何もかもが自分より小さくて頭も弱い恋人に過保護な糸師冴の話
タイトルの通り、「何もかもが自分より小さくて頭も弱い夢主に過保護な糸師冴」の話です。Twitterに載せたものをそのまま持ってきました。
※ネームレス夢主がいます
※そっと添える程度のヤンデレ要素(本当に申し訳程度の要素です期待しないでください)
原神新章始まったんですが気がついたらブルーロック沼にドボンしてました…恐ろしい…
頭弱い夢主大好きなんですが書くのは本当に苦手なので勉強したい所存です。夢主視点から見たらすごい面白いんだろうな~って思いながら書ける気がしない。ほぼアンジャッシュしてると思う。
※2023/03/04 一部台詞修正
理想のぽやぽや夢主追求のためにこれからも台詞が変わる可能性があります。混乱させてしまったらすみません。
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柔らかな耳朶の下から丸い後頭部を掬い上げるように指を差し込んで、まるで食べ頃を教えてくれているようにほんのりと色付いた桃色の唇に自身のそれを合わせる。一心に此方を見つめてくれていた潤んだ瞳は長い睫毛が生え揃った薄い瞼の中に隠れてしまい、視線を交えることができないのが非常に残念だが、白い頬を紅潮させ段々と深くなっていく口付けを必死に受け止めようとする様は言葉で言い表すことが出来ないほどに可愛らしい。崩れ始めた脚を支えるように細い腰を抱き寄せつつも、溢れて止まらない欲に支配されながら半開きになった唇の隙間からぬろりと舌を差し込めば、まるでその全ての行為を許してくれるかのように力が入っていない腕が背中に回ってくる。心地良い。気持ちが良い。いっそこのままひとつに溶け合ってしまえば良い。…しかし、冴は自身の背中に回っていた彼女の枝切れのような指が身に纏っていた服の裾をぎゅっと握った途端、その動きを止めた。狭い咥内をゆっくりと、けれども確実に侵していた肉厚な舌をずるりと抜き取って、最後に名残惜しいとばかりにもう一度唇に吸いついてから顔を離す。あれだけ熱く濃密な交わりをしていた割にはあまりにもあっさりとした幕引き。実際冴だって満足なんかしていない。けれど、これにはちゃんとした理由がある。自身の腕の中ではふはふと荒い呼吸を繰り返す彼女を見つめる翡翠の瞳には、彼をよく知るものでもはっきりとは判別できない心配の色が滲んでいた。
「大丈夫か」
「うん…もうちょっとしてもよかったのに」
「…いやいい。キスで死なれちゃ困るからな」
「さ、さすがにキスじゃ死なないもん…」
「肩で息しときながら何言ってやがる」
フンと鼻で笑いながら口の端を伝っていた唾液を親指で拭ってやる。その際、指先に触れたふにふにとした感触に先ほどの彼女の言葉も相俟まって腹の底に溜まっていた欲が軽く頭をもたげたが、冴は至って平然な風を装った。まだ整いきらない乱れた呼吸を繰り返す彼女に無理を強いるのは本意ではないからだ。その代わりに、腰に置いたままだった手をつつ…となだらかな曲線をガイドに上へと伝わせて、自身よりもふたまわり程度小さな身体を隙間がなくなるくらい強く抱きしめてみる。くっつけばくっつくほど、浮き彫りになる体格差。頼りない身体の薄さ、ポッキリと折れてしまいそうな肩の細さ。見ているこっちの方が不安になっているというのに、当の本人は自身よりも図体が大きく力が強い男の腕の中で安心し切った顔で笑っている。そんな顔を眺めている自身の胸が何やら温かいもので満ちていくのを感じながら冴は、俺もぬるくなったものだなと心の中で呟きながら彼女の香りが最も濃く感じられる首筋に鼻を埋めた。
「苦しくないか」
「うん。くすぐったい」
「そうか」
冴にとって彼女は、この世で最も綺麗で美しいが脆くて壊れやすくもある、例えるなら優秀な職人の手によって細部にまで繊細な加工を施されたガラス細工のような存在だ。それは精神的なものもそうだがそれよりももっと単純で簡単に、身体や力なんかが自身よりずっと小さくて弱くて柔いから。プロのアスリートと普段から運動をしていない一般人なのだから当然ではあるが、それでも身体や肩は言わずもがな、片手どころか3本の指さえあれば完全に拘束してしまえる手首とその膂力の弱さは一生安心なんてできそうにない。だから冴は不安になる。体格も力も彼女よりも優っている自身が知らず知らずの間に彼女を傷つけていないか。先程のキスの最中に与えられた仔猫の戯れのようなサインを見逃していないか。サッカーの事しか考えてなかった頭で必死になって全てを疑っている。
