忘れ去られた日韓ゲームの歴史
2000年代半ば韓国のソウルにあるゲーム開発会社に行ったときのこと。
河南(かんなむ)の社屋に訪ねて行くと社長が出てきて、これまでに制作したタイトルを紹介してくれた。
どこかで見たような顔だ、と思いつつ傍らの本棚を見ると、コンパイルの『ディスクステーション』がずらりと並んでいた。韓国語版だったが、背表紙にハングルと英語でディスクステーションと記されていた。
その社長とは広島のコンパイル本社で会っていた。同社が『魔導物語Ⅰ』(メガドライブ/1996年)を発売したころだ。その後『ディスクステーション』の版権許諾を受けて韓国版を作って販売しているという。
取材が終わると、開発中のPCゲームを見せてもらった。
そのタイトルは、ターン制のシミュレーションRPGだった。『シャイニングフォース』や『ファイアーエムブレム』が好きなので、こうしたゲームを作りたかったと話してくれた。コンパイルのゲームのようなアニメふうのゲームキャラクターだった。
この会社の訪問の数年前、別のゲーム会社を取材した。
社長と開発責任者は、どちらもファミコンのゲームが好きで、とくに『ドラゴンクエスト』にハマってゲームに表示されるコメントで日本語を覚えたそうだ。その後、ゲーム業界をめざしたという。
別の会社には、ハドソンで働いていたという人もいた。
1980年代末~1990年代初頭、ファミコンやメガドライブ、スーパーファミコンが韓国で発売され、ゲームファンが生まれた。
当時韓国にゲーム専門雑誌がなかったようで、日本の出版社2社と契約して、韓国の事情に合わせて必要な記事だけを再編集した雑誌を出版していた。その元になっていたのは、アスキーの『ファミコン通信』と自分の雑誌だった。
韓国の出版社と打ち合わせをするたびに、韓国のゲーム事情を聞いていた。ゲームファンは少しずつ増えているようだった。こうした雑誌が韓国でゲームファンコミュニティを作っていくことになる。
韓国のゲーム制作やゲームファンコミュニティの成立に、日本の会社やゲームが少なからず貢献しているという事実は、残念ながらゲームの歴史に埋もれてしまっている。
韓国のゲーム産業は、アメリカのPCオンラインゲームの影響を受けて、1990年代末から2000年代初頭にかけて成立している。アジアにおけるインターネットを利用したオンラインゲームのブームは、韓国のタイトルを中心に台湾や中国に波及し、両国でゲーム産業が成立した。その後タイ、ベトナムなど東南アジア諸国でもゲーム産業が生まれている。
数年前韓国のコンテンツビジネス支援機関であるKOCCA(韓国コンテンツ振興院)の人たちとミーティングした際その中の1人は、自分が協力したゲーム雑誌の読者だったので驚いた。
韓国のゲーム創成期、ゲーム制作やゲームファンコミュニティの成立に日本のゲーム、ゲーム雑誌が関わったという事実は、これからも語られることはないかもしれない。



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