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冴くんに別れると言ったら、冴くんが私に抱きついて離れなくなってしまった。/Novel by あっちベル

冴くんに別れると言ったら、冴くんが私に抱きついて離れなくなってしまった。

8,000 character(s)16 mins

冴と喧嘩したから家を出ようとしたら、冴が彼女に抱きついて離れなくなってしまった話。

同棲中の冴と喧嘩して、翌朝から名前+くん呼びから名字呼びにしたら離れてくれなくなった(最終的に名前+くん呼びに戻る)、というリクエストいただきまして書かせていただきました!
素敵なリクエストありがとうございます。

感想やリクエストいつでもお待ちしております。
https://t.co/EJP0RN6BF5

ちなみにこちらは御影玲王verです。↓
『玲王くんに別れると言ったら、「お前は俺がいなきゃ生きていけないくせに」と言われてしまった。』
novel/20800430

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「私、冴くんと別れる」

私は本日、同棲中の彼氏の糸師冴と喧嘩した。
冴くんと喧嘩するのは今日が初めてではない。
でも、私から別れようと言ったのは今日が初めてだった。
いつもなら冴くんと喧嘩するたびに私はギャン泣きして、

「わ"だじを捨てないでぇぇぇぇ"」

と、近所迷惑になるほど叫び私から冴くんに謝って仲直り、というのが私達の喧嘩のセットだった。

でもそれってよくよく考えたらおかしい。
毎回毎回喧嘩するたびに私から謝って馬鹿みたいだ。
冴くんはどうせ喧嘩しても私が冴くんの元に私が帰ってくるだろうと思ってる余裕なところもムカついて、私はつい別れようと言ってしまった。

私の言葉に冴くんは表情を変えずに呟く。

「すぐ別れようとか言い出す奴はめんどくせぇ」

ここまで言えば冴くんは私が泣いて謝り出すと思ったのだろう。
でも別に私は冴くんにめんどくさいって言われたぐらいじゃ私は泣かないし。

「……うぅ」

な、な、泣いてないし。
今一瞬目から雫が零れそうになったけど、これ汗だし!!!私泣いてないし!!!!!!!

私は心の中で泣いてないと必死に言い聞かせて、頭の中で3.14から始まる円周率を唱えて涙が出そうになるのを我慢する。
あ、間違えた、汗を我慢する。

「また泣いてんのか?」

私が泣きそうなのがバレたから私は違うと否定する。

「これ汗だから!!」

「目から汗が出るのか?」

「出るもん!!!!」

……もう私は怒った。
冴くんの、私が別れようと言ってもどうでもいいですよみたいな態度に怒った。

「もう私は怒ったぞ!!」

私が怒ったことをアピールすると、そんな私を見て冴くんが馬鹿にしたように鼻で笑う。

「そうか」

ああムカつく!!!
もう絶対冴くんと別れてやる!!!!

私はそう心に決めて……とりあえず寝た。
だって夜10時だったし、すごい眠かったから。
でも流石に冴くんと一緒に寝るのは嫌だったからソファで爆睡した。

でも翌朝目が覚めると私はベッドで寝ていたから、冴くんが私を運んでくれたらしい。
冴くんと喧嘩したと思っているのは私だけみたいでムカつく。
もう絶対家を出ていく。
日本に帰る!!!

冴くんと同棲を始めるということは海外で仕事をしている冴くんに着いていくということで、でもせっかく同棲を始めてもサッカー選手である冴くんは時々色々な国に遠征に行ってしまう。
その度に私は、

「私も行くうゔぅゔ、連れて行って"ぇぇぇぇぇ"」

と大泣きして騒いでいたものだが、いつも"いい子にしてに待ってろよ"と私は言いくるめられてしまっていた。
そんな日々はもう終わる。

私はベッドから起き上がってスーツケースに荷物を詰め始める。
いつもは勝手に冴くんに着いていくために荷造りしていたのだが、今日は冴くんの家から出ていくために荷造りしている。
私が動き出した音で寝ていた冴くんが起きて、眠そうな瞳で私を見つめてくる。

