週刊エコノミスト Online サンデー毎日
山本太郎「全身全霊メッセージ」独占インタビュー90分(上)「生きる闘い」への情熱はまったく変わらない
生活に苦しむ国民の怒りを代弁して国会で闘ってきた山本太郎氏が、議員辞職した。多発性骨髄腫の一歩手前という体調ゆえだ。れいわ新選組とその闘いは今後どう引き継がれるのか? 太郎氏のいまの存念、そして今後は? 熱く語り続けた90分をそのままお送りする。
◇「8年後には首相になる」と豪語した
この男の街頭パフォーマンスは、凄(すご)かった。通行人を立ち止まらせ、耳を傾けさせる熱量があった。あらゆる質問に答え、ヘイトにも正対した。
この男の現場力は、首相さえも動かした。能登半島地震では現地に20回以上入り、その目で見た被災ニーズを速攻で国会に送り届けた。
この男のリクルート力は、並外れていた。たった一人で起(た)ち上げた政党を国会議員15人まで増やした。重度障がい者や市民運動出身者、行動派学者らをどんどん仲間に取り込んだ。
政治家としては、見たことのない「例外的な」タイプだった。俳優からの転身組であったが、いわゆるタレント政治家ではなかった。学識経験者ではないが、問題意識と知恵にあふれていた。野心もあった。サンデー毎日の取材に「8年後には首相になる」と豪語した。田中正造張りに天皇に直訴しようとしたり、時代遅れの一人牛歩戦術に固執した。永田町全体が彼に揺さぶられた。
その男、れいわ新選組代表の山本太郎氏が1月21日、病気を理由に議員辞職した。多発性骨髄腫という血液のガンの一歩手前と発表、療養に専念する、という。高市早苗首相が衆院を解散する2日前のことだ。山本氏にはこの欄で数回インタビューさせてもらった。政策、関心の一致点が多く見られた。その消費税廃止の主張については、財政規律派の当方と意見を異にしたが、究極の貧困対策という趣旨は理解できた。
解散で永田町に帰ってこない政治家は多数いるだろう。それに先立ち決然と議席を投げた異能力士を惜しむ。以下は独占90分ロングインタビューである。
◇いまこそ一人一人の熱量を集めてくれ
――山本太郎の魅力あってのれいわではないか。その議員辞職を大石あきこ共同代表は「れいわの存亡の危機」「ピンチをチャンスに」と言う。
「山本太郎がれいわから、そして国会の場から一時離脱しなきゃいけない状態を『ピンチ』と呼ぶかどうかです。私は『ピンチ』とは思っていない。れいわって何か。山本太郎一人で手を挙げて、それに、山本太郎と同じような全国の有象無象が乗ってくれた。結果は国会議員15人。私が辞職し、途中一人辞めたので13人だが、地方議員も60人までになった。一人の人間が動き出したことで、ここまで世の中が動いた」
「つまり今は、『次はあなたの番だよ』という局面だと思う。『山本太郎がいなくてもやれるんだよ』と。人々の力がどれぐらいのものなのか。永田町に対して、この国を食い物にしている資本家たちに対して、人々の力を示すチャンスだと思っています」
――太郎抜きの選挙だが?
「悲壮感は全然ないんです。選挙が終わってどれぐらいの議席獲得になるかわからない。1議席でも増えたら、それはありえないほどの大勝利だと思う。現有議席を守れても大勝利だし、これが半分以下だったとしても『よくやった。よく踏ん張った』という世界だと私は思っている」
「『一人が引っ張ってここまで来たということは、あなたにもできるよね』と。もちろん『同じことをやれ』ということじゃないけれど『一人一人が力を出していけば確実に拡大するし、ひっくり返すことだってできる』ということを証明していく。今回の選挙結果だけでは、答えは出ない。積み重ねていきながら、ということになる。新たなステージに入ったんだろうと私自身は考えている」
――「有象無象が世界を変える」というのは、まさにれいわの政治運動のイメージだ。
「『山本太郎のような』有象無象と、前につければ、見出しにしていただいても大丈夫です(笑)」
――くしぶち万里共同代表は「一人一人が山本太郎になる」と言う。支持者一人一人が時代に試される局面に入ったということ?
