府県の伝承
- 香川県
- 桃太郎は女の子として伝承されている。これでは桃『太郎』ではないのでは…という事なのか、「美しい娘だったので鬼に存在を気付かれると浚われるということで、敢えて男性名を付けて存在を隠した」と説明付けられたりもしている。ともかく、近年のフィクションで桃太郎が女体化される事が多いが、原型は昔、既に作られていた。
- 岡山県
- 岡山市北区にある地方管理空港の愛称は「岡山桃太郎空港」。お供が犬・猿・雉ではなく、石臼・針・馬の糞・ムカデ・蜂・蟹、あるいは蟹・臼・蜂・糞・卵・水桶というパターンもある(猿蟹合戦なのでは?)。ムカデは毘沙門天の使いとされる。
創作作品
- 妖怪ウォッチ
- 作中ミニシリーズ「妖怪むかしばなし」でネタとして登場し、後半は鬼とパワードアーマーで戦うストーリーにされている。
- 仮面ライダー響鬼
- 昔話法廷
- NHK教育テレビで鬼は差別のために鬼ヶ島に追いやられ、桃太郎もまた生まれの為に差別され、都合のいい時だけ英雄だと持ち上げる人間の醜悪さを嘲笑う為に鬼の襲撃状をでっち上げて鬼たちを殺害した(罪状は「強盗殺人」)という重苦しいストーリーとして再構成された。皮肉にもその様こそ、彼が憎んだ人間の姿であった。
- 鬼も鬼ヶ島の生活が苦しい為に仕方なく、村を襲撃していた為、全面的な被害者というわけでもない(なので、桃太郎にとっては都合が良い相手だった)。一方で、根は善良でもあり、芋の品種改良に取り組んでいたり、桃太郎一行を持て成そうとしていた。
- 桃太郎を育てたおばあさんも鬼を容姿の違いから、露骨に嫌っていた。一方で桃から生まれた得体の知れない子を育てている辺り、良心がないわけではないと思われる(鬼と比べて、桃太郎が人間の容姿と差異があまりなかったから育てる事が出来たとも解釈できる。もしこれが異形の子だったら…)。
- 鬼や妖怪の類は異民族がモデルの一つである為、鬼を被差別者として解釈するのは伝承的にもおかしいことではない。
- 桃太郎のお供はきびだんごだけでおともに加わったのではなく、桃太郎に脅されて加わった。その一方で、手に入れたお宝をSNSで自慢していた。
- Dr.STONE
- 石神千空の養父石神百夜が、科学知識や一般常識を絶やさないために作った「百物語」の内容の一つとして登場。「危険な猛獣」について教える話のためか、桃太郎はケンシロウのようなマッチョで、お供の動物は犬・猿・雉では無く、熊・ライオン・ゴリラ・ワニといった猛獣になっている(千空いわく「何だ、そのワイルドすぎる桃太郎!?」)。
その他
- 桃は古来より東アジア圏において神聖な植物で邪悪を遠ざけるとされ、日本神話ではイザナギノミコトを追って来たヨモツシコメに投げつける事で追い払ったという逸話がある。また、桃の形を女性の尻に例えた事から桃太郎が桃から生まれたという逸話に転じたという説も。
- 桃太郎のお供と鬼の関係は方角に対応しているという説がある。お供は十二支の申、酉、戌の「裏鬼門」に位置し、鬼は丑、寅の「鬼門」に位置するというもの。
モチーフにした作品
タイトルの50音順で掲載。
桃太郎の海鷲の成功を受けて1945年に製作されたアニメ映画。
幼少の手塚治虫がインスピレーションを受けた作品である。
1943年のアニメーション映画。日本初の長編アニメーション作品である。真珠湾を鬼ヶ島になぞらえ、犬、猿、雉が飛行兵となって敵艦隊の攻撃に向かう。
モチーフにしたキャラクター
引き続き50音順で掲載。
複数
※何と桃太郎モチーフのクリーチャーが4体もいる。更にモモキングに至っては主役クリーチャーなので派生が多数存在する。
※異名は全て、桃太郎のお供に由来。
※岡山県のポケふたは桃太郎を意識した人選になっている。ルカリオのデビュー作『波導の勇者』から連想して、ルカリオは桃太郎のポジションである。
※『ポケモンSV』の追加コンテンツから登場する、桃太郎及びお供モチーフのポケモン。舞台のキタカミの里を救ったポケモンとして英雄視されている。
- バトルスピリッツ覇王
- 英雄龍ロード・ドラゴンシリーズ(桃太郎)
- ワン・ケンゴー→英雄犬ロード・ワン・ケンゴー(犬)
- ドス・モンキ→英雄猿ロード・ドス・モンキ(猿)
- キジ・トリア→英雄鳥ロード・キジ・トリア(雉)
- オードラン→オーガ・ドラゴン(鬼)
※陽昇ハジメの使用カード
なお、皇牙獣キンタローグ・ベアーはロードの友人という設定。
単体
関連イラスト
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吉備国 吉備津神社
吉備津彦 犬飼健 楽々森彦 留玉臣 犬猿雉(犬/猿/雉)
鬼 温羅 鬼ヶ島 鬼ノ城
桃から生まれた どんぶらこ
若返り
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関連動画

外部リンク