「おはよう。何やってんだよ、旅行にでも行く気か?」

スーツケースに荷物を詰めている私を見て冴くんが呑気なことを言ってくるのにもムカついて、

「おはよう。……私、日本に帰るの」

とだけ返す。

「……日本に?なんで?」

なんでとか言えちゃう冴くんにムカッとした私は、冴くんを睨みつけて言う。

「冴くんと別れるからだよばーーーか!!」

「……は?」

いや、これはなんか違うなと思った私。
流石にいくら怒ってるからって、ばかって言葉はなんかアホっぽい気がするし、子どもっぽいって思われる気がしたから言葉を言い直す。

「さようなら糸師くん、私は日本に帰ります」

糸師くん。
それは初めて私が呼ぶ呼び方だった。
私は出会ってからすぐに冴くんと呼んでいたし、そもそも冴くんには弟の凛くんがいるから糸師くんって呼ぶと二人とも振り向いちゃうし。

でも今はあえて糸師くんと呼んでみた。
私は怒ってますよアピールである。
まぁ、でも冴くんは糸師くんって呼ばれたぐらいじゃ全然怒りもしないんだろうなぁ……。

「あ"?今なんて言った?」

……めちゃくちゃ怒ってるんだけど。

「な、なんで怒ってるの糸師くん」

「俺の名前は糸師じゃない」

何言ってるの冴くん、貴方の名前は糸師ですよ。
というツッコミができなかったのは、冴くんの顔が怖すぎたからだ。

「私は糸師くんと別れます、そして日本に帰りますさようなら」

私は早口で要点だけを伝えてまたスーツケースに荷物を詰め込む作業に戻ると、冴くんが後ろから私を抱きしめてきた。
……抱きしめてくるのは別にいいんだけど、これじゃ私が全く動けない。

「冴くん、離して。私動けない」

「日本に帰ったら殺す」

私を抱きしめたまま、言ってることがめちゃくちゃ怖い。

「俺と別れても殺す」

束縛が激しい人みたいなことを言ってくる冴くんを珍しいなと思いつつ、私は最大限譲歩してあげることにした。

「……じゃあ昨日の喧嘩は仲直りしてあげてもいいから、冴くんから謝って」

「それは嫌だ」

冴くんはわがままだった。


・ ・ ・

あれから数時間後。
糸師冴がコアラになってしまった。

いや、物理的にコアラになってしまったわけではない。
正確には冴くんが私にしがみついて離れなくなってしまったのである。
ずっと私の腰にぎゅっと抱きついたまま、今はソファに並んで座っている。

「あのー……そろそろ離してもらえないかな?」

私がお願いしてみても、

「無理」

それは無理らしい。

「……そういえば冴く……糸師くんは、仕事に行かないの?」

本来ならとっくに家を出ている時間なのにずっと私に抱きついているから心配になって聞くと、

「お前が日本に帰らないし俺と別れないって約束するなら仕事に行く」

と言うので、冴くんは仕事を無断欠勤しているらしい。
なんて悪い子なんだろう。

「あとさ、私のパスポートどこにあるか知らない?さっき部屋の中を探しても見つからなかったんだけど」

まぁ冴くんは私のパスポートがどこに置いてあるかなんて知るわけないかと思いつつ一応ダメ元で聞くと、

「燃やした」

冴くんから返事が返ってきた。
そっかそっか、燃やしたのか……。

「燃やしたぁ!?」

私が驚いて聞き返すと冴くんが眉を寄せて私を見る。

「俺と同棲してんだから、お前はもう日本に帰る必要ねぇだろ。だから同棲始めた日にパスポートは燃やした」

なんと、私はとっくの昔にパスポートを燃やされていたらしい。

「冴く……糸師くんのばかばかばかっ。もう今から新しいパスポート発行してくるから離して!!」

「無理」

ぎゅっと強く私を抱きしめ直してきた冴くんは、本当に私を離す気はないらしい。

「冴く……糸師くん、本当に離して」

「無理だって言ってんだろ」

「でもこのままじゃ朝ご飯食べれないし」

「3日ぐらい食べなくても死なねぇよ」

私は家の中でサバイバル生活はしたくないんだけど。

「あと、トイレ行きたいから離して」

「そんなこと言って、俺が離したら逃げる気だろ」

何を言っても冴くんは私を離してくれない。
ひどい。

「じゃあもうトイレの前まで着いてきてもいいから!お願いだから離してよ!漏れちゃうよ!!」

半泣きで訴えたら冴くんがやっと立ち上がってトイレまで着いてきて本当にトイレの前に立って私が出てくるのを待っている。
家の中のどこを移動するにも冴くんの許可がいるし、ずっと着いてくるし、こんな生活無理。

