週刊エコノミスト Online サンデー毎日
山本太郎「全身全霊メッセージ」独占インタビュー90分(下) 日本を壊した政治家を疑いジャッジしてほしい
太郎氏の怒りは、30年の経済不況を生み出した自民党政権に対してだけではない。それを支え、補完した野党にも向けられている。「中道」をどう見るか、そして政治家・山本太郎の原点とこれからの闘いについて、語りはさらに熱気を帯びた――。
◇本気で闘わない野党に抗議してきた
――政治家になって13年、印象に残ることは?
「17年の改正組織的犯罪処罰法成立のときのことです。犯罪を計画段階で処罰することを目的とした共謀罪が導入された。共謀罪は過去2回国会で廃案になっているが、そのときは『テロ等準備罪』みたいな名前に変えて国会に出された。もちろん野党が反対したが、その熱量は過去の廃案時と比べると、相当落ちていた。過去に2回廃案になった記憶は、一定の世代以上の人たちしか持っていなくて、『テロ』という響きに関しては、みんな『それは処罰が必要だ』と。そのとき、自民党の鴻池祥肇(よしただ)(参院議員4期、衆院議員2期の自民ベテラン政治家)さんに『山本君なあ、野党、おとなしすぎるぞ』と言われた。鴻池さんは、カテゴリー分けしたら『極右』に分類されるような人で、私のことは、天皇にお手紙を渡したときから『あいつに会ったら叩き斬る』みたいなことを言っていたぐらいでした。その鴻池さんが、内閣委員会での私の質疑を聞いて『いい質疑やった』と言ってくださった。その後は私を食事に連れて行ってくれたりというおつきあいがあったわけですが、その鴻池さんが体調を崩されていて、亡くなる前(18年12月25日死去)、共謀罪の最終局面のところで、そう言われた」
「それを聞いたときに『ああ、自民党で最も右と言われている人の目から見ても、今回のこの立法には懐疑的なんだな』と。鴻池さんには『自民党議員としてはこれに賛成しなければならない。だからこそ、野党にはがんばってほしい』という気持ちがあったと思う。長きにわたって国会の中にいた人だけに、自民党の変質と野党の変質という両面に、実は心を痛めているんだなと感じました」
「(15年の安保法制採決時に)牛歩した時のことも印象に残っている。やりたくないんですよ。面倒くさいし、ものすごいストレスがかかる。悪目立ちが一番おいしくないのは、芸能界の中でよくわかっているから。でもやらないわけにいかない。自民・公明に対する抗議のみならず、『闘う』と言っていた野党が本気で闘わないことに対しての抗議という意味でもやった」
「牛歩したとき、私にヤジや誹謗(ひぼう)中傷してくるのは与党議員だけじゃない。野党議員もです。私に直接キレ散らかしたのは、野党議員のほうが多い。『お前のせいで電車に間に合わねえだろう! どうしてくれるんだ、約束!』みたいなことを、私が牛歩している横で言ったり。こういったクズをあぶり出す意味でも『やって良かったな』と思った」
◇メディアの報道はあまりにも表層的
「もう一つ。選挙で公約したことを手のひら返しするのは、国会の中、政治の世界では今や当たり前になっちゃっている。古くは民主党政権のときに『この先4年消費税は増税しない』と約束したが、その約束を果たさずに増税を決めちゃった。でも少なくとも、裏切りまでの時間は1〜2年はあった。今の政治は選挙が終わったら、即、裏切る」
「たとえば消費税減税という議論がある。19年にれいわ新選組を旗揚げしたとき、事実上消費税減税の話は国会の中でほとんどなかったです。死んでましたよ。そこに『廃止』と旗を立てたら、国会の人たちは笑っていた。けれどもそこから、経済状況がより悪くなり、消費税の減税は選挙公約の中で普通になりつつある状況まで来た」
「去年の参議院選挙、その前の衆議院選挙(24年10月27日)で、それぞれ消費税減税を公約に掲げた政党はけっこうあった。公約、つまり国民と約束したことを、選挙が終わったあと、それが全くなかったかのように振る舞う政党。そういう者たちが実際に存在していること、これほどまでに舌の根の乾かぬうちにという状況をすぐに確認できることに、ものすごくビックリしました。『お前、ちょっと前の野党でも、せめて戦っているフリぐらいはしたもんだぞ』と。でも今や『選挙が終わりゃ関係ない話になるんだな』というぐらいの話になった。政治がより詐欺的な振る舞いを強めていくことを、ここ数年目の当たりにしているのはショッキングであり、印象的だと言える」
――「れいわと参政党は何割かの支持者が交換可能だ」と言われるが、そういう見方については?