「2019年4月1日にれいわ新選組を設立、6年やって7年目に入ったわけですが、私自身が議員を務めていた最初の参議院、13年からの6年も合わせて『聞き分けのない一人が諦めずに本気で抗(あらが)えば、ここまでできるんだぜ』ということを示してきた。『一人一人が山本太郎になって』とまでは言わない。『山本太郎みたいにやれ』ということじゃなくて、山本太郎という一個人、一人の人間でもここまでやらかしてやった、これが何人もになれば、途轍(とてつ)もない力になるよね、という。もちろん無理はしない前提で、みんなでやっていけば、変えていけるということ」
「実際、ここまでズブの草の根みたいな政党は事実上存在しない。バックに宗教やネットワークビジネスがついていたり、草の根を偽装しながら拡大していく政党はあったとしても、本当の意味で右も左もわからない素人が集まって、徒手空拳で積み上げていく作業は、これが最初で最後になると思う」
「何が何でもれいわを守ってくれということではなく、私は決して諦めない。この腐れ切った政治を変えていくという、あなた分の熱量を、みんな分の熱量を集めていくことなんだろう。これまでやってこなかったことに一歩踏み出すきっかけなんだろう。『一人一人が山本太郎になってくれ』はさすがに無理ですね。病気の人が増えちゃうから。ハハハ」
――高井たかし幹事長が、総理にすることを諦めていない、山本太郎総理を誕生させたいと思っている、と。あなたはサンデー毎日の取材に対し「8年後、総理に」と答えていた。もちろん治療に入るわけだが、熱情に変わりはない?
「この国を変えることの熱量はまったく下がっていない。この国を変えるために何が、誰が必要か。『私たちが考えているような社会を目指していくなら、誰ができますか?』と問うたとき、今の永田町には誰もいない。そう考えると『私がやるしかない』という思いは変わっていないです」
◇「中道」は日本をダメにした政党の合体
――高市氏の「自己都合解散」。その後サプライズ的にできた中道改革連合。この動きをどう見るか。まず高市解散から。
「高市さん自身が壮大な詐欺的立ち居振る舞いを続けている。たとえば『責任ある積極財政』みたいな言葉を掲げている。『責任ある』というのは、誰に対しての責任ですかということだ。本来考えるならば、日本は先進国でただ一国、30年も経済不況が続いている。国民生活の底が抜けた。そこにコロナが来て、物価高になっても減税すらしない。選挙で約束した給付金(25年7月の参議院選挙で、自民党は「すべての国民に一律2万円給付」と掲げた)さえも反故(ほご)にしてしまった。3000円程度のお米券、電気・ガスが標準世帯で7000円いくらと言われている。目の前の物価高に関しても、焼け石に水に近い」
「一方で18兆円規模の予算を何に使っているかと言えば、軍事関連が中心で、自分たちに票として、カネとして、返ってくるところに、手厚く分配されるようになっている。つまり、『責任ある積極財政』とは、自民党がぶっ壊した日本を立て直すための積極財政では全くない。自分たちがカネと票を集める上で、それに応えてくれる人たちへの御恩返しの積極財政でしかない」
「『早苗のわがまま解散』と大石は言っていました。まさにそのとおりです。高市さんが自分の政治的課題として今一番やらなければいけないことは、30年の不況を40年にしないことだったり、国民の苦境を救うことのはずだが、そうではなくて、『自分の権力を維持させるために、一番得なタイミングで選挙ができるのは今しかない』と。自分が打った政策の効果が出るころに選挙をやるのでは、自分の首は飛んでしまう。『国民を騙(だま)すなら今だ』というタイミング、そういう選挙でしかない」
――対抗軸として期待される中道連合は?
「とんだ茶番だと思う。自民党と何が違うのか。選挙の対抗軸ができたと喜んでいる人たちは、俯瞰(ふかん)でこの国を見られていないんじゃないか。この30年日本を壊し続けてきたのは自民党だが、その『下駄(げた)の雪』として最大限サポートしてきたのが公明党だ」
「非正規労働の増大に手を貸してきた。不況の日本で消費税を2度上げることを、民主党、自民党、公明党で決めてしまった(12年6月の三党合意)。それだけじゃなく、集団的自衛権だ。これはアメリカの世界戦略に自衛隊を2軍として差し出すようなものです。あのとき公明党が反対していれば、成立していない」
「それを考えるならば、自民党と一緒に日本を破壊した公明党と、日本をダメにした民主党ということだ。そういう二つの政党が一つに合体して『中道』とワケのわからないことを名乗りながら、『原発再稼働OK』で『集団的自衛権も違憲ではない』という方針を示している。この先進む道は何ですか? 自民党とほとんど差がないだろう」
(下に続く)
構成/倉重篤郎
写真/グレート・ザ・歌舞伎町
やまもと・たろう
1974年生まれ。俳優を経て政治家。参院議員。れいわ新選組代表。消費税廃止や大幅財政出動などによる生活支援、脱原発、災害対策などを訴え、国会や路上で強力に発信してきた