「早く冴くんと別れてやる……」

と決意したものの、一体どうやって冴くんから逃げ出そうかな。
と考えながらまた冴くんとソファに座り直して、私は携帯を開いて調べものを始める。

【彼氏 離れてくれない】
【彼氏 コアラになった】

……うーん、いい情報がゲットできない。
私の調べ方が悪いのかもしれない。
あ、別れ方を検索してみればいいのか!と閃いた私は、【彼氏 別れ方】と検索して……。

「ふざけんな」

私に抱きつきながら携帯の画面を覗き込んできていた冴くんが、私から携帯を奪って勢いのまま携帯をぶん投げた。
そして携帯は床に落ちて壊れた。

「ひどい、携帯になんてことするの!?謝って!」

「あ?お前が変なこと検索するのが悪いんだろ」

「携帯が痛がってるでしょ、謝って!!」

「……悪かったな、携帯」

ちゃんと冴くんは携帯に謝ってくれた。
……でも私には素直に謝らないくせに携帯にはすぐに謝るの、なんかちょっとモヤっとするな。

「冴く……糸師くんはプライドが高いから人には謝らないくせに、携帯には謝るんだね」

「まぁ壊したし、携帯が痛がってんだろ?俺だって自分が悪いと思えば謝る」

なるほどなるほど、つまり私との喧嘩では自分が悪いとは思っていないってことだね。
ふむふむ。

「……」

そういえば、私と冴くんってなんで喧嘩してるんだっけ。


・ ・ ・

喧嘩した原因を思い返してみる。
それは、私がまだ壊れる前の携帯でバイト探しをしていたときのことだ。

「……何調べてんだよ」

「ん?バイト探し中なの」

「……は?」

思えば冴くんはそのときからちょっと機嫌が悪かった気がする。
冴くんの機嫌が悪いことなんて全く気付いていない私は、聞かれてもいないことをべらべら喋ってしまう。

「冴くんと同棲してても冴くんが家に帰ってこないと暇だし、バイトとかして自分を変えようかなって」

「スペイン語も話せないくせに何言ってんだよ」

「それは……今から覚える」

「俺がいないと一人で街を歩けないぐらいの世間知らずがバイトなんか出来るわけねぇだろ」

「な、何その言い方」

「お前みたいな泣き虫がバイトしたら店も客も迷惑だ」

なんだか冴くんの言葉がキツいし私のことを泣き虫って言うのにもムッとして、私は言い返す。

「……別に普段の買い物だって私は冴くんが着いてこなくても平気なのに、勝手に着いてくるのは冴くんじゃん。私、冴くんにいつも一緒にいてなんて頼んでないよ」

「あ"?」

「そもそも私がバイト始めたい理由だって、冴くんともし別れることになったら一人で生きていけないから貯金しとこうと思ったんだもん!」

と、そこまで話してから私は後悔した。
だって冴くんが物凄く怒っていたから。
別に冴くんは私に怒鳴るとかはしないけど、私を見つめる瞳が冷たかった。

「……お前」

私は何か言おうとした冴くんの言葉を遮って言う。

「私、冴くんと別れる」

これが今回の喧嘩の原因の話である。


・ ・ ・

うーん。
よくよく考えたら今回の喧嘩、悪いのは私では?
いやいやそんなことない、悪いのは冴くんに決まってる。
だって私のことを泣き虫って言ってきたし。

改めて一人になってから私はそんなことを考えている。
そう、今私は一人。
冴くんと3日仲直りしないでいたら流石に冴くんはマネージャーさんに怒られて、冴くんは引き摺られるようにして仕事に向かって行った。

「いってきます。……勝手に家を出たら殺す」

冴くんは家を出る前にそう言ってきたから、

「いってらっしゃい。冴く……糸師くんの言うことなんか聞かないよ、ばーかっ」

と言ってやった私。
そして私は今パスポートを作りに行っている。
ふふん、私だって一人で目的地に向かうことぐらい出来るんだからね。
謎にドヤ顔をしながらパスポートを発行しに行ったら、なんとパスポートは完成するまでに一週間はかかるらしい。