最初に目についたのはどれだったか、今となっては思い出せない。何故なら、今までの人生全てをサッカーに注いできて、これからもそうなのだと信じて疑いもしなかった自分の世界にするりと入ってきたこの女を愛しているのだと認めた時にはもう、冴の頭の中で彼女は完全に自分が守らなければならない存在になっていたからだ。もしかしたら気まぐれに握った手の冷たさだったかもしれないし、仲良く並んだ靴の大きさの違いだったかもしれない。はたまた暴いた肌に浮かんでいた肋骨と両手で軽く一周できてしまうウエストに衝撃を受けた時かもしれないし、サイズが合わないシャツから伸びた脚がやけに眩しく見えた時かもしれない。けれどもその全てが彼女を構成しているものに違いはなく、冴の庇護欲を煽り、恋にまで至らしめたものだ。しかし事の全てが綺麗に流れて行った訳ではない。初めて獲得した恋という感情は、サッカー以外知らないと自他共に認めていた冴にとってはまるで遅効性の猛毒。到底知り得ない感情だった。無知とは、時に人を恐怖に陥れる力が存在する。思考が短絡的になり、人格を凶暴化させる。──冴には、衝動的に彼女を閉じ込めていた時期がある。
今考えてみれば、あれほど恐ろしいことはなかっただろう。ドロドロと仄暗い感情が煮詰まり切った頭でスペインまで半ば強引に連れてきた挙句彼女のものを全て捨てて、頭の天辺から爪先まで全部自身が買った服や装飾品で着飾らせたり、言葉と身体を使って彼女の色んなものを縛った記憶がある。若気の至りと言えばまだ可愛げがあるが、その実態は彼女の慈悲深さと軽い脳味噌さえなければ今頃法の元でしょっぴかれているところだ。だというのに、この平和ボケした国の平和ボケした家族に甘やかされて育ったこの女は、俺に「好き」などと宣うのだから笑ってしまう。その彼女の好きという言葉がストンと胸の内に入り、すっかり目が覚めた俺を何で謝っているかわからないといった顔で許してくれた彼女がいるから俺は今ここに立っている。
「あのね。私スペイン語なんて話せないしお金だって持ってないから簡単なお買い物だってできないし、冴くんがいつも言ってくれるみたいに冴くんの帰りを待つことしかできないけど、冴くんこそほんとうに私でいいの…?」
「ああ」
「あ、でもね、誰よりも冴くんのこと好きな自信はあるよ」
「ああ」
「他には、えっと…」
「俺も好きだ」
「!」
「お前の側に居られる許可が欲しい」
「いくらでもあげます!」
「あと」
「うん」
「今度日本に帰る時お前も連れてくから、もしお前の両親から許してもらえたら、俺と結婚して欲しい」
「!…すごくうれしい……」
「あと」
「うん」
「俺を好きになってくれてありがとう」
嫌いにならないでいてくれて、本当に。
この後、許す許さない以前に何故か終始ずっと俺に対しての好感度が高い彼女の両親にあれよこれよと逆に外堀を埋められて想定よりずっと早く結婚して世間を賑わせる事になることを俺も彼女も今はまだ知らない。まさかずっと付き纏われてうんざりしていた日本の至宝の名前がこんなところで役に立つなんて。流石に終始ずっと居心地悪そうにソワソワイライラしていた愚弟はともかく俺の両親の目は誤魔化せなかったようだが、これから挽回していく心算なのでできれば今は目を瞑っていてほしい。彼女の小さくて弱い身体も、無垢な心も。守っていくのは絶対に他の誰でもなく、俺がいいから。
「おい急ぐな。ゆっくり食え」
冴の皿に並んでいたサンドイッチが消えたことに気がついて食べるペースを上げ始めた彼女の前髪を、大きな手がさらりと撫で上げる。食べやすいように四つ切りにされていたそれは冴がぺろりと平らげた量の半分しか無かったにも関わらず、彼女の皿にはまだ一切れと小さな歯形がついた食べかけのパンが手元に残っていた。その様子を軽く観察していた冴は、ただ単純に咀嚼に時間がかかっているだけではなく、一口の差があまりにも大きいらしいと結論付けた。何故なら彼女が6回齧ってやっと処理できるそれを、冴は多くともたった3回で処理できるので。口の大きさが違えば容量も違う。キスの時に彼女がすぐ苦しそうな顔と息遣いをするのも当然のことである。しかし、彼女との接触ができないのは冴にとって苦痛であるし、彼女も満更でもなさそうなので、できれば許して欲しいと思っている。