「メディアの報道はあまりにも掘り方が浅くて、表層的な話しかしない。何かしらを誘導するかのような内容が非常に多い。資本との関係性が切れない立場にあることを考えるならば、そのような報道もあって当然だとは思う。一部メディアは、常に何かしらとセットにしたがる傾向はあると思う」
「参政党については、ある意味で宗教的でマルチビジネスみたいなものが草の根を偽装した政党だと私は思っている。『一応草の根同士でしょう。イチから作ったんだよね』みたいな言い方で同じような扱いをされることはよくある。今回れいわに入れた人が次は参政党に入れたり、参政党に入れた人がれいわに入れる。『非常に親和性が高そうだね』みたいな誘導。結党当初は、N国党とセットにする、同じような誘導がなされました。本当に呆(あき)れてしまう」
「厳密に言えば、『参政党に入れてしまうような人でも、れいわに入れてくれることがある』ということだと思う。最初の選挙では『比例でれいわに入れるか維新に入れるか悩んだんですよね』という人たちの声もけっこうあった。中身はまったく逆です。北極と南極ぐらい違う。弱い立場を包摂する大きな政府と、弱肉強食の新自由主義、完全に違うものなんだけど、投票される方によっては『古くからある政党は全然ダメだな。新しい勢力に期待したいな。れいわかな、維新かな』みたいな悩み方もある。そういう選択をする人がいるというだけのこと。ただそれだけのことです」
◇例外的な役柄が私を政治に引っぱった
――徒手空拳で政治活動を始めたと言われたが、あなたは「例外的な」政治家になる以前の芸能活動でも、高見広春原作、深作欣二監督『バトル・ロワイヤル』、梁石日原作、金守珍監督『夜を賭けて』など、例外的な作品に出演している。役柄を演じるとは憑依(ひょうい)することでもあるだろう。時代の矛盾が結晶した作品の数々を内面化してきたあなたが、政治の世界に入っていくのは必然だった気もする。
「もともと自分の性格とか、持っているものはあったと思う。それを広げる考え方だったりを、芸能の世界にいるときにたぶんさまざまに与えていただいた。それは役柄として、ということです。『夜を賭けて』で言えば、日本人でも生活が苦しい1950年代末に、さらに泥水をすすりながら生きていた在日コリアンのアパッチ族の闘いであったり、『バトル・ロワイヤル』で言えば、国というシステムに自分の大切な人の命まで奪われてしまう、その殺し合いのゲームを終わらせるには、システム自体をバグらせるしかない。それを実行に移した川田章吾という役柄だったり」
「資質として、そういったものに対して共鳴できる感性があったとしても、役柄として、そういう場面に立ち会わなければ、なかなかそこに光を当てることはできなかった。人間って、いろんな要素を持っていると思うけど、さまざまな要素に対して光が当てられた部分は、何かしら芽が出て咲くことはあるだろう。私はそういった資質の一部を持っていて、要素として芽が吹いた部分もあったかもしれないけれど、それを実際に刺激したり、発揮したり、温めたり、共有したりする作業はあまりしたことがなかった」
「そういった作品で、チャンスを与えられたんだと思う。作品で与えられたチャンスによって、自分の持っている一面を知ることができた経験は凄く良かった。そこから政治の世界に入り、実際にリアルな人生の中でその芽をさらに育てていくことになるとは想像もしていなかったです。役柄や、物語の背景や、いろんな人物のいろんな気持ちに事前に私が触れることができていなかったら、政治の世界での今のような弾(はじ)け方はなかったかもしれない。過去に関わってきた作品が、私をこちらに引っ張ってきた部分もあるだろう」
◇政治家を続けていたら確実に死ぬだろう
――どう闘病し、復帰したいか。
「『多発性骨髄腫という病気がある。血液のガンです』ということなんですが、私はまだそれにはなっていない。その一歩手前の前段階です。前段階の状態でできること、前段階を前に進めないための投薬治療だったりは、ないんです」
「そもそもこの病気にどうしてなるかということに関して、原因は究明できていない。なってしまってからは、さまざまな投薬治療だったりやれることはあるけれど、前段階でやれることがないということを考えたとき、今のまま政治家を続けていたら確実に死ぬだろう、と。この状況になってしまったのは、間違いなくこれまでのアクセルベタ踏みです。今の状況から逃れる以外、自分の命は救えないだろうな。このままフル回転で行ったら、数年で実際に骨髄腫になって、進行を早めるだけだろうな、と思った。だったらこれはいったんスパッと辞めるしかないということで、ストレスゼロという段階をできる限りの期間やってみようと」
「すでに多発性骨髄腫になっていたとしたら、『しゃらくせえ』となってたと思うんです。『もう行っちゃえ。ここが死に場だ』と思って『この2年で社会を変えられるか』という現実にぶつかる。なかなか難しいですよね。ある意味で、自分のその振る舞い自体が犬死にみたいになっちゃう。もともと、なぜ私が声を上げたのか、政治に関わろうと思ったのかと言うと、生きるために闘うことを決意したんです。それと大きく乖離(かいり)してしまう」
「であるならば、冷静になるべきだと。『これはものすごくラッキーだったな』と自分の中で思っている。『こんなことになって』とか『どうしてオレが』とか、一切思ってないんですよ。事前にこれがわかったなんて、ビックリするぐらいラッキーすぎるなあ。これは絶対に辞めるしかないと」
――有権者へのメッセージを。
「与党も野党も国を壊してきたという過去を考えるならば、政治や政治家を信じること自体がおかしな話になった。山本太郎やれいわ新選組も含めて、すべての政治家を疑ったうえで、ジャッジしていただきたいです。その目がなければ社会を変えることはできない」
◇ ◇
この13年間続けてきた山本太郎劇場は取りあえずは閉幕だ。残した種がどんな花を咲かせるかに注目したい。太郎氏に対してはさまざまな批判があった。だがこれだけ全身全霊で政治に対峙(たいじ)した男もまたいないだろう。劇場の再開を気長に待ちたい。
構成/倉重篤郎
写真/グレート・ザ・歌舞伎町
やまもと・たろう
1974年生まれ。俳優を経て政治家。参院議員。れいわ新選組代表。消費税廃止や大幅財政出動などによる生活支援、脱原発、災害対策などを訴え、国会や路上で強力に発信してきた