ということはつまり、あと一週間はコアラになってしまった冴くんと一緒に暮らさなくちゃいけない。
本当に飽きずによく毎日冴くんは私に抱きついてくるものだ。

「はぁ……」

私はため息を吐きながら、冴くんに好きに使っていいよと言われていたクレジットカードを取り出す。
これで豪遊してやる。
そして冴くんは来月のクレジットカードの請求額にガクガク震えるがいい。

そう思いながら私はカードを使って可愛い洋服を買ったり、可愛い家具を買ったりした。

「ここからここの棚の商品、全部ください」

っていう、人生で一度は言ってみたい台詞も言ってみることができた。

「ふんふんふーん♪」

こんなにセレブな買い物は初めてだ。
まぁ冴くんは頼めばなんでも買ってくれるけど。
いつもは申し訳なくて遠慮していたけど、今は冴くんを破産させてやろうという気持ちでいっぱいだ。

るんるんしながら歩いていると、ちょうど本屋さんの前を通りかかったときに雑誌の表紙に冴くんが載っていた。
見出しにはこう書かれている。

【超人気サッカー選手糸師冴・彼氏にしたいランキングNo. 1】

「……」

……彼氏にしたくないランキングNo. 1の間違いでしょ、だって冴くんは全然かっこよくないし、コアラだし。

【超イケメン・超ハイスペック】

って書いてあるのは認めるけどさ。
そんなことを思いながら私は携帯は壊れてるから公衆電話で電話をかける。
ちなみに携帯はさっき新しく作り直そうかと思ったけど、契約がうんたらかんたらってお店の人の話が難しくて諦めた。
そもそもスペイン語はまだ全部覚えきれてないし。

公衆電話で電話をかけた相手は日本に住むお父さんだ。

「もしもしお父さん、私、私!!」

めちゃくちゃオレオレ詐欺みたいな言い方になってしまったが、お父さんは声で私だとわかってくれたらしい。

『お前、糸師さんに迷惑はかけてないだろうな。あと国際通話って通信料金高いから、さっさと話終わらせろ』

第一声がそれってひどいよお父さん、と思いながら私は要件を話す。

「あのね、私冴くんと別れて一週間後には日本に帰ると思うからまたしばらく実家で暮らすね!」

『何言ってるんだ。糸師さんほどお前のことを大切にしてくれてる人はいないんだから、別れるな』

「ええっ!?」

『あと、日本で就職もしないでスペインで暮らす糸師さんと同棲するって決めたのはお前なんだから、もう日本には帰ってくるな。じゃあな』

プープー、と電話が切れた。
私、親と縁を切られた訳じゃないけど日本に戻っても帰る場所がなくなった。
どうしよう、こんなに生活能力がない私を傍に置いてくれる人なんて冴くんしかいないのに。
こんなに泣き虫で馬鹿な私を鬱陶しいと思わないでいてくれるのは、冴くんしかいない。

「……」

そうだよ、冴くんは私と別れる気なんてあるはずない。
なのに私は馬鹿だから、

「そもそも私がバイト始めたい理由だって、冴くんともし別れることになったら一人で生きていけないから貯金しとこうと思ったんだもん!」

なんて言って、冴くんを怒らせるに決まっている。
冴くんが頑なに私に謝らない理由も、冴くんに悪いところなんて一つもないんだから謝る必要がない。

大体今までの喧嘩だって悪いのは私だから謝るのは私で当然なのに、私はいつも謝るのは私だけみたいな馬鹿な勘違いをしていて。

……冴くんに謝りたい。
冴くんは私に呆れてはいるかもしれないけど家から追い出すことはしなかったし、まだ謝れば仲直りできるかもしれない。
早く家に帰ろう。

「……」

………。
……………。
…………………。


家って、どっちに向かえば帰れるんだろう。
私は迷子になっていた。


・ ・ ・

「うわあああああああああん!!!」

街に響く泣き声。
なんてうるさい泣き声、どこの子どもが泣いているのでしょう。
……泣いているのは私(成人済み)である。

「うわああああああああああああん!!!!家に帰れないよおおおおおお"お"」

人に道を聞こうにも、スペイン語がわからないから聞けない。
冴くんの言う通り、私は冴くんがいないと一人で街を歩けないぐらいの世間知らずだったんだ。

「う"え"ぇぇぇ"ぇん!!」

その場に座ってギャン泣きしているやばい子のことはみんな素通りしていく。
そりゃそうだ、こんな泣いてる子に大丈夫?なんて声をかけたくないだろう。

でもみんなが素通りしていく中で、一人だけ私の目の前に立ち止まった。

「何してんだよ」

……それは、冴くんだった。
なんで、どうしてここにいるの?と聞くより先に、私は冴くんに飛びついていた。

「ざえ"ぐん"だぁぁぁぁぁ"」

私がコアラみたいに冴くんの腰にしがみつくと、冴くんはぽんぽんと私の背中を撫でてくれる。

「家から出るなって言ったよな?」

私に問いかけてくるその声は、とても優しい。

「う"ん"……っ、やぐぞぐ、やぶっちゃっだの、ごべんなざい……」

顔が涙と鼻水まみれな気がしたけど、冴くんの服に顔を押し付けて冴くんの匂いに包まれにいく。

「あ、あと私、冴くんを困らせようと思っていっぱい買い物しちゃったの……ごめんなさい……」

「買い物?」

「……100万円ぐらい使っちゃったかも」

「安い買い物だな」

「…… 冴くんは金銭感覚狂ってると思う」

「俺を困らせたいなら城でも買ってこい」

ふっと軽く笑った冴くんはしがみついている私を見て、

「お前コアラかよ」

と呟く。
ひどい、コアラなのは冴くんなのに。

「……で?」

ぐいっと私の身体を引き剥がして、まっすぐに冴くんの瞳が私を見つめてくる。

「ごめんなさいは?」

冴くんは私の言葉を待っている。
そのごめんなさいは、今の現状に対することじゃないということは私でもわかる。

「……日本に帰るって言って、冴くんと別れるって言って、ごめんなさい……」

「ん」

「……でも、冴くんは私に泣き虫って言ったし、私にバイトするなって言ったよ……ひどいよ……」

「……ああ、そうだな。バイトを始めたらお前の交友関係が広がったりするのが嫌すぎて言い過ぎた。でも俺は悪くないから謝らない」

……冴くんの馬鹿、と思いながら私は冴くんにしがみつき直して言う。

「……仲直りして」

私の言葉に、返事の代わりに冴くんはぎゅっと私を抱きしめ返してくれた。


・ ・ ・

家に帰ってから私はここ最近冴くんとあんまり話していなかったから、私から声をかけるのに緊張するということに気付いた。

「あ、あの……糸師くん」

さっきガンガンいつもの癖で冴くんって呼んでたけど、試しに糸師くんって呼んでみたら、

「あ"?もう一回喧嘩してぇのかよ」

糸師くんって呼んだだけなのに冴くんはすぐ怒った。

「やっぱり仲直りはしない」

「えっ」

私は驚いて顔を上げると、少しだけ拗ねたような表情を浮かべている冴くんが私を見ている。

「……もう二度と糸師くんって呼ばないって約束しないと、仲直りはしない」

「……」

冴くん……可愛い。

「何にやにやしてんだ」

「……えへへ、冴くんって結構私のこと好きだよね?」

「好きじゃなかったら付き合ってねぇよ」

やばいにやける。
嬉しい。

「私達、ずーっと一緒にいようね」

「子どもかお前は」

私の言い方に笑った冴くんは、ぎゅっと私の腰にしがみついてきた。
コアラになってしまった癖がしばらく抜けないらしい。
でも私は冴くんに抱きつかれるのが嬉しいってことに気付いてしまったから、そのままにしておく。

ちなみに一週間後に受け取ったパスポートは、

「俺とずっと一緒ならいらねぇよな」

と言って、冴くんが燃やして捨てた。


Comments

  • しるり
    December 3, 2025
  • paruparu0328

    パスポート「解せぬ🔥」

    August 14, 2025
  • あみ
    May 25, 2025
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